2009年2月25日
李明博政府1年の評価―暮らしは自由になったか
批判口止め恐怖政治…インターネット接続‘窒息’
くつわをかまされた表現の自由
・ミネルバ拘束後、インターネット論客が相次いで絶筆
・「言葉尻をとらえられるかも」討論サイトの自己検閲が日常化
・「インターネットに無知な政権」…基本権まで後ずさり
#1.
「文章をずっと(インターネットへ)載せ続けなければならないのかといく日も悩みました。『こんなことでは生きるのさえ行き詰るのではないか』と家族も心配しています。 (中略)しかし、ひとまず書き続けようと思います。ただ、『アゴラ』でない他のブログに留まって、主張のトーンもはるかにやわらかくします」。
インターネット経済論客「ミネルバ(※訳注:ハンドルネーム)」が拘束された去る1月初め、ポータルサイト「タウン」の「アゴラ」に経済関連文を書いてきたインターネットユーザー「力拔山(ヨクパルサン、※訳注:ハンドルネーム)」(仮名)は「文章を書き続けようかやめようか」について深刻に悩んだ。毎日5つほどいろいろな文章を載せてきたが、「ミネルバ」拘束の後3週間は何の文章も載せなかった。彼は「ひょっとしたら『文章を書くことができなかった』という表現がより正確かもしれない」と言った。以後、文章を書くことを再び始めたが、一日に一つか二つ程度であった。「どんな表現を使かおうか」と迷うことがしょっちゅうあって、キーボード打つ速度を以前と同じにはできなかった。「これは予測であり分析です。無条件に正しいという保障もなく、間違う可能性が常にあります」。少し敏感に思える文章を書いた後にはこういう蛇足をつける習慣もついてしまった。
「力拔山」は昨年6月から「アゴラ」の経済討論コーナーに文章を書き始めた。彼は「問題が明らかだと思えるのに、政府とメディア(報道機関)、専門家さえ話をしないので、直接文章を書くようになりました」と言い「全世界が困難だと言っている中、私たちだけ困難ではないと話し、株式市場の継続的下落が予想されるのにもかかわらず『今が底値だ』と話してはいけないではないか」と言った。新聞と放送に重要なニュースが出る度に自分自身の見解によってもう一度考えて文章を書き、時々彼の予測や警告が当たることもあった。実生活と近い主題をやさしく解きほぐして書いたおかげで、短い時間にいわゆる「警防鼓手(※訳注:「危険を知らせる人」の意か)」の名声を得た。
彼は、自分自身の文章がミネルバ拘束以前と以後で明らかに変わったと吐露した。以前には匿名の果敢性と名声にともなう責任感を共に感じて文を書いたが、「ミネルバ」拘束以後には果敢性の相当部分をあきらめたということだ。「以前には誤りを探して直す程度だったが、この頃は『もしかしたら(他人の)名誉を傷つけたり(表現が)オーバーではないだろうか』という心配をして1、2度さらに読んだ後に文章を載せます。少しでも疑わし部分があれば、文章は載せません」。彼は「ミネルバを拘束し処罰するならば、私もいつでも逮捕されうるという危機感を感じた」と話した。だが彼は相変らず「広場(アゴラ)」に残っている。彼は「まだあちこちで小さいろうそくを掲げて最善を尽くす人々がいて、それを見ると元気づけられる」と話した。
#2.
「麻浦の川辺(※訳注:ハンドルネーム)」(49)は昨年10月頃から「ハンギョレ」のインターネット討論空間である「ハンギョレ討論広場」に経済関連の文章を書き始めた「新参論客」だ。ミネルバ拘束以後、一部先輩論客らが潜水したり(※訳注:隠れること。この場合は、文章を載せなくなること)、最初から絶筆を宣言する姿に大いに慌てた。自身の文に経済関連各種チャートや有名な経済専門家の理論などを「注釈」で付け始めたのもその頃だ。心証が確実だが物証がない時は「以降は小説です」というアリバイも必ず残す。彼は「私は五十才近い年齢なのに『間違ったら私も災難にあうかもしれない』と思ったら怖くなった」と言って「最大限言葉尻を捕えられないように用心深く文を書く」と話した。彼は「善手(※訳注:他人より優れている人。この場合はレベルの高い論客のこと)」らが調べたことによると、常識に該当する文さえ処罰対象になり、そのことに無力感を感じると言った。「民主主義では何より表現の自由が尊重されなければならない。たとえ反対意見であってもそれを愛情で傾聴することができる国家こそ真の先進国家だ。(中略)大韓民国の後進性について、沈む夕陽が胸をうす赤くするように、辛く感じる。」ミネルバが逮捕された日、彼はあるトーマにこういう文を残した。
#3.
10年以上インターネット討論空間に文を書いてきた「SDE(※訳注:ハンドルネーム)」は李明博政府の「インターネットの強固な締めつけ」を「21世紀空間で中世騎士が刃物を振り回すようなもの」と表現した。彼は「ミネルバ拘束でわかったことは、李明博政府が『聞きたくない話は聞かない。他の考えは許さない』という一種の布告令を宣言したこと」としながら「このように閉じられた考えでは民主主義どころか経済もまともに運用できないというのが最も大きい心配」と話した。彼はインターネット空間でのコミュニケーション方式に対する(政府の)「無知さ」を指摘した。
SDEは最近、自分自身で見るに、政府の経済政策を根拠なく批判する文をアゴラに載せて削除した。アゴラに文を書きめてから初めてのことだった。彼は「とても感情的に文を書いたようなので消す」として「できるだけ、感情を抑制して文を載せるようにする」という反省文を書くこともした。彼は「インターネット討論の場では、根拠と論旨が堅実な文等は自然に説得力を得るし、その反対の文は淘汰され、いわゆる『集団知性』を追求する特性と生理が作用する」として「根拠ない誹謗と基本をそろえられない流言飛語らが幅きかす『言葉のどん詰まり』などで生まれる発想には何も解決できない」と話した。
チェ・ヒョンジュン記者haojune@hani.co.kr
訳:T.M