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「スピード→成長→スピード」無限ループ…韓国クーパン、労働者の健康と安全は後回し

登録:2025-12-15 08:04 修正:2025-12-15 10:07
クーパン帝国の陰 
うわべの成長の中で犠牲になるクーパンマン 
ソウル松坡区にあるクーパン本社の今月1日の様子。国内最大のネット通販企業クーパンで、3370万件の顧客アカウント情報が流出する事件が発生した/聯合ニュース

 「クーパンは人を部品だと思ってるんです」(経歴5カ月目のクーパン夜間配達員のLさん)

 「息子は帰宅後すぐに眠り、起きたらすぐに出勤する生活を繰り返していた。たった1年あまりで体重が15キロ減っていた。クーパンは何物にも代えられない大切な宝物を、寿命の尽きた部品扱いした」(クーパン物流センター労働者、故チャン・ドクチュンさんの母親、単行本『最後の職場、クーパンを解約します』(2022)より)

 韓国最大のネット通販企業クーパンでは、知られているだけで今年8人の労働者が死亡している。全国宅配労組は、2020年からの5年間で死亡した労働者は29人にのぼると語る。ライバル会社に比べて、知られている死者の数がとりわけ多い。クーパンが人を使い捨ての部品扱いしているといわれる背景だ。クーパン労働者がこのような状況に追い込まれたのは、なぜなのだろうか。

■止まらない成長という目標

 「韓国市場(プロダクトコマース)での成功は、顧客の『相反する要求』(迅速かつ安価な配送)を満たすことに集中した戦略的投資のおかげだ。今後も顧客を驚かせ続けるとともに、長期的なキャッシュフローを創出できる所に資本を配分していく」

 先月4日(米国ニューヨーク現地時間)、クーパンInc.(クーパンの親会社の米国法人)の今年第3四半期の実績発表会で、最高経営責任者(CEO)のキム・ボムソク取締役会議長はこう述べた。彼の発言は、クーパンが何を優先しているかを明確に示している。止まらない成長だ。

 キム議長はそのために投資を惜しまない。特に、未来の収入源への投資はためらわない。2023年にはブランド衣類プラットフォームのファーフェッチを5億ドルで買収。今年に入ってからも、台湾市場の物流ネットワークの拡大などに9億ドル以上をつぎ込んできた。

 うわべの成長部門に対する資源の集中は、コスト部門に対する厳格な管理へとつながる。コストを削減しなければ投資ができないからだ。代表的な例が労働者の安全と健康だ。過労死などによる労働者の相次ぐ死は、クーパンの成長戦略と連動しているということだ。

 2つの財務情報がこのような実態を裏づける。売上高に対する人件費の比率は、2021年には23%だったが、2023年には17%へと大きく低下。昨年は19%と小幅に上昇したが、依然として20%を下回る。売上高に対する売上原価の比率も、2021年の83%から昨年は71%へと10ポイント以上も低下している。サプライチェーンの最適化などによって効率が高まったこと、売上の急増に賃金(または手数料)の調整や人材の拡充などが伴っていないことの結果でもある。クーパンの雇用形態は、物流子会社→物流代理店とつながる間接雇用がかなりの部分を占めるため、クーパンが人を使うのにかかるコストは、直接雇用の場合には人件費として、間接雇用の場合は手数料として反映される。人件費の比率と共に売上原価の比率もみた方が、クーパンの人への投資が比較的とらえやすい理由はここにある。

 このような実態は、クーパン労働者の証言でも確認できる。配達員として3年あまり働いてきたあるクーパン労働者は、「2年前までは1200ウォン台だった1件当たりの手数料が、現在は800ウォンほどにまで下がっている」と語る。全国宅配労組が今年10月に679人のクーパン配達員に対して実施したアンケート調査でも、回答者の約75%が手数料削減の経験があると答えている。

■クーパン式リアルタイム作業スピード管理…無団体協約経営の実態

 物流センターや物流キャンプなどでは、配達時間に合わせて押し寄せる物量を処理するために管理者が「リアルタイム」で労働者の作業スピードを管理・監督している。PDA端末によって、個人の時間当たりの業務スピード(UPH)がリアルタイムで測定される。遅いと管理者の叱責がすぐに飛んでくる。急増する物量を最少の人手で消化するためには、労働力を最大限に引き出さなければならない。そのために作られた「クーパン式システム」だ。

 キャンプで荷物を分類する仕事を3年間してきたチョ・ヘジンさんは、「作業スピードを上げろという管理者たちの注文が絶えず放送され、少しのあいだ隣の同僚と冗談を言い合ったりするだけでも指摘の対象になる」と話した。法定休憩時間(1時間、食事時間含む)のほかに休憩時間を与えていないのは、大手物流企業ではクーパンだけだ。

 クーパン配達員も、リアルタイム配送の状況を代理店だけでなくキャンプにいる管理者たちにも確認される。例えば、朝7時までに配送を終わらせられないと判断されると、配送を急げという督促が飛んでくる。

 作業スピードは通常、労組との団体協約の対象だ。例えば、現代自動車や起亜などの完成車メーカーは、ベルトコンベアの作動スピードについて労組と合意している。作業スピードは労働条件の要となる事案だからだ。クーパンには、労組はあるものの「団体協約」は存在しない。クーパンのすべての子会社がそうだ。「無労組経営」ではないものの、「無団体協約経営」がクーパンのひとつの特徴となっているのだ。作業スピードを決めるにあたって成長と効率という物差しが優先されざるを得ない根本的な原因はここにある。クーパン労働者の健康と安全は、この構造の下で脅かされている。

ナム・ジヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1234535.html韓国語原文入力:2025-12-14 19:22
訳D.K

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