複数の人が共同の目的を達成するために団体を組織することを結社といいます。結社は憲法が保障する基本権です。結社の代表的なものがまさに政党です。
独裁者の李承晩(イ・スンマン)元大統領は、1958年1月に進歩党事件を起こしました。1956年の大統領選挙でライバル候補だったチョ・ボンアム党首をはじめ、進歩党の幹部を検挙し、進歩党の(政党)登録を取り消しました。オ・ジェギョン警務隊公報室長が発表した登録取り消しの理由はこうでした。
「進歩党の幹部らは、北朝鮮の傀儡集団が秘密裏に送り込んだスパイや密使、破壊工作隊と常に接触してきた。彼ら進歩党の幹部たちが反逆罪を犯したかどうかは法廷が決める問題だが、同党が北朝鮮の共産党と接触してきたという事実だけでも、進歩党は大韓民国の合法的な政党として認められる資格がない」
裁判が始まってもいないのに、政府が勝手に進歩党の登録を取り消したのです。憲法が保障した結社の自由を侵害した蛮行でした。チョ・ボンアム党首は死刑に処せられました。野蛮の時代でした。
李承晩元大統領が4・19革命で追い出された後、第2共和国の憲法には政党関連条項が新たに設けられました。進歩党事件の教訓でした。
「政党は法律の定めるところにより国の保護を受ける。ただし、政党の目的や活動が憲法の民主的基本秩序に反する際は、政府が大統領の承認を得て訴追し、憲法裁判所が判決を以てその政党の解散を命じる」
大統領や政府が勝手に政党の登録を取り消すことができないよう、強力な制動装置を設けたのです。そのときに作った「民主的基本秩序に反する際」、「政府が国務会議の審議を経て訴追(提訴)し、憲法裁判所が決める」という違憲政党解散の基本枠組みが現在も保たれています。
このように憲法が厳しく設けた政党解散の手続きが実際に施行されたのは、2014年の統合進歩党の事例が唯一です。
2012年12月の大統領選挙のとき、統合進歩党のイ・ジョンヒ候補は討論会で「私は朴槿恵(パク・クネ)候補を落選させるために出馬した」として、朴槿恵候補を攻撃しました。そして2013年11月5日、朴槿恵政権は憲法裁判所に統合進歩党の解散を請求しました。
憲法裁判所は2014年12月19日、裁判官8対1の意見で統合進歩党を解散させました。裁判長パク・ハンチョル所長をはじめイ・ジョンミ、イ・ジンソン、キム・チャンジョン、アン・チャンホ、カン・イルウォン、ソ・ギソク、チョ・ヨンホ裁判官が賛成しました。キム・イス裁判官は反対しました。
統合進歩党の解散決定は、首都ソウルが慣習憲法という決定(2004年盧武鉉政権当時、新行政首都の建設を進める過程で、憲法裁判所は「首都ソウル」が大韓民国の建国以来600年以上にわたり首都として存在しており、これについて確固たる国民の認識があるため、首都ソウルは慣習憲法として存在していると判断し、憲法を改正せず一般法律で首都移転を進めるのは違憲だと決定した)とともに、憲法裁判所の歴史に長く残る汚点です。憲法裁判所のホームページにある統合進歩党の解散決定文を一度読んでみてください。つじつまが合いません。
前半では、民主的基本秩序の違反が「民主社会の不可欠な要素である政党の存立を制約しなければならないほど、その政党の目的や活動が韓国社会の民主的基本秩序に対して実質的な害悪を及ぼしうる具体的な危険性をもたらす場合を指す」と定義したにもかかわらず、後半では「過去、民族民主革命党、南北共同宣言実践連帯、一心会などで主体思想(故金日成主席が提唱した北朝鮮の政治思想)を指導理念として活動した人たちを主軸とした被請求人の主導勢力の形成過程、対北朝鮮姿勢、活動経歴、理念的同一性などから被請求人の主導勢力は北朝鮮に追従している」と断定しました。「あれこれ調べてみたけど、君たちはアカに違いない」と言っているようなものです。1958年、警務隊公報室長が進歩党の政党登録を取り消す際に並べた詭弁と同じです。
「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」。フランス革命史3部作『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』でカール・マルクスはこう言いました。2014年の「統合進歩党」の解散という悲劇が、最近、「国民の力」の解散という喜劇として再燃している様子です。
「共に民主党」の代表選挙に名乗りを上げたチョン・チョンネ議員は7月15日、憲法裁判所法改正案を代表発議しました。国会が本会議の議決で要請する場合にも、政府が政党解散の審判を請求できるようにしようという内容です。
チョン・チョンネ議員は7月21日、フェイスブックにこのような投稿をしました。
「見届けてください。違憲政党解散審判請求は自然な時代的流れになるでしょう」
「国民の力の首席党員だった尹錫悦(ユン・ソクヨル)内乱首謀の容疑者が1審判決で死刑または無期懲役の宣告が出れば、そして国民の力所属国会議員の内乱同調容疑が内乱特検捜査で起訴され、裁判が始まれば、『国民の力を解体しよう!』という国民的要求が沸騰するだろう。
そうなれば、国会では私が発議した憲法裁判所法改正案によって、国会議決を通じて国務会議の審議を経て、法務部が国民の力に対して違憲政党解散審判請求をせざるを得ないムードが作られるだろう。国民の力に対する違憲政党解散審判請求は事実上時間の問題だ。決まった手順だ。協力より内乱勢力の清算が先だ」
チョン・チョンネ議員が国民の力の解散を主張する理由は、党員たちの世論のためでしょう。民主党の党員や熱烈な支持者の多くが国民の力の解散を求めています。
一方、ホン・ジュンピョ前大邱(テグ)市長は大統領選挙直後から「李在明(イ・ジェミョン候補)が政権を握ると、内乱同調と候補強制交替事件で(国民の力の)政党解散請求になるだろう」と主張しています。
なぜこのような主張をするのでしょうか。大統領選候補の党内予備選挙で敗北して離党した後、国民の力に腹いせをしようとしているようです。政治的再起に向けた地ならしの狙いもあるでしょう。
いずれにせよ、二人は「チョン・チョンネが民主党代表になれば、内乱同調党をそのままにしておくだろうか」(ホン・ジュンピョ)、「ホン・ジュンピョ氏と志を共にするとは」(チョン・チョンネ)など互いに相槌を打ち、国民の力解散論を増幅させています。 敵対しながらも共存しているわけです。
これからどうなるんでしょうか。二つのことが気になります。まず、李在明(イ・ジェミョン)大統領とチョン・ソンホ法務部長官が憲法裁判所に政党解散を請求するでしょうか。第二に、憲法裁判所は解散を決定するのでしょうか。
いずれも起きないでしょう。第一に、民主党議員の中で国民の力の解散を主張する人はそれほど多くありません。チョン・チョンネ議員に近い議員さえ「党員の意を受けて私たちが国民の力の解散を求めても、李在明大統領が解散を請求することはないだろう」と言っています。
第二に、政府が仮に解散請求をしたとしても、憲法裁判所が解散を決定する可能性はほとんどないと思います。
7月21日、国会でキム・サンファン憲法裁判所長候補の人事聴聞会が開かれました。チェ・ヒョクジン議員(比例代表無所属)が「過去の統合、進歩党解散のように国民の力の(解散)審判請求に対しても同じ物差しを当てるべきだ」として質疑しました。キム・サンファン候補は「一般的には従来の統進党事件の法理により判断しなければならない」と答弁しました。
すると、人事聴聞特委委員長のイ・ジェジョン議員が追加でこのような質問をしました。イ・ジェジョン議員は弁護士時代、統合進歩党解散事件の被請求人の代理人でした。多少分かりづらいかもしれませんが、なるべく発言をそのままお伝えします。
「ドイツは最近、極右政党であるドイツ民族民主党に対し、4年以上にわたり十分な審理を行い、結局は憲法裁判所が(解散命令という)判断を下すことを自制しました。国民が選出した政党、その後の選挙過程で国民の審判でドイツ社会では十分に制御できるという判断からでした」
「大韓民国の憲法裁判所は、国民が選出した政党の政治家たちがいるそのような政党の解散に関しては、その政治的生命の延長可否については国民に任せるのが、そしてまた先の弾劾過程を導いてきたのは絶対有識者層や国会そして憲法裁判所ではなく、その役割は国民によって導かれ、リードされてきたと、私は思います。そのため、依然として我々はそのような偉大な国民に任せるべきだと考えています」
憲法裁判所長候補として、これまで憲法裁判所の決定に従うという非常に基本的に答弁せざるを得ないということはわかりますが、自制すべき領域だという考えについてはどう思いますか。」
キム・サンファン候補はこう答えました。
「委員長の考えに全面的に共感する立場です。従来の統進党解散決定が、結論はどうであれ、具体的適用がどうであれ、提示した法理そのものは委員長が発言した趣旨だとは思います。抽象的に提示された法理そのものに関しては(そうです)。結局は民主主義原理に対する法治主義的制限というのは、できるだけ警戒しなければならず、謙抑されなければならないという意見だと私は理解していますが、裁判官として裁判をしながらも常にそのような考えを持っていました。それで、大いに共感するという立場です」
私はイ・ジェジョン議員とキム・サンファン候補者の考えが全面的に正しいと思います。キム・サンファン候補は7月24日、憲法裁判所長に就任しました。
まとめたいと思います。尹錫悦大統領の12・3非常戒厳令は親衛クーデターでした。内乱でした。内乱の首謀者と重要任務従事者には徹底的に責任を問わなければなりません。寛容を施してはいけません。そうしてこそ内乱を収束させ、再発を防ぐことができます。
しかし、憲法裁判所が国民の力を解散するのは別次元の問題です。政党に対する審判は選挙で票で下すべきです。大韓民国は民主共和国だからです。この世界は考えが他の人々と共に生きていかなければならない所だからです。皆さんはどう思われますか。