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韓国で増加する「10代の自傷」…不安や無力感にさいなまれる教師たち

登録:2025-06-20 08:26 修正:2025-06-20 09:54
クリップアートコリア//ハンギョレ新聞社

 高校教師のKさん(27)は5年ほど前、宿題を点検していた時に、ある生徒の問題集で「死にたい」という内容で埋め尽くされた落書きと、命を絶とうとしているウサギの絵を発見した。驚いたKさんはすぐにその生徒の担任教師に伝えるとともに、気にかけるようにしたが、それ以上は介入する方法がなかった。生徒が身を投げたのは、それから半年ほどたった頃だったという。生徒は幸いにも助かったが、障害を抱えた。Kさんは19日、ハンギョレに「経験豊富な担任の先生もとても苦しんでいたし、私も『あの時、私がもっと積極的に介入していたら違っただろうか』という自責の念で長いこと苦しかった」と打ち明けた。

 韓国では年々、自傷や自殺を試みる子どもが大きく増えているが、教育現場で危険の兆候を時には親よりも先にとらえる教師は、専門性と権限の不足できちんと対応できていない現状を訴える。生徒を救う「ゴールデンタイム」を逸したという罪悪感に、教師も深く苦しんでいるという。

 自傷行為に及ぶ子どもは急増している。国立中央医療院の「救急医療現況統計」によると、2023年に自傷や自殺を試みて救急室を訪れた10代以下の青少年は6395人。2年前の2021年(5486人)から909人、14.2%の増加だ。統計に含まれない自傷は数倍にのぼるとみられる。

 教師の対応は不十分だ。教師たちは自傷・自殺衝動を告白する生徒に向き合った瞬間、対応方法が分からず当惑すると口をそろえた。Kさんは手首から腕にかけての自傷の痕を見せてきた別の生徒のことを語りながら、「衝撃的で不安を感じたが、専門家ではないため生半可にカウンセリングを試みることもできず、病院に行きなさいとしか言えなかった」と話した。

 自傷した生徒の相談に応じるためのマニュアルや教師に対する教育は不足しており、校内の専門家である相談専門教師の数も十分ではない。教育部が「共に民主党」のキム・ムンス議員室に提出した「2024年専門相談教師・専門相談士配置の現況」によると、専門相談教師が配置されている学校は、巡回教師を含めても小中高の48.6%にとどまる。

 病院で治療を受けさせるのも容易ではない。保護者の同意がないと、一般教師はもちろん、相談専門教師も病院診療は強制できない。精神科診療に対して強い偏見を持つ保護者も少なくない。ソウルのある小学校教師のLさん(29)は、「(危険な状況にあっても)子を病院に連れて行くことを望まない親が非常に多い。(親は子どもに)『そんなことはするな』と言えばよい、と言うのだが、そんなに簡単な問題ではない」と語った。韓国教員団体総連合会教権強化局のチン・ソグォン部長も、「教師たちは(保護者から)『うちの子がおかしいと見ているのか』と数え切れないほど言われているので、慎重にアプローチせざるを得ない」と述べた。

 生徒と教師いずれも守るために、生徒の心の健康(メンタルヘルス)を管理する専門教師の拡充と権限の拡大を求める声があがっているのはこのような背景からだ。全国教職員労働組合のチェ・ソンジョン報道担当は、「生徒の心の健康の危機に対応する方法が不十分なため、教師たちの間では、専門教師の判断で病院に行かせられるよう権限を拡大すべきだという要求もある」と話した。

パク・チャンヒ、イ・ジヘ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1203786.html韓国語原文入力:2025-06-20 06:00
訳D.K

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