米国のジョー・バイデン大統領が民主党の大統領選挙戦から撤退したことについて、韓国大統領室は22日、「韓米同盟に対する米国内の支持は超党派的」だと強調した。米国の大統領選挙で誰が勝ったとしても、韓米関係に大きな問題は生じないということだ。しかし、価値観外交に集中してきたバイデン大統領の任期が終盤に至り、同盟関係より取引関係を強調するドナルド・トランプ前大統領が有力な大統領候補として浮上したことで、韓国政府の外交戦略の調整は避けられなくなっているとの分析が示されている。
大統領室の関係者はこの日、バイデン大統領の撤退について「米国内の超党派的な韓米同盟支持」を強調しつつ、「韓国政府は韓米グローバル包括戦略同盟を発展させ続けていくために、米国側との緊密な協力を続けていく」と語った。外交部も、「韓国政府としては、グローバル包括戦略同盟へと格上げされた韓米同盟を発展させ続けていくために、米国側との緊密な協力を続ける」と表明した。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権はこれまでバイデン政権の価値観外交に積極的に同調し、韓米日連帯戦線を強固にすることに外交力を集中してきた。核を基盤とする同盟へと韓米同盟を強化した昨年4月の「ワシントン宣言」に続き、8月には韓米日の協力精神をうたった「キャンプデービッド合意」を結び、このような外交路線をさらに強化した。一方、北朝鮮には「力による平和」を強調し、独自制裁を打ち出すなど、圧力を加え続けてきた。
しかし、バイデン大統領の撤退で米大統領選挙の構図が急変し、それに伴って韓国政府の対米外交戦略も複雑になっている。民主党候補として有力なカマラ・ハリス副大統領が大統領になった場合は「第2期バイデン政権」とみなしうるが、このところ勢いに乗っているトランプ前大統領が政権に返り咲いた場合、米国の対外政策は全面修正されるだろうからだ。ある元外交官は、「今も韓国政府内では、トランプ前大統領は当選しないだろうという意見が多いと認識している」とし、「これは冷静でも客観的でもないアプローチ」だと述べた。
外交界隈では、今からでもバイデン政権の外交路線をそのまま踏襲する戦略から脱し、中国、ロシア、北朝鮮などに対する韓国独自の外交を準備すべきだと指摘する声がある。イ・ベクスン元オーストラリア大使は、「トランプ前大統領は価値観外交には関心がない。現実主義的な外交路線をとる可能性が高い。米国民主党政権の路線に従ってきた韓国政府は困惑する立場に立たされている」とし、「結局、韓国政府も今からでも方向を転換しなければならないのではないか」と語った。世宗研究所のキム・ジョンソプ副所長は、「韓国政府はこれまで典型的な対決構図にあって先兵役を自任し、周辺国との関係を自ら狭めてきたが、それを反省してバランス感覚のある外交を展開すべきだ」と述べた。