韓国統一部が、北朝鮮向けビラを取り締まろうとする南北境界地域の地方自治体や国会の行政・立法措置を、「違憲・違法」行為に追い込む口実を探そうと奔走した事実が確認された。さらに、北朝鮮向けビラ散布の主体である「個人」が地方自治体による取り締まりを問題提起する方法を統一部が調査したという事実も確認された。
11日、統一部の事情に詳しい複数の関係者によると、統一部は先月下旬、京畿道と坡州市(パジュシ)による北朝鮮向けビラ散布の取り締まり措置が「違憲・違法」であると指摘するための法律の検討意見を、法律事務所と法律専門家に依頼した。「違憲・違法」という方向を示してうえで意見をほしいと求めたかたちだ。
統一部がこのような注文をしたのは、京畿道が京畿北部警察庁と坡州警察署に北朝鮮向けビラを散布した脱北者団体「自由北韓運動」に対する捜査を依頼し、キム・ギョンイル坡州市長が記者会見を行って「坡州市の全地域を危険区域に指定し、北朝鮮向けビラを散布する者の出入りを禁止する措置を積極的に考慮する」と明らかにした6月21日の直後のことだ。
境界地域の地方自治体がビラ散布を取り締まることを阻止する「法律的武器」を注文した主体は、統一部で北朝鮮人権問題を担当する「人権人道室」だ。人権人道室は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後、従来の「人道協力室」を廃止し、業務の焦点を北朝鮮の人権に合わせて新たに設けた部署だ。
統一部はこの過程で、中央省庁レベルでの対応の論理だけでなく、「個人が(取り締まる地方自治体に対して)取れる措置」も教えてほしいと求めた。これは行政府の業務範囲を越えるものだ。地方自治体の取り締まりに対抗する「法律的武器」を、統一部がビラ散布の主導者に提供しようとする意図が背景にあるのではないかと解釈しうる。
さらに統一部は、野党「共に民主党」のパク・ジヘ議員(議政府甲)とユン・フドク議員(坡州市甲)がそれぞれ代表発議した南北関係発展法の一部改正案について、「違憲・違法」の要素を指摘する法律意見を法律事務所と法律専門家に求めた。憲法裁判所は昨年9月26日、北朝鮮向けビラ散布を全面禁止した南北関係発展法の24条1項3号と25条のうち、24条1項3号の部分が「過剰禁止の原則」に反して違憲だと評決した。それを受け、パク・ジヘ議員とユン・フドク議員の改正案は、ビラ散布取り締まりと制限を行う法的根拠を新たに設けるための補完立法行為の一つだ。
統一部は、地方自治体と国会の北朝鮮向けビラの取り締まり・制限を阻止する「法律的武器」を探すばかりで、南北の「ビラ・汚物風船」のやりあいで高まる対立と市民の不安を解消する主務省庁レベルでの対策準備には消極的だ。たとえば、統一部は行政安全部や警察庁などの関係省庁とビラ問題に関する公式協議を行っていなかったことが明らかになった。警察庁と行政安全部は「ここ1年間、北朝鮮向けビラ散布について、統一部と協議したことはない」と回答した。野党「祖国革新党」のキム・ジュンヒョン議員がハンギョレに明らかにした。
統一部はハンギョレの質問に対し、一連の法律諮問を要請した事実を認め、「これは法律的に争点になる可能性がある事案に対する専門家の法的検討意見を求めたものであり、特定の結論を導きだすためのものではなく、専門家の名声を考慮すれば可能なことでもない」と回答した。
元政府高官の関係者は「憲法裁判所は違憲評決を出しながらも、北朝鮮向けビラの散布(にともなう対立)を『明白で現存する脅威』とみなし、立法的補完を通じて適切な(取り締まり)措置を取る必要があると述べた」とし、「統一部の動きは、憲法裁判所のこのような評決の趣旨に正面から反するもの」だと批判した。