日本で圧倒的なユーザー数を持つメッセンジャーアプリ「LINE」の運営企業「LINEヤフー」のデータセキュリティ問題を提起し、日本政府がネイバーの持ち株を売却するよう事実上圧力をかけている問題の波紋が広がっている。グローバル・サプライチェーンと韓日経済関係の専門家である大邱大学経済金融学部のキム・ヤンヒ教授(元国立外交院経済通商開発研究部長)は、この問題の本質は「日本政府が安全保障を名目に自国内の外国の投資企業の経営と資本構造の問題にまで介入することを、どこまで容認すべきか」ということだと指摘する。キム教授は、韓国政府はネイバーの立場を尊重しながらも、日本の総務省が強引に海外企業に関与することは座視できないという立場をもっと明確に示すべきだと述べた。
‐日本は今回の件はデータセキュリティーという「経済安全保障」の問題だと主張しているが。
「日本側には経済安全保障に対する実際の懸念はある。仮に日本のヤフーが韓国に進出してデータが流出したとすれば、韓国政府はどのように反応するだろうか。まずは、日本のデータ安全保障に対する懸念は理解する、ということを前提にして、対話の出発点としなければならない。
日本の政府と政界の保守派が、韓国のネイバーと関係しているLINEヤフーが日本の主要インフラを握っていることをかなり以前から懸念していたというのも、問題の根底にある。日本ではLINEヤフーの影響力はきわめて大きい。日本企業46万社が、LINEヤフーを基盤とするLINEワークスをチャット、メール、住所管理、顧客の予約スケジュール管理などに使っている。金沢市、愛知県、大阪市などの地方自治体や地方議会でも使用しているところが多い。日本政府は、韓国企業が日本の重要な基本インフラを握っていることが不安で嫌なのだ」
‐韓日の安全保障協力が強化されているが、日本は安保において韓国を信じられないという態度ではないのか。
「韓日と韓米日は『価値と理念を共有する類似国』(like-minded countries)であることを強調して昨年キャンプデービッド首脳会議を行い、安保協力を強化することにした。そのうえで、日本政府が介入して韓国企業にこのような要求をするのは明らかに無理のあることだ。日本が韓国をそのようにみるならば、韓米日キャンプデービッド宣言は無に帰することになる。同時に、韓国でこの問題を反日感情に結びつけるのも役に立たない。この問題に伊藤博文の例えを持ち込んだり、独島(トクト)訪問などでアプローチする野党指導者(の対応)は、日本の右派の反発を引き起こし、問題を複雑にさせ、ネイバーの助けになるどころか、むしろ深刻な被害をもたらすことになるだろう。日本でLINEヤフーが韓国と関係していることがよりいっそう強調され、これを機にネイバーとの関係を確実に断ち切らなければならないという方向に傾くことになる」
‐日本の総務省の措置をどのように評価するか。
「総務省の措置には無理があることは明らかだ。ネイバーと結びついているLINEヤフーで一部のセキュリティー問題があったとはいえ、総務省の対応は過剰だとみられる。すでにネイバーがLINEヤフーの経営権も持っていない状況で、株式売却でセキュリティー問題を解決できるのか。LINEヤフーは、技術とコンテンツの面でネイバーに依存せざるをえない状況にある。ソフトバンクもそのような理由のためにネイバーと経営統合したのだ。にもかかわらず、総務省がこんなふうに短期間で関係を断ち切れというのは現実的に無理がある」
‐今回の問題におけるソフトバンクの立場はどのようなものか。
「その点をよく把握する必要がある。現実的に総務省の要求どおりに、短期間にネイバーとLINEヤフーが関係を断ち切ることは不可能だ。ソフトバンクがそもそもネイバーと手を握ったのは、ネイバーのインフラ、クラウド、様々なネットワークから恩恵を受けられるからだ。総務省がこのように強引に全て切れというのは、ソフトバンクにとっても大きな痛手だ。それに、ソフトバンクが資本と技術で一人立ちすれば、LINEヤフーのセキュリティーが強化されるという保障はあるのか」
‐韓国政府が韓日関係を考慮して日本に過度に弱腰で対応したという批判がある。
「ネイバー側もこの問題が大きな注目を集めることを望んでおらず、韓国政府にも静かに対処してほしいと要請をしたというのは合っているようだ。しかし同時に、韓国政府が韓日関係を考慮して弱腰で対応した側面もあるとみられる。特に、10日に科学技術情報通信部のカン・ドヒョン第2次官が、遅ればせながらも示した韓国政府の立場は、まったく話にならない。カン次官が『日本政府は、行政指導に株式売却という表現がないことを確認したが』と言った後、それでも韓国企業にとって圧力と認識される点について遺憾の意を表明したことは、状況を深刻に誤魔化したものだ。実質のところ、日本政府の株式売却の圧力はすでに明らかになっており、日本の行政指導の公文書にもはっきりと『資本関係の解消』という表現がある。日本政府が嘘をついたのだ。それなのに韓国の科学技術部次官がこのような基本的な事実さえ確認せず、総務省の言葉をそのまま受け入れたも同然だ」
‐もはや韓国政府がより積極的に乗りだすしかない局面にある。韓国政府は何をすべきか。
「韓国政府は、ネイバーの立場を尊重しながらも、日本政府が強引に海外企業に関与することは座視できないというシグナルを強く明確に送り続けなければならない。この問題が、総務省の立場どおりに一方的に処理されてはならない。セキュリティー専門家、IT企業の専門家、市民が集まって公論化し、最善の解決策を見出す必要があり、日本政府がこのような形で企業に圧力をかけることに対して問題提起しなければならない。いまは韓国政府が強く明確に、韓国企業を適切に保護しているというシグナルを日本に示さなければならない。特に、『自由民主主義』を標ぼうする日本という国が、安全保障を名目に、外国企業が出資したLINEヤフーという企業をどのように処するのかがきわめて重要な意味を持っているという点を、はっきりと言及しなければならない。日本に投資した多くの海外企業にとっても焦眉の関心事だという点を、日本政府は重く認識しなければならない」