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[世相を読む] トヨタ事態の教訓/ユン・ジンホ

原文入力:2010-03-18午後08:08:52(1552字)

←ユン・ジンホ仁荷大経済学部教授

トヨタ自動車のブレーキ欠陥によるリコールに始まったトヨタ事態はなかなか沈静の兆しが見られない。トヨタ自動車側は豊田章男社長の米国議会聴聞会証言を契機に事態が鎮静することを希望したが、最近カリフォルニア州オレンジカウンティ検察がトヨタ自動車を詐欺罪で起訴するなど問題は続いている。今回の事態収拾のためにトヨタ自動車は全世界で850万台をリコールしたが、これによる損失は莫大な金額に達するものと見られる。しかし、さらに大きな問題はトヨタ自動車の品質および安全に対する消費者の信頼喪失と予想される販売減少,死亡者および負傷者と関連した法律訴訟にともなう途方もない賠償額であろう。

かつて品質と安全の代名詞と呼ばれる程に消費者の信頼を受けてきたトヨタ自動車がこのように窮地に追い込まれることになった原因には種々のことがある。すなわち世界1位自動車会社の席を占めるための過度に急速な成長、上意下達式企業文化、行き過ぎた費用節減努力、莫大な広告費と社会的影響力による言論の批判機能喪失などがそれだ。しかし、トヨタ事態を巡るマスコミの報道で一つ見過ごしているものがある。すなわちトヨタ自動車の急速な成長の陰に「乾いたタオルを絞る」と呼ばれる強力な労務管理と労働組合に対する抑圧が隠れており、これが今回の事態の重要な原因の一つとして作用したという事実だ。

最近、米国下院監督・政府改革委員会委員長のイドルプス タウンス議員はトヨタ自動車の少数派労働組合が2006年に当時の渡辺捷昭社長に送ったメモを言論に公開した。トヨタ自動車の行き過ぎた人員縮小と非正規職労働者の過多使用により熟練した人材が不足しているだけでなく、長時間労働と費用節減努力のために品質に問題が生じているということだ。しかし経営陣はこのメモを徹底して無視した。

これはまさにトヨタ自動車側が行き過ぎた労働強度,非正規職過多使用,行き過ぎた費用節減などにより自動車の安全と品質に悪い影響を与えている可能性があることをすでに数年前から知っていながらも無視したことを示している。事実、言論に報道されなかっただけであり、トヨタ自動車は数年前から日本国内で毎年100万台に達する自社製品をリコールしてきた。今回の世界的なトヨタ自動車リコール事態はその間に累積した問題が一度に噴出したと見なければならないだろう。

トヨタ自動車のリコール事態は他人事ではない。韓国の自動車会社もこの間トヨタ見習いに熱中した。トヨタ自動車の生産システムだけでなく、作業編成の効率性,協力的労使関係などはすべて韓国自動車会社らの目標であった。しかしまさにこういうトヨタの費用節減努力と労務管理,労使関係政策自体が自動車の品質と安全問題を産んだ根本原因の中の一つという事実は無視した。長時間労働と深夜労働など殺人的な労働強度,多すぎる非正規職労働者使用,労使協力という美名の下に労組馴らしなどは韓国の自動車会社がトヨタよりさらに極端に推進してきた政策だ。

したがって単純に品質問題,安全問題により大きな関心と努力を傾けろとの会長の指示だけではこの問題は解決できない。労働者に正当な報償と休み時間を提供し、多すぎる非正規職使用と外注下請けを減らし、労働組合の参加と批判機能を保障することによって経営陣に対する監視と牽制機能を正しくするならば、再度のトヨタ事態は避けられるはずだ。

ユン・ジンホ仁荷大経済学部教授

原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/410936.html 訳J.S