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図面なし、わずか1カ月で作った小銃…韓国国産第1号「M2カービン」初公開

登録:2022-11-30 05:24 修正:2022-11-30 11:20
「機密解除—国軍情報司令部の銃器を見る」特別展
M2カービン小銃の大韓民国第1号試作品=戦争記念館提供//ハンギョレ新聞社

 現在の韓国は、戦車、自走砲、イージス駆逐艦、超音速戦闘機などほとんどの兵器を国内で作っているが、1970年代初期までは自国で作れる兵器はなかった。当時の韓国は、銃や大砲はもちろん帯剣すら作ることができなかった。小銃の銃口に入れて清掃するのに使う槊杖(さくじょう)まで、米国の軍事援助に依存していた。

 1954年11月、韓国と米国は韓米合意議事録を締結し、韓国は米国の軍事援助を約束される代わりに、韓国軍の作戦統制権は国連軍司令官の管轄下に置かれることになった。具体的には、米国は20個の現役師団を含む72万人の韓国軍兵力を維持し、国軍に対する補給と装備の責任を負うことを約束した。韓国は一時、国防費の約80%を米国の軍事援助に依存した。1960年代まで韓国軍は、米国の軍事戦略に従い、米国が提供した兵器と装備を備え、米軍の作戦統制を受けた。

 1968年1月には北朝鮮による大統領府奇襲(1・21事態)、1968年10月と11月には蔚珍(ウルチン)と三陟(サムチョク)への武装スパイ浸透事件などが発生した。米国は1969年、「アジアの問題はアジア人同士で」とするニクソン・ドクトリンを発表し、ベトナム戦争から手を引き始めた。1971年、京畿道東豆川(トンドゥチョン)にいた在韓米軍第7師団も、一方的に撤収した。当時、韓国は軍人5万人をベトナムに派兵し米国を助けていたが、米国は韓国の反対を無視し第7師団の撤収を押し切った。1970年以降は米国の無償軍事援助も減り、国防費の60%以上を韓国が負担しなければならなかった。

 1971年11月10日、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領は、安全保障の状況は超非常状態だとし、「緊急兵器開発指示」を命令した。朴大統領は、予備軍の20個師団を武装させるために必要な兵器を開発・生産するとして、その年の12月30日までに小銃、機関銃、迫撃砲、ロケット砲などの1次試作品を製作するよう指示した。朴大統領は「最初に作った兵器は銃口が裂けてもいいからまずは試作品から作り、徐々に改良していき、使えそうな兵器を生産せよ」と述べた。当時の韓国軍の個人基本火器は、米国が作ったM1小銃とM2カービン小銃だった。当時の試作品製作事業の名称は「稲妻事業」だった。稲妻のように速く作らなければならないという意味と、「稲妻で豆を炒めて食べる」(急いで作業を進めることを意味することわざ)という開発者の複雑な胸の内を含蓄するものだったという。

 当時の韓国内の状況を考えると、2カ月にもならない期間で小銃、迫撃砲、ロケット砲などの試作品を作ることは不可能にみえた。経験は当然なかったし、産業基盤、技術、装置もなかった。当時の韓国には、兵器開発の基礎となる金属、機械、電気、電子、化学などの産業基盤はまったくなかった。兵器生産に関係する企業を探してみると、豊山金属がコインを製作してフィリピンに納品しており、韓国火薬は工業用火薬を製造しており、大同工業は農機具を作っていた。

 国防科学研究所の職員たちは、ソウルの清渓川(チョンゲチョン)を頻繁に訪れて各種工具や装置などを求め、小銃の図面がないため実際の銃器を分解し、部品の実物をスケッチした。逆設計方式だった。ロケット砲は窓枠を作るアルミ鋳物で製作した。国防科学研究所は1日24時間働き、わずか1カ月で小銃と迫撃砲の試作品を作った。1971年12月16日、大統領府の大接見室に、最初の国産開発の兵器8種類(M1小銃、M2カービン小銃、機関銃、3.5インチロケット砲など)が展示された。

イラクのタリク拳銃=戦争記念館提供//ハンギョレ新聞社

 この時製作された「M2カービン銃大韓民国1号試作品」の実物が、一般に初公開される。戦争記念館で30日に開幕する特別展「機密解除—国軍情報司令部の銃器を見る」においてだ。今回公開されるM2カービン銃は、当時製作した試作品10丁のうちの一つであり、大韓民国の自主国防の胎動期を代表する貴重な遺物だと戦争記念館は説明した。

 今回の特別展では、国軍情報司令部が長期間保管し、戦争記念館に移管した銃器52点も展示される。M2カービン銃の試作品だけでなく、マドセン機関銃(Madsen M1937)の中国ライセンス生産品、イラクのタリク拳銃をはじめ、第2次世界大戦当時のドイツと日本の主力銃器から現代の民間護身用銃器まで、韓国では見ることのできなかった様々な銃器に会うことができる。特別展は来年3月5日まで開かれる。展示観覧は無料で、毎週月曜日は休館。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1069381.html韓国語原文入力:2022-11-29 17:09
訳M.S

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