「女王の棺への拝礼ができなかった」弔問外交、日本の首相のいる場所に自ら出向いた略式首脳会談、北朝鮮問題が抜けた国連総会演説、48秒間の韓米首脳会談、米議会を侮蔑する発言…
エリザベス女王への弔問や韓日、韓米首脳会談を通じた関係改善と通商不利益の改善などを目的とした尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の歴訪では、常識外れの場面が連続ドラマのように次々と繰り広げられた。以前の大統領の外国歴訪でも、紆余曲折と試行錯誤がなかったわけではないが、今回の尹大統領の歴訪で起きた一連の事件は前例がないほどだった。
ウィンストン・チャーチル英国首相が1950年に「首脳会談(Summit)で物事がさらに悪化するのは難しい」と述べたほど、首脳会談は開くこと自体が「成功」と見なされてきた。「失敗した首脳会談はない」というのが国際外交舞台の定説となっているほどだ。首脳会談自体が両国間の徹底した事前準備と緻密な調整の末に行われるため、ミスがあったとしても、どちらか一方が「元金を失う」可能性は極めて低いからだ。
しかし、今回の歴訪中に開かれた韓日、韓米首脳会談はそれぞれ「首脳会談」という名前をつけることもできない「略式」会談と顔合わせに近い対面にとどまった。尹大統領の「略式会談」と「対面」はなぜ失敗したのか。
国立外交院長を務めた韓東大学のキム・ジュンヒョン教授は、尹大統領が外交を軽く考えたと指摘する。キム教授は「外交初心者の尹大統領が外交を甘く見ていた」とし、大統領が勉強せず、ビッグピクチャーを描いていないから、下(実務者)も動いていないと語った。
「外交はプロトコル(儀典)だ」という言葉があるほど、外交で儀典が崩れれば国格も崩れる。エリザベス女王の棺への拝礼は「現地交通事情のため」実現せず、強制動員問題で被害者に当たる韓国の大統領が歴訪に同行した韓国記者にも知らせず、加害者に当たる日本首相のイベント会場に出向く「奇異な」状況が起きた。韓日略式会談のニュースは尹大統領を「発見」した日本記者がソーシャルメディアに投稿したことで伝えられた。
オ・テギュ元大阪総領事は「対面する形も日本に振り回された。我々は略式会談と言い、日本は『懇談』と表現する侮辱的状況が起きた」と述べた。さらに「文在寅(ムン・ジェイン)政権が韓日関係を駄目にしたという認識を対日外交の出発点にし、国民を説得しようともせず、(急いで)韓日交渉を開くことにこだわっている」と付け加えた。
韓国の国益と対北朝鮮政策などを世界の首脳に知らせる国連総会というチャンスを逃してしまったのも、尹大統領が自ら招いた結果という分析もある。ミスが次々と起きた主な原因が「自由」と「価値」という曖昧な基調を掲げた「外交アマチュア」の大統領と大統領室にあるという指摘だ。外交安保関連部署で室長級の肩書を持っていたある人物は「首脳外交は両国間の利益のバランスと調和を追求するものだ。ところが尹大統領は具体的な国益の代わりに抽象的な自由と価値連帯を主張している」と述べた。
尹大統領の米国中心の考え方が問題の根源だという分析もある。過度に韓日首脳会談に執着したのも、韓米日安保協力を強調する米国の歓心を買おうと焦りすぎたためだという。中央大学のイ・ヘジョン教授は、「尹大統領の外交メッセージ管理が失敗したのは、認識体系がないためだ」とし、「戦略的かつ根源的な対米外交認識の転換が必要だ。このままいくと、尹大統領の価値観外交は崖っぷちに立たされるだろう」と警告した。