これまでに確認されている新型コロナウイルスのうち、感染力が最も強力な「BA.2.75(ケンタウロス)」の感染者が、韓国国内で初めて確認された。この感染者は地域社会で感染したことが確認されたことから、今後のコロナの再流行規模は政府の予測値より拡大しうるとの懸念の声があがっている。
疾病管理庁は14日、BA.2.75が国内で初めて確認されたと発表した。感染者は仁川(インチョン)に住む60代で、8日に症状が現れ、11日にコロナ確定判定を受けており、感染可能性のある期間に海外渡航歴はない。これは地域社会で感染したことを意味する。感染者は現在のところ軽症で在宅治療中。現在までに同居人1人と地域社会での接触者3人の中からさらなる感染者は確認されていない。
この日の疾病庁の説明を総合すると、BA.2.75は5月26日にインドで初めて発見され、それ以降、現在までに米国、カナダ、ドイツ、オーストラリア、英国を含む10カ国で計119件の感染が確認されている。米アーカンソー州立大学の研究によると、この3カ月間のインドにおけるBA.2.75の拡散速度はBA.5の3.24倍。BA.5は変異発生前の新型コロナウイルスに比べて感染力が5倍以上であることが知られるが(新型コロナウイルス初期の武漢の実効再生産数を3.3とした時、BA.5は18.6ほどと推定)、BA.2.75はそれよりはるかに強力な感染力を示したわけだ。
BA.2.75は構造上、突破感染(ブレイクスルー感染)や再感染を起こす危険性が高い。以前のオミクロン株の下位系統と比べてスパイク(突起)たんぱく質に突然変異が多いため、より効果的に細胞と結合し、ワクチン接種や感染で形成された抗体を回避できるからだ。ギリシャ神話に出てくる半人半獣の「ケンタウロス」の名がつけられたのも、既存のウイルスとは異なるこのような特性のためだ。世界保健機関(WHO)は7日(現地時間)、BA.2.75を「懸念される変異株における監視下の系統」に分類したが、これは感染力が強いか致命率が高いため、公衆保健に影響を及ぼす可能性が高い変異株であることを意味する。
BA.2.75は世界的にはまだ拡散初期であるため、重症率および致命率は明らかになっていない。専門家は、国外のBA.2.75の感染者の致命率を鋭意注視する一方で、国内の地域社会でのさらなる感染が発生しないよう検査を拡大すべきだと指摘する。嘉泉大学吉病院のオム・ジュンシク教授(感染内科)は「感染力はBA.5より強力な可能性があるが、致命率に関するデータが全くないため、国外の致命率データを見守らなければならない」としつつ、「国内初のBA.2.75感染の疑われる患者は地域社会で感染しているため、隠れた患者を見つけるために全ゲノム解析の件数を増やすべきだ」と述べた。
疾病庁は「接触者については最終接触日から14日間の追跡検査を行っており、感染経路について深層調査中」とし「BA.2.75の感染力上昇と免疫回避の可能性が予測されていることから、国内での発生と海外からの流入に対する監視を強化するとともに、国内での発生の推移についての綿密なモニタリングを続ける」と説明した。