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「国務委員キム・ヨジョン」、対米特使カードを念頭に置いた布石か

登録:2021-10-01 02:34 修正:2021-10-01 08:24
最高人民会議第14期第5回会議で国務委員会を新たに組織 
キム・ヨジョンとチョ・ヨンウォンが新たに国務委員に 
 
「米国通」チェ・ソンヒ外務省第1次官が脱落 
「中国通」キム・ソンナム党国際部長が新たに選出 
 
「対南人材」メン・ギョンイル、最高人民会議常任委員に選任
「労働新聞」は30日、平壌の万寿台議事堂で29日に開かれた最高人民会議第14期第5回会議2日目で、「キム・ヨジョン代議員を国務委員会委員に補選(選出)した」と報じた/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 朝鮮労働党中央委員会のキム・ヨジョン副部長が国務委員会に初めて選出された。「労働新聞」は30日、平壌(ピョンヤン)の万寿台(マンスデ)議事堂で29日に開かれた第14期第5回会議2日目で、「キム・ヨジョン代議員を国務委員会委員に補選(選出)した」と報じた。

 北朝鮮の「社会主義憲法」によると、国務委員会は「国家主権の最高政策的指導機関」(107条)で、「国家の重要政策を討議・決定」し、内閣を指導(110条)する。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が国務委員長だ。国務委員長は「国家を代表する朝鮮民主主義人民共和国の最高領導者」(憲法100条)だ。

 キム・ヨジョン副部長の「国務委員会入り」は二つの意味を指摘することができる。まず、キム副部長が党(宣伝扇動部副部長)と議会(最高人民会議代議員)に続き、政府(国務委員)でも実際の役割にふさわしい高位職を公式に担うことになったことだ。公式の権限と責任の範囲がより広くなり、かつ高くなったということだ。キム副部長は金正恩委員長とともに権力の中心で公に活動してきた「白頭血統(金日成(キム・イルソン)と金正日(キム・ジョンイル)の直系)」で、「事実上のナンバー2」と認識されてきた。

 二つ目に、韓国はもちろん米国への「特使活動」を念頭に置いた「高位国家職」の付与である可能性だ。韓国政府の内外には「キム・ヨジョン副部長の国務委員選任は、適切な時期に金正恩委員長の対米特使カードとして使うという戦略的布石である可能性がある」という観測がある。北朝鮮の代表的な「米国通」であるチェ・ソンヒ外務省第1次官が国務委員から脱落し、キム副部長が新たに選任されたという事実は、このような脈絡で注目する必要があるということだ。キム・ヨジョン副部長は2018年2月、金正恩委員長の「特使代表団」として訪韓したが、この時は公式の職責の高いキム・ヨンナム最高人民会議常任委員長が「団長」を務めている。キム・ヨジョン副部長は昨年7月10日の談話で、「できれば今後(米国)独立記念日の記念行事を収録したDVDを個人的に必ず入手しようと考えていることについて、(金正恩)委員長同志から許可を得た」と述べ、訪米の意思を遠回しにほのめかしてもいる。

キム・ソンナム朝鮮労働党国際部長兼国務委員/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 国務委員会の構成では、「チェ・ソンヒ脱落」を「キム・ソンナム選出」と結びつけて考える必要もある。労働党国際部長のキム・ソンナム氏は国務委員に初選任され、最高人民会議外交委員長も新たに務める。労働党の対外政策を実務的に総括する同氏は、代表的な「中国通」だ。「中国通」が浮上し、「米国通」が沈んだかたちだが、これは「国際関係構図が『新冷戦』構図へと変化したことで、より複雑になったのが現在の国際情勢の変化の主な特徴」という金正恩委員長の認識にもとづいて考えてみる必要がある。

チョ・ヨンウォン朝鮮労働党中央委政治局常務委員兼国務委員/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 「金正恩の影」と称されるチョ・ヨンウォン労働党政治局常務委員兼組織書記も、国務委員に新たに選任された。チョ書記もキム・ヨジョン副部長と同じく、党と議会に続き政府でも高位職を公式に担うことになった。キム副部長とチョ書記が名実共に「金正恩のリーダーシップ」を支える二大軸として位置づけられたわけだ。

 新たに組織された国務委員会は13人(委員長:金正恩、第1副委員長:チェ・リョンヘ、副委員長:キム・ドクフン、委員:チョ・ヨンウォン、パク・ジョンチョン、オ・スヨン、キム・ヨンチョル、キム・ソンナム、リ・ヨンギル、チョン・ギョンテク、チャン・ジョンナム、リ・ソングォン、キム・ヨジョン)。老齢のため引退したパク・ポンジュ元首相、キム・ジェリョン党組織指導部長、党書記のリ・マンゴン、キム・ヒョンジュン、リ・ビョンチョル、キム・スギル元平壌市党責任書記、キム・ジョングァン前国防相、キム・ジョンホ元人民保安相(社会安全相)、チェ・ソンヒ第1次官の各氏が脱落した。かわってキム・ドクフン首相、党書記のパク・ジョンチョンとオ・スヨン、リ・ヨンギル国防相、チャン・ジョンナム社会安全相の各氏が新たに加わった。

 一方、北朝鮮の代表的な「対南人材」であるメン・ギョンイル労働党統一戦線部副部長が最高人民会議常任委員会の委員に選任された。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1013399.html韓国語原文入力:2021-09-30 16:37
訳D.K

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