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[記者手帳]日本、月城原発の5400倍の発がん性物質の放出になぜ言及しないのか

登録:2021-04-17 08:39 修正:2021-04-19 08:18
日本「月城原発からのトリチウムの放出はもっと多い」 
炭素14など危険な物質の放出には言及せず 
ストロンチウム90で比較すれば月城の5400倍を超える
日本の福島第一原発の敷地に建てられている2011年の原子力発電所事故で発生した汚染水の貯蔵タンク。日本政府はこの中に保管されている125万トンの汚染水を海洋に放出することを決めた/聯合ニュース
キム・ジョンスのエネルギーと地球//ハンギョレ新聞社

 「韓国原発のトリチウム放出量が日本よりも大きいことが明るみになり、笑いものになるだけ」

 自民党の重鎮である佐藤正久・外交防衛委員長兼外交部会長が14日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が日本の汚染水の放出決定を国際海洋法裁判所に提訴する案を検討するよう指示したことについて「虚勢そのもの」だと嘲笑し、ツイッターに投稿したコメントです。日本の麻生太郎・副総理兼財務相も前日の記者会見で汚染水の放出について「中国やら韓国やらが海に放出しているのと同じ」だと述べました。

 日本メディアは政府の汚染水の放出決定を伝え、韓国の月城(ウォルソン)原発の年間のトリチウム(三重水素)放出量は23兆ベクレルであり、日本が毎年放出しようとする汚染水の22兆ベクレルより多いと報道しました。放出決定に反発する周辺国に対する日本政界の傲慢な態度がどこから始まったのか、教えてくれるものです。

 月城原発のトリチウムの放出量は年により異なりますが、23兆ベクレルが海に放出されたことがあるのは、その通りです。2016年です。韓国水力原子力が作成した『2016年環境放射能調査および評価報告書』の液体放射性物質の放出量資料によれば、この年に月城原発からは22兆9000億ベクレルのトリチウムが液体として放出されました。日本が約125万トンの汚染水を約30年かけて放出する場合の年間トリチウム放出量の22兆ベクレルより多少多いのは事実です。

 しかし、月城原発は日本が汚染水125万トンの放出をすべて終える前に寿命が尽きて閉鎖され、トリチウムをそれ以上は放出しなくなるのに対し、福島の事故現場からは月城原発の閉鎖後も汚染水が発生し続けることになるという点は、大きな違いです。福島では今この時間にも、汚染水が1日平均で約140トン発生しています。

 日本が福島の汚染水問題でトリチウムを前面に出すのは、本当に重要な問題から目をそらせようとしているからではないかとすら思えます。骨髄に蓄積され血液のがんを引き起こすことが知られているストロンチウム(Sr)90、トリチウムより半減期が466倍長く、魚類内での生物濃縮係数が5万倍も大きい炭素14などがそれにあたります。

 核燃料棒まで溶けて流れた最悪の事故により発生した汚染水と、正常な原発運営の過程での放出水を、日本がまず比較しようとするのは意外なことです。原発の原子炉の正常な核分裂の過程において、日本の原発事故と同じ放射性物質が作られるというのはその通りです。しかし、事故を起こしていない燃料棒、被覆材、格納容器など何重にも遮られ、環境に出てくるのはごく微量です。日本の福島では、そのような遮断壁がすべて壊れ、放射性物質が地下水と混ざり、今も汚染水が作られている状況です。

 あえて比較しようとするならば、炭素14とストロンチウム90を比較してみるといいでしょう。炭素14について、フランスの放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は「細胞のDNAに流入するため、放射線生物学の観点では興味深い物質だ。これによりDNAが損傷すると分子の分裂が起き、細胞が壊れたり遺伝的な突然変異が発生する可能性がある」と説明しています。

 日本が福島原発事故の汚染水に用いている多核種除去設備(ALPS)は、トリチウムだけでなく炭素14も処理できません。日本はそれでも、炭素14の濃度が基準値以下であるため、処理せず放流しても問題ないという立場です。東京電力が昨年12月に発表した資料によると、福島原発に保管されている汚染水125万トンのうち炭素14の平均濃度は1リットルあたり42.981ベクレルです。最高濃度も1リットルあたり215ベクレルであるため、放出基準(1リットル当たり2000ベクレル)を大幅に下回ります。しかし問題は、濃度ではなく総量です。

 福島の汚染水における炭素14の総量は、平均濃度を適用して計算すれば、約537億ベクレルに達します。日本がトリチウムだけを取り出して比較した月城原発の2016年の放射性物質の放出量の資料によれば、月城原発の炭素14の放出量は4億1700万ベクレルでした。日本の汚染水における含有量はそれより120倍以上多く、日本が30年かけて放出するとしても、月城より毎年4倍以上多く放出することになるわけです。

 ストロンチウム90はさらに深刻です。福島第一原発に保管されている汚染水には、1リットルあたりストロンチウム90が最大43万3000ベクレル、平均3355.342ベクレルが含まれています。平均濃度でも、放出基準値(1リットルあたり30ベクレル)の100倍を超える高濃度です。総量で計算すれば4兆ベクレルを超えます。

 日本は、ALPSを再び用いてトリチウム以外の放出基準を超える放射性物質をすべて放出基準値以下になるよう処理すると明らかにしました。環境団体や専門家らは、日本が既存のALPSでの処理によりこのような約束を守ることができるのかについて、疑問を提起しています。

 専門家の懸念とは異なり、日本がなんとかこの約束を守ったとしても、問題が解決されるわけではありません。日本が汚染水におけるストロンチウム90の含量量を放出基準に合わせても、総量としては変わらず約375億ベクレルが除去されずに残るであろうという理由からです。日本の計画通りであれば、30年間に年間12億5000万ベクレルずつ海に流れることになるわけです。月城原発の2016年のストロンチウム90の放出量22万8000ベクレルの5400倍を超える規模です。

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/991351.html韓国語原文入力:2021-04-16 15:58
訳M.S

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