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産業部の公務員はなぜ北朝鮮原発文書を削除したのか

登録:2021-02-03 02:58 修正:2021-02-03 08:05
産業部「裁判影響憂慮」口を閉ざす中で様々な解釈 
大統領府は「月城資料に挟まれて削除」ミスとの見方 
脱原発の修正など敏感な内容の流出を懸念した可能性も 

当の保守系メディアは2018年に「北朝鮮に原発建設を」
産業通商資源部は1日、「北朝鮮原発建設文書」の関連資料を公開した。産業部が「北朝鮮原発建設推進問題」に関し、「アイデア程度に検討した検討資料」と説明したにもかかわらず、政界を中心とした疑惑の提起が続いたため、原文を電撃的に公開したもの。写真は1日に産業部が公開した全6ページの文書/聯合ニュース

 保守野党と保守メディアが「利敵行為」の根拠として掲げた産業通商資源部の「北朝鮮地域原発建設推進案」文書が、北朝鮮の非核化を想定した産業部内部の検討資料であることが固まりつつある。

 連日「北朝鮮原発極秘推進疑惑」を煽っていた保守メディアは、いつの間にか論調を変えつつ手を引く様子を見せている。「北朝鮮での原発推進の事実を隠蔽するために文書を削除したのではないか」という疑惑を提起してきたものの、産業部に当の文書が残っており、原文も公開されたことで、「北朝鮮での原発建設の推進を続けようとして文書を残しておいたのではないか」という新たな疑惑を提起している。

 月城(ウォルソン)原発に関係する産業部の公務員による監査妨害罪などについての検察の起訴状によると、この文書は産業部のK書記官が監査院による監査直前の2019年12月1日夜から翌日未明にかけて業務用コンピューターから削除した530件のファイルのうちの1つだ。

 産業部は、K書記官が月城原発と関係がないように見える同文書を削除した理由については、裁判に影響を与えうるとして口を閉ざしている。文書が残されていた経緯や削除した理由によっては、監査妨害罪や共用記録物損傷罪などが適用され、量刑も変わりうると見ているからだ。

 大統領府からは、K書記官が同文書を意図的に削除したのではなく、誤って削除した可能性が高いという声が出ている。大統領府のチェ・ジェソン政務首席は2日、文化放送の番組「キム・ジョンベの視線集中」のインタビューに応じ、「(K書記官が)個別項目をすべて点検し、問題になりそうなものを削除したとは考えにくい。フォルダを丸ごと削除する過程で(北朝鮮関連文書が)入っていたのではないかと思う」と語った。

 実際に、削除された文書ファイルの中には、長官が出席した行事の写真ファイルなど、月城原発の早期閉鎖とは無関係なファイルも多数含まれている。敢えて削除する必要がないのに、他のファイルに交じって削除された可能性を示すものだ。

 しかし、検察の起訴状に添付された530件のファイルの削除状況を示す資料を見ると、問題の文書が意図的に削除された可能性もある。この文書は、フィンランド語で北を意味する「ポヨイス(Pohjois)」という名のフォルダにあった他の16のファイルと共に、2019年12月2日午前1時16分30秒に削除されている。時間の順で見れば、530件のファイルのいちばん最後に削除されているのだ。検察の捜査に先立って行われた監査院による監査の報告書によると、K書記官は当時、非常に急いで削除作業を行ったとの趣旨の供述をしている。切迫した状況においても最後に敢えてそのフォルダを削除したことからすると、単なる「全削除」ではない可能性もある。

産業通商資源部のシン・ヒドン報道官が先月31日に政府ソウル庁舎で、北朝鮮原発推進疑惑に関する主張についてブリーフィングを行っている/聯合ニュース

 これについては、産業部が今月1日に公開した文書の内容から、別の可能性が推測できる。

 文書で検討された北朝鮮原発推進案は次の3つだ。朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の敷地である咸鏡南道琴湖(クムホ)に建設▽非武装地帯に建設▽新ハヌル3、4号機を建設して北朝鮮へ送電。このうち、3つ目の新ハヌル3、4号機建設は、すでに白紙撤回された新ハヌル3、4号機の建設を再開して北朝鮮に送電するというものだが、脱原発に向けて建設を中止させた原発を再び建てるというもののため、文在寅(ムン・ジェイン)政権の政策に反する。

 産業部がこのような案を検討したことが公開されれば、野党よりもまず大統領府の怒りを買う事態となり、いかなる形であれ問題をなりかねない。産業部の原発業務担当者がこのように懸念した可能性はある。実際に同文書には、この案の短所として「北朝鮮用原発を韓国に建設し、使用済み核燃料も韓国で貯蔵することに対して(世論が)反発する可能性がある」と記してある。

 李明博(イ・ミョンバク)政権で外交安保首席を務めた「韓半島未来フォーラム」のチョン・ヨンウ理事長の解釈も、このような可能性に重点を置いている。チョン理事長は1日、フェイスブックと本紙のインタビューで「非核化に対する補償の観点から原発建設を検討したものなら、大げさに騒ぐようなことではない」と述べ、保守陣営の「利敵行為」との主張に反論した。そして「文在寅政権が進めてきた脱原発政策の大義名分と正当性を否定する証拠を隠滅しようとした試みだった可能性の方が大きいと思う」と語った。

 検察の起訴状によると、産業部が内部検討文書を作成したのは2018年5月14日。冷え込んでいた南北関係が北朝鮮の平昌(ピョンチャン)冬季五輪参加を契機として急反転し、前例のない平和ムードに浸っていた時だった。南北首脳会談の開催に合意したことが3月5日に突如発表され、4月27日に行われた会談では、年内の終戦宣言を表明した板門店(パンムンジョム)宣言まで出された。5月11日には、6月12日にシンガポールで朝米首脳会談が開催されることまで発表され、南北平和体制構築に対する内外の期待が一層高まっていた時期だった。

2018年の南北首脳会談を前後する時期に、北朝鮮に原発を建設しようと報じた各メディアの記事の見出し。上から中央日報、新東亜、韓国経済、中央日報=共に民主党のヤン・イ・ウォニョン議員のフェイスブックより//ハンギョレ新聞社
北朝鮮に原発を建設しようという趣旨の、2018年5月10日付『中央日報』に掲載されたコラム。見出しは「北朝鮮の心臓を韓国型原発が躍らせる時、本当の平和がやって来る」//ハンギョレ新聞社

 原発産業界と原発賛成派メディアは、このようなムードに乗じて北朝鮮で原発建設を進めようとの声を強めた。原発関連産業、学界、労働界などは、南北首脳会談開催の発表から半月後に「原発輸出国民行動」を発足させ、「北朝鮮に韓国型原発を建設しよう」と主張した。保守メディアには「北朝鮮の心臓を韓国型原発が躍らせる時、本当の平和がやって来る」と題する、北朝鮮での原発建設を主張するコラムが登場した。

 このような国内外の状況において、当時の産業部の原発産業担当部署が、北朝鮮地域での原発建設推進案を検討したことは、まったく突拍子もないことと見なすことは難しい。ただし文在寅大統領の公約に則った脱原発政策すら修正しなければならない内容まで含まれていたことは、アイデア程度の基礎的検討と言ったところで、政府内でも問題となり得る。この文書は原発担当部署の内部検討で終わり、大統領府はもちろん、産業部長官にも報告されなかったという。ペク・ウンギュ産業部長官(当時)はこの文書について「初耳」と述べている。

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/981503.html韓国語原文入力:2021-02-02 17:48
訳D.K

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