新型コロナにより多くの人が過去1年間に身体の運動量を減らさなければならなかった。プールやフィットネスセンターなど、健康な体を鍛える施設がしばしば閉鎖したのをはじめ、屋外での活動自体が制限されることが多かった。室内に留まる時間が増えるにつれ、健康への心配も同時に増えた。専門家らは、一般に運動量が少ないほど早期死亡の可能性が高まるという。
このような人々が歓迎しそうなノルウェー・スポーツ科学大学の研究結果が「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディシン」(British Journal of Sports Medicine)2020年12月号に発表された。1日に11分程度だけ運動してもよい効果が得られるという内容だ。
これは、私たちが一般的だと考える通念に比べると、はるかに短い運動時間だ。実際、2016年に国際医学雑誌「ランセット」に発表された16編の研究論文のメタ分析結果によれば、1日に60~75分の運動をすれば死亡の危険性を下げられることが明らかになった。しかし、この研究が引用したデータは個人が自ら評価した資料を基にしたものであるため、客観性に劣った。研究チームは「自己報告は座っている時間を過小評価する可能性が高く、運動の強弱と総量を正確に把握するのには限界がある」と指摘した。
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運動および座っている時間により、早期死亡の危険性に最大260%の差
ノルウェーの研究チームは、そのような弱点を補うために、活動モニターを着用した人々の運動時間と座っている時間を追跡した4カ国9件のコホート研究を分析した。4万4370人のデータが分析に利用され、彼らの運動を追跡した期間は4~14.5年だった。追跡期間中に7.8%に当たる3451人が死亡した。実験参加者が座っている時間は、1日平均8.5~10.5時間だった。彼らは1日平均8~35分の中程度の運動を行った。
研究チームは、彼らを運動時間および座っている時間により三つのグループに分けて分析した結果、最も長い時間座っている人々の死亡する危険性が最も高いことが明らかになった。座っている時間が最も長いグループと運動時間が最も短いグループは、最上位のグループに比べ早期死亡の可能性が260%高かった。
しかし、運動中程度のグループ、すなわち1日平均11分の中程度の運動を行った人も、やはり下位グループに比べ早期死亡の危険性が明らかに低かった。これらの人々のうち、最も長時間座っているグループに属した人々も同じだった。運動時間に比べ座っている時間自体は、大きな影響を及ぼすことはなかった。中程度の運動の代表例は、早く歩くことだ。
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1日35分の運動が最もよいが、11分でも効果は明らか
研究チームはデータをさらに精密に調べてみた結果、1日の運動量が約35分に達する場合、運動と寿命の最適な組み合わせになるとみられると明らかにした。残りの時間にどの程度座って生活するかは、特別な要因にはならなかった。同じジャーナルに同時に掲載された世界保健機関(WHO)の「座式生活者のための運動ガイドライン」も、1日10時間以上座って生活をする人(座式生活者)は、毎日30~40分間、中程度または激しい強度の運動をすることを勧告した。
今回の研究を率いたノルウェー・スポーツ科学大学のウルフ・エケルンド教授は、「もし一日中座っているのであれば、意識的に立ち上がり動かなければならない」とし、「早く歩くことは立派な中程度の運動であるので、1日30分だけでも寿命を延長するのに役に立つだろう」と述べた。
今回の研究は、1日35分運動することも手にあまる人々に1日11分という代案を提示することで、結果的に運動への参入の障壁を下げたわけだ。
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1日11分の運動はこのように
1日11分の運動はどうすればよいのだろうか。最も簡単な方法は、野外で早歩きしたり、フィットネスセンターのランニングマシンを利用することだ。
しかし、フィットネスセンターは閉まっており、外の天気も運動するにはひどく寒いのであれば、これさえも容易ではない。米国のCNNが、ある運動指導専門家の助言で、家でできる11分運動法を紹介した。
要点は、腕立て伏せやスクワットのように、自分の体重を利用した運動を1回に3分ずつ4回行うことだ。できるだけ上半身や下半身ではなく全身を動かす動作を選択したほうがよい。例えば、腕立て伏せ10~25回(上半身運動)、スクワット25~40回(下半身運動)、1分間のその場ジョギング(前進することなく走る動作を続けること)(全身運動)の順に3分ずつ行った後、これを4回繰り返す。その場ジョギングは冬季に心臓拍動数を高めカロリーを消費するとてもよい方法だと、この専門家は述べた。