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[記者手帳]駐米大使の韓米同盟に関する発言、「国益」考え賢明な判断が必要

登録:2020-10-15 09:20 修正:2020-10-15 10:52
「今後70年間も米国を選ばなければならないのか」 
イ・スヒョク駐米大使の発言をめぐる波紋
イ・スヒョク駐米大使が今月12日、国会で開かれた外交統一委員会駐米大使館に対する国政監査で、議員らの質疑に答えている。この日、駐米大使館に対する国政監査は新型コロナウイルス感染症の防疫措置の一環としてテレビ会議方式で行われた/聯合ニュース

 「いっそ『韓国は米国ではなく中国を選択すべき』と表明せよ」(「朝鮮日報」)

 「同盟の信頼を傷つけたイ・スヒョク氏、駐米韓国大使の資格あるのか」(「中央日報」)

 「駐米大使の本分忘れた『選択的同盟論』…水準未達の『コード大使』」(「東亜日報」)

 イ・スヒョク駐米韓国大使の韓米同盟関連発言をめぐり、14日にあふれ出た保守メディアの攻勢を見ながら、この問題が韓国社会の左右を分ける政治的断層線であることを改めて実感した。イ大使は12日、駐米韓国大使館の国政監査で「70年前に米国を選んだからと言って、今後70年間も米国を選ばなければならないわけではない。今後も米国を愛する理由があり、(韓米同盟が)韓国の国益の助けになると判断した時、米国を選ぶべきだ。そうしてこそ韓米同盟も確固たるものになる」と述べた。

 実はこの発言は、国益に対する主権国家の冷静な判断に基づいて作動する国際政治の現実を説明する「一般論」としては何の問題もない発言だ。イ大使が先月3日、米ジョージワシントン大学韓国学研究所のテレビ会議で指摘した通り、「韓国の安保は米国に、経済は中国に依存している」のは間違いなく事実であり、「安保だけでは国は存続できず、経済活動も安保と同じくらい重要」だからだ。 韓国に劣らず米国との同盟関係を重要視する日本の菅義偉首相も、先月12日の自民党の討論会で、中国を排除する「アジア版NATO(北大西洋条約機構)構想」(クアッド)は「戦略的に正しくない」と述べた。

 しかし、パク・ジン議員やチョン・ジンソク議員など野党議員の指摘どおり、韓国が米国と中国の間でどちらかを(同盟として)選べるという発言を駐米韓国大使が繰り返すのが、果たして国益に合致するかは疑問だ。

 朝鮮戦争の際、3万3739人もの米国の若者が戦闘で命を落とた。韓国はその後、米国が主導した戦後の国際秩序の中で、民主化と産業化に同時に成功する奇跡を成し遂げた。自分たちが血を流して守り抜いた韓国の成功は、いつの間にか「米国の誇り」になった。

 同盟の維持には言葉では言い表せないほどの代償が伴う。韓国は米国の関与を保障してもらうために、平沢市大秋里(テチュリ)と棹頭里(トドゥリ)の住民たちを追い出し、現在米国が保有する基地の中で最も大きな海外基地を提供した。残酷極まりない「ユン・グミ事件」(1992年、東豆川の基地村のバー店員が米軍兵士に惨殺された事件)から、最近の高高度防衛ミサイル(THAAD)問題まで、韓国は数えきれないほどの代償を払ってきた。反対に米国は自国の防御公約を立証するために、この基地に米軍とその家族など約4万5千人余りを配置している。もしもの事態が起きた場合、彼らの運命は「拡大抑止」(核の傘)を含む米国の決断を後押しすることになるだろう。

 国益が変わり、愛が冷めれば、同盟は終わりを迎えるほかない。しかし、本当に別れるわけでもないのに「愛はどうせ変わるものだ」と繰り返し言う必要があるのか。賢明な沈黙は、時には金となる。

キル・ユンヒョン記者(お問い合わせjapan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/965777.html韓国語原文入力:2020-10-15 02:31
訳H.J

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