北朝鮮軍の銃撃で死亡した漁業指導員L氏の実兄が「弟が越北したとは思えない」とし、国連に真相調査を要請した。
死亡したL氏の兄、イ・レジンさん(55)は6日、弟が死亡した経緯などを調べてほしいという内容の真相調査要請書を国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)ソウル事務所に提出した。イさんは同日、ソウル市鍾路区(チョンノグ)のOHCHRソウル事務所前で記者会見を開き、「北朝鮮が非武装の民間人の弟を10発余りの銃弾で無惨に殺害した事件を国連に知らせ、公正かつ客観的な調査を要請したい」と述べた。イさんは要望書で「この問題は単なる銃撃事件ではない。北朝鮮の蛮行を広く知らせることで、再発防止に向けた土台になればと思う」とし、「徹底した真相究明が必要だ。助けてほしい」と書いた。
死亡した漁業指導員の息子が文在寅(ムン・ジェイン)大統領宛てに書いた手紙もOHCHRソウル事務所に提出された。息子のL君はA4用紙2枚の手紙に、「父の名誉を回復してほしい」と大統領に懇願した。L君は「父は公務員になるのが遅く、人より出発が遅れただけに遅れを取り戻そうと一生懸命働いた。職業に対する自負心も高く、表彰状をもらったのも見た」とし、「私たち家族は(政府の)発表を信じることができない」と書いた。実際にイ・レジンさんによって同日公開された内容を見ると、亡くなったL氏は海洋水産部西海漁業管理団に入社した後、2018年までに4回の公務員表彰を受けた。2015年には優秀職員に選ばれ、2017年には「確固たる国家観と徹底した使命感」が認められて、中部地方海洋警察庁長から表彰状をもらった。2018年にもキム・ヨンチュン海洋水産部長官から表彰状が授与された。
イ・レジンさんは同日、弁護士とともに国防部を訪れ、事件の真実を究明できる資料などの公開を求めた。イさん側は国防部に北朝鮮軍の対話を傍受した録音ファイルと北朝鮮軍が遺体を毀損する場面を撮影した録画ファイルに対する情報公開請求書を提出した。イさんに同行したキム・ギユン弁護士は、「軍事機密は国民の生命を保護するためのものだが、国民の生命を保護できなかった状況で(傍受した資料などを)機密だとして公開しないならば、存在の意味を失うことになる」と強調した。
波紋の広がりを受け、国防部は殺害された公務員が越北したことは間違いないと繰り返し強調した。ムン・ホンシク国防部報道官職務代行は定例ブリーフィングで「海洋警察が中間捜査結果を発表する際、それ(越北)に関する根拠などを説明した。我々は現在まで海洋警察の中間捜査結果を尊重している」と述べた。