韓国政府が2022年から8年間9千億ウォン(約800億円)を超える研究費を投じて、稼動中の原子力発電所の安全性を高めることを目標に樹立中の研究開発事業計画草案に、他の研究と重複したり活用の可能性が疑われる研究課題も多数含まれていた事実が明らかになり、論議が起きている。予算の浪費を防ぐために予備妥当性調査を経て進められる国家研究開発事業で、最優先で除かれるべき重複研究まで含まれていたことは、選定過程に深刻な問題があることを意味するものであり、波紋が予想される。
18日、ハンギョレの取材を総合すると、科学技術情報通信部と産業通商資源部が共同で構成する「稼動原発の安全性向上に向けた核心技術開発事業」の予備妥当性調査企画委員会は、今年4月の公聴会に合わせて公開した30余りの研究の細部課題について、予定していた5月の予備妥当性調査申請を先送りし、再検討作業を始めている。原子力実務の専門家団体である「原子力安全と未来」が「かなりの課題がすでに進行中の課題と重複していたり、現実性、産業化の可能性、技術的妥当性などに欠けており、稼動中の原発構造物に適用できないなどの問題がある」として、イシュー化する計画を明らかにした直後だ。
企画委は、最近までの再検討の過程で、格納建屋内の極限現象の計測技術▽炉外炉心溶融物の冷却および放射性物質放出低減のための新防御物質開発など、6~7個の課題をまず除外することで意見を集約した。企画委の事情に詳しいある専門家は「現場の適用性が劣っていたり、重複性があるものを中心に除外すると聞いている」として「他の分野は見ずに自分の研究テーマだけを押そうとする人々の声が大きかったため、こうした主題が含まれたのだろう」と話した。
企画委には、学界、研究機関、産業界の原子力専門家をはじめ政府関係者も委員として参加した。国内の原子力分野の専門学士以上の人材3万1269人のうち、原子力工学専攻者は放射線まで含めても2689人で、8.6%に過ぎない。にもかかわらず、原発の安全のための研究テーマを選定する企画委には、原子力工学専攻者が半分以上を“寡占”している状態だ。原発産業界全体できわめて一部に過ぎない原子力工学専攻者などが、関連する政府研究予算の配分を牛耳っている実情を示しているとの指摘もある。
「原子力安全と未来」のイ・ジョンユン代表は「原子力工学を専攻する特定教授を中心にした学閥に根を置く“原子力マフィア”が、原子力界の意思決定を主導していることが問題の根元」として「彼らが『してもよいし、しなくてもよい』研究をして、事実上研究費を身内で分け合っている。原発の安全まで脅かしかねない」と話した。
事業の主務部署である科学技術部や、企画委の幹事機関である韓国研究財団は、外部団体による異議提起のために予備妥当性調査の推進日程を遅らせたという解釈に対して強く否定した。研究財団のカン・ボソン原子力団長は「補完作業は、予備妥当性調査が遅れて時間が生まれたために完成度を高めようとしただけで、内容に問題があってしたわけではない」と話した。