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シャベルで殴り宿舎は無人島に…「人権の死角」に置かれる出稼ぎ漁船員

登録:2020-01-08 09:40 修正:2020-01-08 17:12
船員移住労働者人権ネットワーク、「漁船移住労働者の実態調査結果」発表
インドネシア船員労組のアリ・プルボヨ(Ari Purboyo)韓国代表が今月7日午後、ソウル鍾路区のガールスカウトビルで開かれた「漁船員移住労働者の人権実態モニタリング集談会」で漁船員の出稼ぎ労働者の状況を説明している=パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社

 ベトナムから来た出稼ぎ漁船員のスリト(仮名)は、船の上で韓国人漁船員にシャベルで暴行を受けた。板の上に横になって3時間浅い睡眠を取り、薄暗い明け方から起きて忙しく網を下し、ちょっと休憩を取ろうとしたところだった。「仕事中にお腹が空きすぎて食べ物を食べたのですが、食べさせないようにしてシャベルで背中を殴りました」

 漁業に従事するために韓国に来た移住労働者たちは、暴行や暴言の被害、慢性的な賃金搾取に苦しんでいる。船員移住労働者人権ネットワークは7日、ソウル鍾路区のガールスカウトビルで、韓国籍漁船に乗っている移住労働者81人を対象にした「漁船移住労働者の実態調査結果」を発表した。

2018年基準 韓国漁船で勤務する漁船員の数//ハンギョレ新聞社

 調査結果によると、出稼ぎ漁船員は主に「この野郎」「糞ったれ」などの侮蔑語で呼ばれていた。特に3人に2人が1日16時間に及ぶ殺人的な長時間労働をしており、92%はたった一日も休めていなかった。釜山でイカ釣り船に乗るベトナム出身の出稼ぎ漁船員のAさんは、「たくさん食べても罵倒され、少なく食べても罵倒され、早く食べても罵倒され、ゆっくり食べても罵倒された」と話した。慶尚南道でタチウオ漁船の船に乗っているというインドネシア出身の出稼ぎ漁船員のBさんは、「罵倒は右から左へと聞き流す。悪口を心に留めておいたなら何部屋も埋まっただろう」と吐露した。

 賃金の搾取も相変わらずだった。2012年に韓国漁船「オヤン75号」で働いていた出稼ぎ漁船員たちが、暴行と賃金搾取などに耐え切れず集団脱出した事件が国際的議論になった後、出稼ぎ漁船員たちの劣悪な労働権に対する問題提起が続いた。だが、賃金に関する調査に応じた労働者63人のうち43人は、最低賃金にも及ばない賃金をもらっていた。Aさんは「6~70代の韓国漁船員は仕事もあまりせず全部私たちにさせるのに月給が350万ウォン(約32万円)で、韓国人の調理長はご飯を作るだけで300万ウォン(約27万5千円)を超える月給をもらうのに、私は調理場の仕事をして30万ウォン(約2万7500円)をもらった」と証言した。

 韓国漁船に就職するため、就職あっせん業者に莫大な「送出費用」を支払う違法慣行も依然としてあった。調査の結果、インドネシア出身の出稼ぎ漁船員たちは平均500万ウォン(約46万円)、ベトナム出身者は約1000万ウォン(92万円)の送出費用を支払ったものと調査で明らかになった。土地文書や学位証などを担保にして船に乗った出稼ぎ漁船員もいた。現行の船員法は「求職過程でいかなる名目であれ一切の金品授受を禁止」しているが、摘発されても「現地で作成した契約書に基づくもの」という理由で、まともな処罰は行われていないことが調査で分かった。

 莫大な送出費用を支払い韓国漁船に就職したからといって終わるわけではない。「離脱保証金」を払わなければならず、 「管理費」を取られる。「離脱保証金」はつらい労働と人権侵害に耐えられず船を離れることをあらかじめ懸念し、船で働いている間に離れる場合、受け取れなくなるお金だ。調査の結果、インドネシア出身の出稼ぎ漁船員たちは平均約200万ウォン(約18万4千円)、ベトナム出身は約480万ウォン(約44万円)の離脱保証金を納付していた。給料をもらい始めると「管理費」という名目で奪い取られる。あるインドネシア出身の出稼ぎ漁船員は「毎月4万5000ウォン(約4200円)の管理費を計算して、送出会社に支払う。管理費を払わなければまた韓国に行けなくなるし、土地文書を返してもらえない」と語った。

 宿舎がバージ船や無人島にあり、事実上拘禁状態におかれた労働者たちもいた。アンケート調査に参加した出稼ぎ漁船員の中には、宿所が海の真ん中に浮かんでいるバージ船や、最初から無人島に割り当てられたケースもあった。全羅道地域の出稼ぎ漁船員の宿舎の実態を調査したマリー・ソリナ修道女は、「断熱と保温がなされず社会諸施設から完全に隔離された劣悪な宿舎を提供しながら『お前の国のホテルよりいいだろう』と言ったりもした」と語った。

 公益法センター「アピール」のチョン・シニョン弁護士は、「事実上、合法的な人身売買プロセスだ」とし、「国際的に人身売買は労働搾取を目的に詐欺、欺瞞、脆弱な地位などを利用して人を募集したり運送する行為だ」と指摘した。チョン弁護士は、「韓国人はもはや韓国の船で働こうとしない。ますます多くの出稼ぎ労働者が働くようになるが、今からでも漁船の出稼ぎ労働者の労働権向上のための法制度の改善が急がれる」とし、「募集と雇用あっせんで公共部門の役割を強化し、国籍による賃金および災害補償差別を撤廃しなければならない。事実上の監禁状態を禁止する法改正の導入も必要だ」と述べた。

キム・ワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/923494.html韓国語原文入力:2020-01-08 02:13
訳C.M

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