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[インタビュー]「これからハンギョレは自ら世界のメディア史上の使命を探さねば」

登録:2019-11-12 07:01 修正:2019-11-12 08:28
森類臣・立命館大学客員准教授
森類臣・立命館大学准教授//ハンギョレ新聞社

 「ハンギョレの次の課題は、進歩的メディアの役割を、韓国だけではなく東アジア全体に発展・拡大しなければならない点ではないでしょうか」

 日本でハンギョレに関する最初の本格的研究書である「韓国ジャーナリズムと言論民主化運動: 『ハンギョレ新聞』をめぐる歴史社会学」(日本経済評論社)を最近発行した森類臣(40・写真)立命館大学客員准教授は、今月1日の電話インタビューでこのように語った。

 大学生時代の2003年からハンギョレに関する研究を行ってきた彼は、「最近は以前に比べて、日本国内での韓国の政治や社会に関する紹介に問題が多いようだ。特に内在的な理解が極めて不足していると思う」として「もちろん、政治や社会に関する質の高い学術書や一般書もあるが、その中にジャーナリズム(メディア)に関する専門書籍は、あまりない」と出版理由を明らかにした。彼は「ハンギョレは創刊時から日本社会の注目を受けたが、深い分析はほとんどなかった」として「韓国現代史の理解なしに、ハンギョレを理解することはできない」と話した。

 大学の時から16年目、ハンギョレに縁
博士論文をまとめて、日本国内初の研究書を出版
「韓国ジャーナリズムと言論民主化運動: 『ハンギョレ新聞』をめぐる歴史社会学」

2001年「ピースボート」を通じて南北朝鮮を経験
2008年留学、ハンギョレの翻訳のボランティアも
「主流メディアとして“フェイクニュース”に立ち向かわねば」

 彼が本を書くのには、10年余りほどの歳月を要した。京都の同志社大学博士(メディア学)論文として提出した文章をまとめて、今年8月に本を完成した。もちろん、ハンギョレに対する関心はそれより古かった。彼は、「2001年、日本の市民団体『ピースボート』の企画に参加して、三日間隔で平壌(ピョンヤン)とソウルを訪問し、朝鮮半島の歴史を知るようになった。勉強をしてみると、『たたかう新聞―「ハンギョレ」の12年』(岩波書店)を通じて韓国の代案メディア(オルタナティブ・メディア)に対する関心も持つようになった。韓国の現代史とメディア民主化運動を知らなければならなかった」と語った。研究を重ねるにつれ、メディア民主化運動の結実の一つとして誕生したハンギョレに向かうようになったということである。

 彼は研究のため、大学院博士課程中に韓国へ1年間留学もした。2008年11月から彼は在韓日本人の染井順三氏などとともに、毎日10本程度のハンギョレの記事を翻訳して日本に紹介するボランティア活動を行った。彼らが立ち上げたブログは、その後、ハンギョレ日本語版の基盤になった。2012年には創刊20周年を迎えて出版された“ハンギョレ20年史”『希望への道』(2008年)の日本語版『不屈のハンギョレ新聞: 韓国市民が支えた言論民主化20年』を翻訳して出版もした。韓国の特定のマスコミの社史が日本に翻訳されて紹介されたのは、この時が初めてだった。彼は、「日本の主流メディアは、韓国保守メディアの記事を多く引用している。これとは異なる見解を日本に伝えたかった」と回想した。

 彼は韓国メディアの環境が急激に変わる中で、ハンギョレにも変化が必要であると注文した。本の補論で「代案メディアから主流メディアになったので、理念と活動も一次元上昇しなければならない」と指摘した。彼は、「創刊以来の理念である『民族言論』の原則を守るのは重要である。しかし、東アジアにより強く視線を注ぐ必要がある」として「東アジアの民衆が、和解から信頼醸成、そして連帯に続き、緩い共同体を志向するのが重要だ。そのための明確な概念と実践の要綱を具体化するというのはどうだろうか」と助言した。

 彼は“フェイクニュース”との戦いもハンギョレの重要な役割だと言う。「“ポストトゥルース”(客観的事実より感情と個人的信念が世論により大きな影響を及ぼす状況)は、ジャーナリズムの存在を否定する大きな危険性がある。ジャーナリズムを守るための戦いには保守も進歩もないが、残念ながら韓国では、ジャーナリズムの危機さえイデオロギー対立に集約される傾向が強い」と書いた。

 彼は「ハンギョレがフェイクニュースに立ち向かう必要がある。フェイクニュース問題に対する対応は、主流メディアが果たさなければならない役割であり、 ハンギョレがそのそのような役割を果たす最も適切なマスコミになれると思う」と語った。また、「ハンギョレの中にはジャーナリズム研究所がない」として「新聞社自らジャーナリズムに関して研究する必要がある。韓国現代史を背景にする言論民主化運動精神を、今後もずっと持たなければならないが、一方で、これからは、世界のマスコミにハンギョレの使命や役割を位置づけて、ジャーナリズム機関として一段階次元を上げる必要もあるようだ」とも語った。

東京/チョ・ギウォン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/media/916634.html韓国語原文入力:2019-11-12 02:05
訳M.S

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