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ILO、韓国政府に「核心協約の批准後に立法」を提案

登録:2019-05-10 07:14 修正:2019-05-10 07:43
コリンヌ・バルガILO国際労働基準局長 
ソウル地方弁護士会シンポジウムで演説 
「法制が完璧に整うまで批准を先送りすると 
労働権保護の進展がさらに遅れる」
コリンヌ・バルガILO国際労働基準局長が今月9日に開かれた「労働基本権の実質的保障に向けたILO核心協約の批准案シンポジウム」で、映像で特別演説をしている=チョ・ヘジョン記者//ハンギョレ新聞社

 国際労働機関(ILO)が「法制が完璧に整い、すべての利害当事者が満足するまで核心協約の批准を先送りすれば、労働権保護の進展がさらに遅くなる」とし、韓国政府に「先に批准、後で立法」を正式に提案した。ILOはこれまで、先に批准するのは考えられる方法の一つだが、批准と法改正の順序は各国が決める事案という立場を示してきた。しかし、韓国での議論に進展が見られなかったことを受け、先に批准することを事実上促したものと見られる。

 核心協約など国際労働基準を総括するコリンヌ・バルガILO国際労働基準局長は9日、ソウル地方弁護士会と労働法研究所「ヘミル」が共同主催した「労働基本権の実質的保障に向けたILO核心協約の批准案に関するシンポジウム」の特別演説を通じて、このような意向を明らかにした。出席する代わりに送った動画演説で、彼女は「批准は、(他国と)同一の基準で(国際労働基準は順守されているかを)判断されるのを受け入れることで、国際社会に参加するという意志を表明し、約束すること」だとし、「核心は約束であり、これは雇用や仕事、労働関係の持続的な変化によって調整することができる」と述べた。さらに「各国は履行の約束を明確にしながらも、複雑でさらなる検討が必要な事案を最終的に修正できるよう、十分な時間を保障される。国際労働基準は最初から協約の批准と発効の間に1年間の猶予期間を認めている」と強調した。

 韓国はILO核心協約8件のうち、「結社の自由」(第87号・98号)と「強制労働の撤廃」(第29号・105号)の4件を20年間批准していない。ところが、欧州連合(EU)が昨年末、韓国政府が自由貿易協定(FTA)を結ぶ時にも約束した核心協約の批准を履行していないとして、紛争解決手続きを開始し、韓国での関連論議も本格化した。政府は「先に立法、後で批准」の方針を貫いているが、関連法の労働組合法などの改正をめぐり、労働界と経営界の意見が明確に分かれる上、国会も空転し、一歩も進んでいない状況だ。

 まずは韓国政府も国際的な労働基準を守ると“約束”し、その意志を示すのが重要であり、関連立法の問題は批准後1年という猶予期間中に解決できるというコリンヌ局長の発言は、このような国内状況を考慮した結果と言える。今回のシンポジウムを準備したソウル地方弁護士会のイ・ヨンウ人権理事は「ILOは政労使3者が参加する機関だが、今度はどのような意見を出すべきか、内部的にも非常に慎重に議論したと聞いた。総会や理事会の決定ではないが、深度ある議論を経て公開的にこうした提案をしたのは相当な重みがある」と述べた。

 コリンヌ局長はまた、韓国政府が核心協約を批准すれば、紛争・対立的な状況から抜け出すことができると説明した。「国内レベルにおいて、批准は労使双方の信頼を強化し、対立的な環境を対話に変えるのに必須で重要なシグナル」だということだ。さらに「韓国は紛争と対立が中心の提訴基盤手続きの枠組みの中で、『結社の自由委員会』を通じて点検を受けてきた。しかし、各条約の批准国は技術的な問題が多少残っているとしても、ILO監視監督機関の定期点検手続きを通じて、自らの問題を説明し、協約履行に関する代案を提案してもらえる」と述べた。

 これはILOの監視・監督機能である点検手続きと関連がある。ILOの点検の手続きには、大きく分けて定期点検と特別点検の二つがある。定期点検は、条約を批准したすべての加盟国が定期的に(核心協約は3年、一般条約は5年)専門家委員会に報告書を提出し、改善案を提案される一般的な手続きだ。一方、特別点検は、該当国による特定の協約の違反に対し、労使団体や他国の政府などが陳情または提訴した場合、それを調べるもので、一種の紛争解決の手続きに当たる。韓国はこれまで民主労総などの陳情で、「結社の自由委員会」から数回にわたって特別点検と特別勧告を受けてきた。リュ・ミギョン民主労総国際局長は「特別点検は国際労働基準に違反した国という“レッテル”を張られるようなものだが、核心協約を批准すればこうした恥ずかしい状況から脱することができるという意味」だと説明した。

 コリンヌ局長は、核心協約の批准が時期尚早という国内経営界などに向けてもメッセージを送った。彼女は「この20年間の研究によると、労働基本権の尊重は経済成長と機会の確保に役立つ」とし、「先進国は古くから、競争力が低い労働基準ではなく、革新や生産性、効率性の増大に基づいており、これは究極的に調和のとれた労使関係の環境によって裏付けられるという点を認識してきた。企業の観点からすると、批准は(競争の)規則を明確にし、この規則が世界全域で公正に適用されるという信頼を保障する」と述べた。

チョ・ヘジョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/893240.html韓国語原文入力:2019-05-09 19:48
訳H.J

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