蔚山(ウルサン)から南東へ58キロメートル離れた東海の真ん中に、小型石油化学プラントがある。韓国に世界95番目の産油国の地位をもたらした東海ガス田の海上プラットフォームだ。金海(キムへ)空港からヘリコプターで40分で到着できる。
ここでは、韓国石油公社の職員23人が滞在し、水深152メートル下の地表面から、超硬質原油(コンデンセート)が混ざった天然ガスを吸い上げ、水分を取り除いた後、61キロメートルの海底配管で陸上に送る作業を行う。1日に生産する天然ガスは34万世帯が利用できる量だ。今月24日にここで会った韓国石油公社広報チームのイ・ウンギュ部長は「過去16年間、東海ガス田のボーリングと生産施設の設置・運営にかかる費用は計1兆ウォン(約980億円)、合計2兆ウォン(約19600億円)に達する。東海ガス田の開発過程で蓄積したノウハウが、その後の海外油田の開発につながった」と説明した。
この海上フプラットフォームは、海底に固定された200メートルの高さの鉄材構造物で支えられている。ガス生産施設と発電施設はもちろん、職員の住居・休憩施設や補給船の生活必需品・装備などを運搬するクレーンに、ヘリ場まで備えている。このガス田プラットフォームが海上風力発電団地への変身を準備している。2004年と2016年に稼働を始めた「東海1」と「東海2」の海底生産施設が、埋蔵量の枯渇で、今年中に生産を停止するためだ。イ部長は「多少流動的だが、2021年6月に海上プラットフォームの退役が予定されている」と話した。
蔚山市(ウルサンシ)と韓国石油公社は昨年10月から「200メガワット浮遊式海上風力発電団地造成に向けた業務協約」を結び、東海ガス田海上プラットフォームを海上変電所に、海底配管を電力ケーブル保護官などに再活用する案を検討している。海上風力発電事業は、ソン・チョルホ蔚山市長が昨年6月の地方選挙から「地域の造船・海洋産業の活路の開拓と雇用創出」のために推進してきた公約事業だ。蔚山市はこれとは別に、民間が主導する海上風力発電団地を1ギガワット規模まで順次拡大することにし、今月24日に国内外の4つの民間投資会社とも初の業務協約を結んだ。
蔚山市と石油公社が海上風力発電事業での提携を進めているのは、ガス田施設の再利用に対する利害が一致しているためだ。蔚山市は海上風力発電機の設置に、石油公社は退役施設の撤去にかかる費用を大幅に減らすことができる。
ガス田周辺の海域は近隣の漁民に「風の谷」と呼ばれるほど、海上の風力発電団地の立地条件を備えている。ガス田管理事務所生産運営チームのキム・ソンヘ部長は「風速が普通秒速6メートル以上なら風力発電の良い立地条件だと言われているが、昨年10月以降の測定資料を見ると、月平均秒速7メートルほど出る」と話した。
問題は、海上プラットフォームの設計寿命の期限(20年)が数年しか残っていないことだ。これについて、キム部長は「安全性の検討が必要だろうが、プラットフォーム構造物の基礎が海底岩盤地帯まで下がって安定しており、構造物の腐食防止剤の状態がまだ良好なことから、設計寿命が延長される余地は十分ある」と話した。
東海ガス田周辺の海域で漁労作業をする漁民の反発も影響を与える。漁民は最近、蔚山市が開いた懇談会で、「東海ガス田周辺に海上風力発電団地が発生すれば数万人にのぼる東南地域の漁民が操業できず、生存権を失う」と声を荒げた。シム・ミンリョン市エネルギー産業課長は「関連漁業関係者の意見も聞き、説得しながら共生策を見出す予定だ」と述べた。