文在寅(ムン・ジェイン)政府が「私をいだく革新的包容国家」を社会政策分野の国家ビジョンとして提示し、具体的な実行案に該当する「国民の全生涯基本生活保障3カ年計画」をまとめることにした。所得保障制度改革と社会サービス雇用の拡充なども推進される予定だ。
6日、大統領直属の政策企画委員会と社会政策関連省庁は、大統領府迎賓館で「包容国家戦略会議」を開き、このような内容を発表した。これまで経済成長に必要な「最小限の水準」という枠組みにとらわれていた社会政策のパラダイムを変えて、国民の暮らしの質を高める方向で福祉国家を完成していくという意志を政府が表明したものだ。同日示された「包容国家」とは、「量的成長ではなく質的成長、排除と独占ではなく共存と共生を模索し、未来に向けて革新する社会」を意味する。歴代政府を通じて、社会政策分野で戦略会議が開かれたのは同日が初めてだ。
■包容国家3大ビジョンを提示
文在寅大統領は会議で「包容はわが政府の重要な核心価値となる」とし、「持続可能な社会のために国民の暮らしを全生涯にわたって国家が責任を負うのが包容国家のスタート」だと述べた。文大統領は「各省庁は実質的かつ具体的な財源対策まで含めて包容国家のための具体的な中長期的ロードマップを早急に作成してほしい」と呼びかけた。政府は今後、包容国家戦略会議を定例化する一方、社会政策分野で重点課題に必要な財源を確保するために国家財政戦略会議とも連携する方針だ。
「革新的な包容国家」の3大ビジョンと9大戦略も提示された。まず、「社会統合の強化」レベルで所得・労働市場・ジェンダー・教育・住居不平等の解消に向けた案が推進される。具体的な戦略としては、所得保障制度の改革案、地域バランス発展方策などが紹介された。また「社会的持続可能性」を確保するために少子高齢社会に備えた医療費の合理化などのシステムを構築し、社会サービス雇用も拡充する計画だ。最後に「社会革新能力」を育て具現化する具体的な戦略としては、創意性・多様性を強調した教育革新を通じたマンパワーの向上、人中心の職場革新、経済-雇用の好循環のための雇用セーフティネット構築などを提示した。
■社会政策は経済成長の足かせ?
同日、政府が戦略会議を開くことになった背景には、「立ち遅れた社会政策」に対する危機意識がある。韓国の様々な社会指標は、経済発展水準に比べて大きく遅れている。1人当たりの国内総生産(GDP)の順位は世界10位圏だが、社会支出費(教育費を除く)が国内総生産に占める割合は10%水準だ。欧州連合は1960年代、日本は1980年にすでに10%を超えた。現在、欧州連合と経済協力開発機構(OECD)34カ国の平均社会支出費の割合は21~24%に上る。韓国政府が経済発展のために国家の公的支出を最大限抑制したためだ。
社会政策が後回しにされたため、国民は民間保険や私教育、不動産などで各自が生き残る道を探した。公的年金(28兆ウォン=2兆8千億円)よりも私的年金(36兆ウォン=3兆6千億円)がはるかに大きい構造が形成されたのが代表的だ。ジェンダー・レジャー・健康状態・環境など、国民が体感する「暮らしの質」指標も、経済協力開発機構では最下位圏だ。政策企画委員会はこの日戦略会議に提出した報告書で「韓国は産業化と民主化には成功したが、社会政策が立ち遅れたことが最大の弱点」だと話した。チョン・ヘグ政策企画委員長は「社会政策が経済政策とともに社会の二つの中心軸として機能しなければならない」と話した。
社会政策の役割を強調するために、政策企画委員会は「包容」とともに「革新」を強調した。政策企画委員会のキム・ヨンミョン国政課題支援団長は「これまで社会政策分野で包容にばかり焦点を合わせてきたとすれば、これからは社会政策が社会の革新能力の向上につながるという点を強調しなければならない」と明らかにした。
社会政策ビジョンの提示という第一歩を踏み出したものの、まだは抽象的な青写真を提示したのに過ぎず、今後は実効性のある政策代案と財源確保の方法をどのように提示するかというのが課題として残る。ある国策研究機関長は「金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の時もできなかった社会政策戦略を初めてまとめるという点に意義がある」とし、「文在寅政府の時代精神を宣言したということ」と話した。一方、何人かの福祉学者たちは、社会政策の役割を強調するために「革新」という概念を無理に引き入れたのではないかと指摘した。