「宅配荷物はドアの前に置いていってください」「受取人が直接サインしなければなりません」
6月、慶尚北道金泉(キムチョン)に住むK氏(29)は、宅配ドライバーの言葉で家の外に出て、現場で逮捕された。容疑は麻薬密輸。余命宣告を受けた脳腫瘍患者の息子(4)の治療のため、海外から大麻オイルを購入したが、宅配ドライバーに偽装した検察捜査官に逮捕されたのだ。K氏に対し検察は、麻薬密輸の疑いで懲役1年6カ月、執行猶予3年を求刑した。しかし、11月に裁判所はK氏の容疑を大麻の売買に修正し、子どもが病気だという点を酌量して6カ月の宣告猶予処分を下した。検察官は「息子の容態が悪化すれば(K氏が)また大麻を求める可能性がある」として控訴した。
治療目的で大麻製品を購入した患者やその家族が、麻薬密輸などの疑いで起訴され裁判を受けるケースが相次いでいる。現行の麻薬類管理法は大麻の売買を厳しく禁止しているからだ。仁川(インチョン)本部税関は9月、今年上半期に大麻オイルを搬入した疑いで38件を摘発したと明らかにした。
だが、治療目的の大麻購入、病院での医療目的の使用などは規制を緩和すべきだという声も出ている。医療用大麻合法化運動本部(以下、運動本部)代表のカン・ソンソク牧師は「大麻製品の購入で検察の捜査を受けたという情報が入ってきているが、病気で苦しむ患者や家族の事例がかなり多い」と話した。脳病変障害を持った9歳の息子をもつJ氏(38)は「今飲んでいる抗けいれん剤は子どもを無気力にするばかりで効果がないので、副作用が少なく中毒性の少ない大麻の治療用処方を合法化してほしい」と話した。
K氏が購入した大麻オイルの主成分は幻覚効果のないカンナビジオール(CBD)であり、米国・カナダ・ドイツなどではすでに臨床実験を通じて、てんかん、自閉症、認知症などの脳疾患や神経疾患に対する効能が立証された物質だ。その反面、麻薬類管理に関する法律では、成分と関係なく大麻の種・根・茎を除く残りの部分から抽出した大麻製品をすべて麻薬類に区分している。また、アヘンやモルヒネ、コカインなどの中毒性が強い麻薬類は医療目的で使用できるようにしているのと異なり、大麻は医療用として使用できないようにしている。
検察は、現行法が変わらない限り取り締まりはやむを得ないという立場だ。麻薬捜査を担当するある検察関係者は「大麻製剤についてはまだ社会的に賛否が分かれるので、さらに見守らなければならない問題」と話した。大麻関連主務省庁である食品医薬品安全処は「大麻を医療用に許可してほしいという要求は認知している」としながらも、「今は専門家を含めた現場の意見を集めている」と明らかにした。
米国、カナダなどでは、医療目的で大麻を病院で処方している。運動本部は第20代国会で医療目的の大麻使用を合法化する内容の麻薬類管理法改正案の発議を請願する予定だ。