パリバケットの加盟店製パン職人の「不法派遣」疑惑に対して勤労監督を行った雇用労働部が、パリバケットが協力業者を通じて製パン職人の供給を受けて使用した行為を「不法派遣」と判断し、製パン職人など5378人を直接雇用するよう是正命令を発した。フランチャイズ業界で不法派遣に関する法的判断が出たのは今回が初めてだ。雇用部の今回の措置で、フランチャイズ加盟店で働く労働者を加盟本部でも加盟店主でもない第三者が雇用する「変則雇用」が正される機会になるかが注目される。
雇用部は今年6月、ハンギョレの報道で初めて知らされたパリバケット不法派遣疑惑に関連して、パリバケット本社・11の協力業者・加盟店など56カ所を対象に実施した勤労監督結果を21日発表した。雇用部は、パリバケットが加盟店で勤務する製パン職人を無許可不法派遣で使った疑い(派遣勤労者の保護等に関する法律違反)を確認し、製パン職人など5378人を直接雇用するよう是正命令する方針だと明らかにした。また、勤怠関連の電算記録を任意に操作して、未支給になっていた延長勤労手当110億1700万ウォン(約11億円)を協力業者が支払うよう是正命令する計画だ。パリバケットの協力業者は、勤労監督が始まると未支給だった延長勤労手当48億ウォン余りをすでに支給しており、未払額の総額は158億ウォンに達していたことが確認された。パリバケット加盟店で働く製パン職人は、パリバケット本社(加盟本部)や加盟店主が雇用せずに、加盟店主とは請負契約を、本社とは“業務協定”を結んだ第3の協力業者が雇用した労働者であるうえに、本社とは何の契約関係もないにもかかわらず、売場の運営全般はもちろん、勤怠などについても本社が製パン職人に直接業務を指示してきたという点で論議が起きていた。勤労監督着手以後、雇用部が派遣法をどのように適用できるかに関心が集まっていた。既存の派遣法適用は、派遣事業主・使用事業主・派遣勤労者の“3者関係”だったのに対して、パリバケットの場合は加盟店主まで含めた“4者関係”であったためだ。
加盟店で働く製パン職人の実使用事業主は“パリバケット本社”
雇用部は、公正取引委員会、法学者への諮問を経て、製パン職人の勤労契約を、加盟店主と製パン業務関連請負契約を結んだ協力業者を“派遣事業主”、協力業者と“業務協定”を結んだパリバケット本社を“使用事業主”と判断した。これに伴いパリバケット本社と協力業者が派遣法の禁止する無許可派遣、派遣対象業務違反を犯したと見た。請負契約が不法派遣と認定されるためには、下請業者の職員が下請業者の管理者の指示ではなく、元請け業者の実質的な指揮・監督を受けた点が認められなければならない。雇用部は、本社を“使用事業主”と見た根拠として、本社が品質管理士を通じて出勤時間の管理をはじめとする業務に対する全般的指示・監督をしたという点に注目した。パリバッケットはハンギョレの報道で不法派遣疑惑が起こると、本社職員が管理していた製パン職人の団体カカオトークルームをなくした。また、勤労監督開始に前後して、協力業者に所属する“販売技士”を直接雇用したりもした。派遣法違反の素地から抜け出すための措置と見られる。
特に、本社は協力業者11社の賃金体系や昇進・考課評価・採用方式を一律的に決めて管理してきたが、こうした加盟本部の協力業者に対する介入に対し、雇用部は公取委に意見を求め、「加盟事業取引の公正化に関する法律」(加盟事業法)が規定する「教育訓練」の範囲を越えたと判断した。該当協力企業等は本社の退職役職員らが設立したもので、加盟店と請負契約を結んだ後に、製パン職人1人当り月330万~350万ウォン(33~35万円)の請負費を受け取り製パン職人を供給する業務を担当しただけで、請負った業務に対する具体的業務指示は全くしていなかったことが明らかになった。特に本社は、協力業者が退職金・年次手当など多くの費用負担が発生する場合、協力業者に金銭を支援したことがあることも確認された。加盟店主の「使用者性」について雇用部は、「延長勤労要請など業務上で一部関与した事実はあるが、きわめて微小であり、実質的な使用事業主はパリバケット本社」と明らかにした。
フランチャイズの「変則雇用」にブレーキ
雇用部関係者は、加盟店主が協力業者に支払う製パン職人1人当りの請負費が330万~350万ウォンである反面、製パン職人が受け取る賃金は平均月240万ウォン(約24万円)だった点を挙げて「製パン職人に支給されなければならない賃金の一部が、協力業者に流れていた」とし「本社が製パン職人を直接雇用すれば、協力業者の利潤が減るので、加盟店主も支払いを減らすことが出来るだろう」と明らかにした。
雇用部のこうした措置に対して、「民主社会のための弁護士会」労働委員会はこの日論評を出し「雇用部の今回の措置は、ますます悪用されている変則的間接雇用にブレーキをかける重要な監督行政」だとし「外見を変えた多面的な勤労関係が広がっているなかで、派遣法の趣旨に合わせて法を解釈し、積極的に法を執行したという点で重大な進展」と評価した。
しかし、雇用部の今回の勤労監督結果が、同様な雇用構造を帯びているすべてのフランチャイズ業者に一律的に適用されることはないとみられる。雇用部関係者は「加盟本部が加盟店の協力業者に所属する労働者に直接積極的な指揮・監督をしたかどうかにより判断は変わりうる」と明らかにした。しかし、多くのフランチャイズ企業が協力業者を通じて加盟店に労働者を供給する方式を利用しており、雇用部のこうした判断が業界に及ぼす影響も侮れないと見られる。雇用部関係者は「直接雇用が正しいのに、費用削減などのために媒介機関を通じて雇用する慣行を正さなければならないと考える」として「他のフランチャイズ業者に対する事前実態調査等を通して、勤労監督拡大について判断する」と話した。
パリバケット、是正命令を履行しないもよう…
履行しなければ過怠金最大160億円
しかし、パリバケットはこの日、短い立場文を通じて雇用部の是正命令を履行する意向がないことを迂回的に表明した。パリバケットは「当社は法と規定に則り3千余りの加盟店および関連従事者との共生のために努力している」として「今回の結果はフランチャイズ産業の特性を考慮していないと見られ、強く当惑している」と明らかにした。パリバケット関係者は「フランチャイズの特性上、加盟店と常時的に疎通せざるをえないが、これを指揮・監督と見られたことに当惑するという趣旨」と明らかにした。
しかし、今年6月にハンギョレが不法派遣疑惑を報道した当時、パリバケットはハンギョレに「一部の加盟店業務関連職員が加盟店の製パン職人に直接疎通することのないように措置を強化し徹底的に管理する」と明らかにしたことがあり、当時と現在の論理が合致しない。雇用部はパリバケットが是正命令を履行しない場合、過怠金を賦課して刑事立件する方針だが、派遣法上の是正指示不履行にともなう過怠金は労働者1人当り最大3千万ウォンとなっているため、パリバケットは最大で1613億ウォン(約160億円)の過怠金を払うことになる。
パリバケットは製パン職人が作った労組(民主労総全国化学繊維産業労働組合パリバケット支会)との対話も拒否している。民主労総はこの日、論評で「労働組合は不法派遣などの問題と関連してパリバケットに対し互いに共生できる方案を探すために数回対話を提案したが、会社はこれを拒否してきた」として「公文書の要請による対話提案も拒否し、さらには雇用労働部の仲裁提案さえも会社は拒否した」と明らかにした。さらに「パリバケットは今からでも雇用労働部の勤労監督結果を謙虚に受け入れ、不法行為に対して謝罪しなければならない」とし「そして本社の直接雇用と共に未支給の手当支払いを早く履行し、労組との交渉に誠実に応じなければならない」と明らかにした。