与党・政府、税額控除の拡大など遡及適用
公平課税という当初の趣旨を自ら覆す
怒った民心をなだめようと拙速補完策
手続き上の混乱まで招来する憂慮
年末調整を巡り不満が高まる世論に、セヌリ党と政府が一部項目の税額控除を拡大し、これを今回の年末調整に遡及適用する方案を推進すると21日明らかにした。 改定した年末調整が中産層以上に対する事実上の増税であることを隠して、民心の怒りを自招した政府・与党が、遅れて収拾に乗り出したことになる。しかし、それも無原則で無責任な拙速対症療法に過ぎないばかりか、手続き上の混乱まで招いていると指摘されている。
セヌリ党と企画財政部はこの日午後、国会で党政協議を開き年末調整関連対策を議論して△子供の税額控除(現行1人当り15万ウォン、3人以上は20万ウォン、1ウォンは約0.11円)の上方修正△出生・養子縁組による税額控除新設△独身者標準税額控除(12万ウォン)の上方修正△年金保険料税額控除(12%)拡大△追加納付税額の分納許容、などを推進することにした。 各項目で拡大する税額控除金額は、年末調整が終わった後に3月末までにその結果を分析して決め、4月の臨時国会で関連所得税法を改正し来年度の年末調整に適用することにした。 党政協議はまた、今回の年末調整にもこのような補完策を遡及適用する立法措置を野党と協議し推進することにした。 遡及立法が通過すれば、今回の対策の各項目に該当する勤労所得者は、年末調整以後5月頃に追加で遡及分の払い戻しを受けることになると見られる。
従来の多子追加控除と6歳以下の子供の養育費所得控除、出生・養子縁組控除とが子供による税額控除に転換・統合されたことに伴い、子供を持つ勤労所得者に払い戻される金額が減った。党政協議のこのような対策は、これに対して爆発した不満をなだめようとするものだ。 また、特別控除の恩恵をほとんど受けられない独身者などを考慮した側面もある。多く稼ぐほど多くの恩恵を受ける既存の所得控除方式から所得再分配効果が大きい税額控除に切り替えた大きな枠組みは維持しつつも、今回の年末調整で最も非難されているいくつかの項目に対して後追いで”ニンジン策”を用意したわけだ。 このように急遽対策が出てきたのは、大統領府発の各種悪材に苦しめられ支持率が下落傾向にあるセヌリ党が、年末調整問題まで重なるや、これ以上は持ちこたえられない深刻な危機と判断した結果と解説される。
問題はこのような対策が税収不足状況に目を瞑り、世論に押されて出た無原則なものだという点にある。 今回の年末調整は歳入の拡大と課税公平性の向上のための所得税法改正の結果だが、このように税額控除規模を拡大すれば当初より歳入は減るが、それに対する明確な対策はない状態だ。 また子供を持つ勤労所得者の場合、保育手当などと税額減免という二重の恩恵を受けるという点を考慮して、1年前に縮小を決めた多子控除をわずか一日二日で政府・与党が自ら覆したことも、正常な政府の政策プロセスとは見難い。 さらに遡及適用問題は悪い先例を作るという批判も強い。 法曹人出身のチュ・ホヨン政策委議長も“悪い前例”という記者たちの指摘に対して「そうした点に私も共感する。手続き的に見れば極めて望ましくない手続き」と答えた。
パク・フン ソウル市立大学教授(税務学)は「税金改編の方向は正しかったが、“増税”など政府が率直に前もって理解を求めなかった側面で間違った。 それでも正確に問い詰めもせずに世論に押されて遡及適用することになったことは問題」として「税制改編はどんな方法で行っても不利益を被る人は出るが、(今回の政府の翻意で今後税制改編の度にこのような状況が)繰り返される可能性が高まった」と話した。
一方、ユン・ホジュン、ホン・ジョンハク、キム・ヒョンミなど、国会企画財政委員会所属の新政治民主連合議員は、この日記者会見を行い「年末調整と関連した遡及立法推進は、国民の怒りを和らげるための弥縫策に過ぎない」として、「与党・野党・政府とサラリーマンの代表が参加する議論機構を作り、今回の対策を含めた全般的なサラリーマン税金負担軽減対策を議論しなければならない」と主張した。