公営放送史上、最悪の内部混乱の主役であり政治的偏向性と道徳性論難に苦しめられたキム・ジェチョル(60)文化放送(MBC)社長が結局解任された。 韓国放送(KBS)と共に2大公営放送の一軸である文化放送は、キム社長の退出以後 組織正常化と公正放送の回復という重い宿題をかかえることになった。
キム社長はこの間、通常の公共機関首長であれば何度も退かなければならない疑惑と非難を浴びながらも耐え続けた。 法人カード流用疑惑、親密な舞踊家への契約集中、放送史上最長の170日間労組ストライキ、200人を超える解雇・懲戒、密室での民営化試図などで以前にも3度も解任案が上程されたが、いつも峠を乗り越えてきた。
去る3年間、文化放送を墜落させた張本人として名指しされ、終始辞退圧力を受けてきたキム社長の解任案は26日文化放送の最大株主である放送文化振興会(放文振)で賛成・反対討論と表決を経て40分後に処理された。 放文振理事9人中、野党推薦理事3人と与党推薦理事(6人)中の2人が解任に賛成した。 本来の任期が2014年2月まであるキム社長は1988年放文振が設立されて以来、解任された初めての社長になった。 彼の解任は放文振が29日の理事会で日程を定める株主総会で確定する。 チェ・チャンヨン放文振事務局長は「最大限はやく株主総会を開き、解任案を処理して、新社長公募手続きに入る」と明らかにした。
放文振のキム社長解任は22日に役員人事を放文振と協議せずに決めるなど理事会を無視したということが名目だ。 だが、昨年提起された各種疑惑、大量懲戒、聴聞会などに欠席したキム社長に対する国会と監査院の告発など見過ごし難い問題が重なり合って積もったことが背景として作用した。 さらにキム社長の高麗(コリョ)大先輩で、彼を社長に座らせた李明博前大統領が退き、やはり大学同窓であるキム・ジェウ前放文振理事長が最近論文盗作のために辞任したことも彼をより一層孤立させた。 防壁の盾が消えたのだ。
文化放送内外ではキム社長の解任は正常化の完成ではなく開始に過ぎないという話が出ている。 先ず、与党理事が多数である放文振がどんな人物を後任に選ぶかが主要関心事だ。 文化放送の新社長人選は朴槿恵(パク・クネ)大統領が‘放送掌握’の試みを露骨化するかを見る試金石になりうる。 キム社長のように政権との縁に頼り‘落下傘’社長が再び降りてくるならば労使葛藤が再燃しかねない。 文化放送は信頼度が墜落した番組の再整備と解雇・懲戒者問題解決、社内葛藤縫合など多くの課題も解決しなければならない。
文化放送労組はこの日出した声明で「‘キム・ジェチョル体制’が抱かせた最も大きな教訓は、公営放送がもうこれ以上政界に振り回されてはならないということだ。 次期社長の選任からは政界からの独立を成し遂げるかに注目する」と明らかにした。 チェ・ジンボン聖公会(ソンゴンフェ)大教授(新聞放送学)はキム社長の解任について 「遅かったが文化放送正常化の出口を開いた」としつつも「何より文化放送を正常化できる人物が社長になることが重要で、その前提条件は政治権力から自由でなければならないということ」と指摘した。 彼は「解職されたり、とんでもないところに追いやられている言論人を復帰させることが次期社長が優先すべきこと」と話した。
チェ・ウォンヒョン記者 circle@hani.co.kr