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[世相を読む] 私たちは、このままで大丈夫なのでしょうか/キム・ヨジン

原文入力: 2011/08/18 23:20(1756字)

三日間眠れず隅で
声も出せずに泣いた
子役の姿が目に浮びます

← 金汝真(キム・ヨジン)俳優

彼女の話を書こうと思います。すごくためらいました。私の話で、共に活動する同僚である先輩と後輩の話です。何度か逃げて、黙って過ごすと、心の中で念をおしていたテーマです。そうです、ハン・イェスルさん、 いや彼女によってふくらんだ私たちの話です。
詳しいことはよく分かりません。当事者たちの間に何があったのか、現場の雰囲気がどうだったかの話も聞けませんでした。テレビ局の立場の発表と、スタッフたちの声明を見た時に感じた印象は、そのまま、普通のミニシリーズの現場と特に違わないということでした。週5日の撮影なら、その5日はそのままほとんど徹夜です。考えてみれば分かります。70分のドラマ2編、かなり長い映画1編の分量、3、4カ月かけて撮るその分量を、5日間だけで撮るのですから。 主演俳優はほとんどすべてのシーンに登場すると、5日中、4~5日を夜更かしをしながら撮り、助演俳優たちはちょっとましです。代わりに現場で待つ時間がとても長いです。一番大変なのは、監督とスタッフたちです。そのすべての撮影を、すべてこなさなければならないからです。まさに超人的な奮闘です。必ず、誰 か一人、ケガをするとか事故にあったりします。 脚本家は、人の頭というのが機械でもなく、机の前にずっと座っているとはいえ、1週間に台本2本ずつを簡単に出すでしょうか? 時間に追われ、毎週、成績表のように出てくる視聴率に首を引き締められながら、人々を泣かせて笑わせる話を作り出すというのは、決してつまらない仕事ではないはずです。

ここで彼女、ハン・イェスルさんは、「劣悪な製作環境」をこれ以上、時間をかけて見られないと撮影拒否を選びました。胸がはちきれそうになりました。一番最初は、放送中断に対する心配が来ました。そして、その現場にいる人々の傷も心配しました。その現場で、主演俳優とその他の俳優・スタッフたちが、その大変な労動 をして受け取る対価は、比較もできないほど差が大きいです。最も長く仕事をして最も少ない代価を受ける人々、それで、俳優たちはどんな不満が生じても、その現場を離れるのを考えることができないのです。現場のスタッフたちは、時々変わったりします。あまりに大変で、不和を理由に辞める場合も確かにありますが、こういう場合、なにか不具合が生じないように別の人に取り替えられます。それにスタッフたちは、全員非正規職であり契約職です。労組を作って不当さに抵抗するのも容易ではない条件です。私はそれでハン・イェスルさんの行為が引き起こした波紋に対して、少し安心しています。他の誰でもないトップスターであり、ドラマ現場の最大の権力者である「ヒロイン」が、そのような強硬姿勢を取ったのです。スタッフだったら、監督や作家だったら、助演俳優だったら、このように話せる機会さえなかったはずです。

「視聴者との約束」、「プロ俳優としての姿勢」、「ギャラはいくらだ…」、そのすべての非難を分からなかったはずのない彼女です。帰って来て現場スタッフと仲間演技者にすまないと謝って、それでも自身がした行動にある程度は正しさがあると信じると、その見慣れた涙を一粒も流さず話す彼女を見て、少しは幸いだと思いました。 泣きながら間違っていたと、自分が愚かだとだけ言ったとすれば、私は同じ俳優として、共に恥ずかしくてどうしたらいいか、分からなくなったからでしょう。

三日間眠れず、隅で声も出せずに泣いた子役の姿が目に浮かびます。自分の夢だから、人の一番基本的な権利、夜には寝る権利を、その幼い年齢から当然のようにあきらめるその心には感心できても、厳然な児童虐待を美化することはできないはずです。誰かを責めて解決できる問題ではありません。私たちは、ぜひ話をしましょ う。私たちは、このままで、本当に大丈夫なのでしょうか? 一人を責めて謝罪され、罵ることで終わらせても構わないほど、 私たちは皆、 大丈夫なのでしょうか?

原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/492344.html 訳 M.S