原文入力:2011-02-27午後07:19:08(1850字)
←キム・ヨンフン全国民主労働組合総連盟委員長
村を挙げてのお祝いとまではいかなくても、家族が集まるささやかなお祝いはしただろう。 卒業がそのまま失業を意味する最近のこと、息子が三星電子に入社したのだからどんなに殊勝に見えただろうか。 昨年1月、三星電子に入社しLCD事業部天安(チョナン)工場のエンジニアとして働いたキム・ジュヒョン氏は、入社して1年後の今年1月11日、三星電子タンジョン(湯井)•寮の13階から身を投げた。 25年の短い生だった。「もう一つの家族」(訳注:三星のCM)三星に入社した息子の死により、家族の生も粉々に砕けてしまった。2月28日は葬儀もできないでいる故人の49日だ。
化学薬品を取り扱うカラーフィルター工程を担当していた彼は、防塵服を着て12時間以上の長時間交代勤務をした。 三人部屋の寮で生活し、一ヶ月に一度家に帰るのも難しい三星式超一流重労働だった。 入社6ヶ月で脚の皮がむける病気にかかり資材担当部署に移動した。 以後、彼は深刻なうつ病を病む。 自殺した日は2ヶ月の病気休暇を終えて業務に復帰する日の明け方だった。 3年間皆勤した高校の学籍簿の評価のとおり「明るくて親和力があり、決心したことは最後までやり遂げる根気のある」一人の若い労働者が、たったの1年でなぜこのような無念な死にいたったのだろうか?
三星は世界首位の自動車企業トヨタと似ている。 昨年発刊された『トヨタの闇』は、年間1000億円以上を広告に注ぎ込みマスコミ報道も徹底的に統制してきたトヨタの実態を世に知らせた。 「もう一つの家族」の三星のように「人を大切に」と広告するトヨタは、いざ労働者が過労死にあっても労災と認定しない。自動車生産台数よりリコール台数の方が多い。築後40年を越える四畳半の古い社員寮と高い自殺率。 そして何よりも、二つの企業の最大の共通点は労組が無いこと、またあっても無きに等しいということである。
両国の若者がうつ病から“過労自殺”へとつながる理由は、普段想像していた企業に対するイメージと現実との格差が一次的であろう。“就職したいと思う企業一位”の三星が労働基準法さえまともに守らないことを知った時の衝撃。 4人以上の集まりを許さない統制された閉鎖的な組織文化の中で、不満は内在化され全てのことを自分ひとりで解決しなければならない。 みんなの期待の中で入社した「三星」と「トヨタ」を辞めた場合の家族の失望を思い浮かべ、若い労働者は心身ともに疲れきって死んでいく。 日本では“過労自殺”についてすでに多くの研究がなされている。 最近韓国の大法院(最高裁)でも「公務員の過労とストレスによる自殺は公務上の災害と認定される」という判決を下した。“過労自殺”に対する初めての認定だ。
キム・ジュヒョン氏の家族が葬儀も行なずに闘争する理由も、この“過労自殺”という真相を明らかにするためだ。 故人は過労で深刻なストレスを受けた。 これがうつ病につながった。 まだ充分治っていない状況で出勤を強要された日、彼は自ら命を絶った。 彼の死は当然、先の大法院判例に基いて労災と認められねばならない。 これを立証するのは決して難しくない。 故人の出退勤記録と給与明細書、三星電子の就業規則などから「長時間労働と死の因果関係」は十分知ることが出来る。 しかし三星電子はそれらの資料を営業機密だとして提出を拒否している。 関連法により、労働部に申告し労働者が閲覧しやすいように置いておくことになっている就業規則が営業秘密だとは。
「国民がもう少し正直だったらいいと思う」という三星のイ・ゴニ会長の希望のように、三星は正直に資料を提出すればいいのだ。 経済協力開発機構(OECD)国家のうちで、最も低い労組組織率とそれに反比例する最も高い自殺率の韓国。 高い労組組織率とそれに比例する社会平等指数のヨーロッパ。結局「起業しやすい国」が先進国なのではなく「労働しやすい国」が幸せな国なのだという真実を歴史は立証する。 故人の49日を迎え、三星に代表される無労組企業に必ず民主労組を建設することを誓って、故人をはじめとする無念な英霊たちに捧げる民主労総の鎮魂の言葉とする。
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/465541.html 訳A.K