一般的に世界貿易機関(WTO)のルーツは「関税と貿易に関する一般協定」(GATT)と言われるが、さらに遠くは国際貿易機関(ITO)まで遡ることができる。第2次世界大戦後、米国は世界の自由貿易秩序を構築するという目標を立ててこれを推進したが、米議会が批准を拒否し、失敗に終わった。その代わり、1947年10月にジュネーブで23カ国が締結したGATTが、国際機関ではないものの、50年近く世界の貿易秩序を導いた。周期的に貿易ラウンド(多国間交渉)を開き、関税を段階的に引き下げた。そして第8次ウルグアイラウンドで、ついにWTOの設立に対する合意が行われ、1995年1月1日の発足につながった。
GATTとWTOの体制を経て、世界の貿易規模は40倍以上増加し、平均関税率は20%台から5%以下に下がった。最大の恩恵を受けたのは中国だった。1970年代末に改革開放政策を始めた中国は、2001年11月、WTOに加盟し、世界経済に本格的に組み込まれた。中国はその後約20年間、国内総生産(GDP)と貿易が10倍以上成長する驚くべき成果を上げた。
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米国は長い間、WTOの二つの原則、「自由貿易主義」と「多国間主義」の守護者だった。ところが、中国が米国の地位を脅かし始めると、正反対に転じた。2017年1月に就任したドナルド・トランプ大統領は、これまでの貿易が公正ではなく、米国の輸出被害、製造業の衰退、雇用減少につながったと主張した。そして、WTOで紛争を管掌する上級委員の選任を拒否することで、上級委員会の機能を麻痺させてしまった。第2次トランプ政権はさらに世界を相手に数十パーセントの関税を課す「関税戦争」を繰り広げている。自称「トランプラウンド」だ。
一方、中国の習近平国家主席は8日、BRICS首脳会議に出席し、「WTOを中心とした多国間貿易体制を守り、すべての形の保護主義に反対しなければならない」と主張した。WTO発足30年で、米国は「守護者」から「破壊者」へと、中国は「受恵者」から「守護者」へと様変わりしたのだ。もちろん、中国がWTOの真の守護者なのかについては議論が多い。加盟当時の約束とは違って、国家主導の経済体制を維持することで、不公正な貿易環境を作っているという批判の声も高いためだ。
WTOはトランプ発の危機を乗り越え、自由貿易を守っていくことができるだろうか。これは、中国とともにWTO体制の主要受恵国の一つである韓国の未来も左右しうる重要な質問だ。