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トランプが勝利するための細くて狭い道【特派員コラム】

登録:2025-05-16 07:08 修正:2025-05-16 07:36
キム・ウォンチョル|ワシントン特派員
米国のトランプ大統領が2025年4月2日、全世界を対象にした相互関税を発表している/ロイター・聯合ニュース

 「口座」への「入金」がはじまりました。先月、米国は関税だけで163億ドル(約22兆6000億ウォン)を稼ぎました。3月の87億5000万ドルに比べ約86%の増で、昨年同月と比べると2倍以上です。「少なくとも過去10年間の、月間で最も多い関税収入」(ブルームバーグ)です。

 当然の結果です。ドナルド・トランプ大統領は先月5日(現地時間)からすべての輸入品に10%の関税を課しています。なかった税金が生じたのだから、収入が増えるのはあたりまえです。イェール大学傘下の予算研究所によると、現在の米国の全般的な関税率は17.8%で、これは1934年以降における最高値です。関税が最高値なのですから、関税収入も最高値にならざるを得ません。

 問題は見えないコストです。予算研究所は最近、現行の関税が永久に維持されるという仮定の下で経済的影響を評価しました。関税収入は2026年からの10年間、年間2700億ドル増えます。しかし物価が上昇するため、世帯当たり年平均2800ドルの消費余力が奪われます。米国には約1億3千万世帯あるので、これは3640億ドル分の購買力が消えることを意味します。すでに損害が利益を超えています。「小をむさぼり大を失う」です。

 それで終わりではありません。米国の実質国内総生産(GDP)の成長率も下がり、失業者は増えます。労働所得の減少→税収の減少→社会福祉支出の増加とつながり、政府支出を増やします。

 トランプ政権の伝家の宝刀は「国家債務」です。早いうちに借金を返さないと米国が危険になる水準なのだから、たとえ長期的に「より多くを失ったとしても」短期的には使える手段を総動員すべきだというのです。

 米国の国家債務が歴史的な多さであることは事実です。GDPに対する総負債は、第2次世界大戦直後に歴史的な最高値を記録して以降は下落し続けていましたが、現在は再び最高水準に達しています。

 早急に減らさなければならないのも確かだと思われます。ウォーレン・バフェットは先日、突如引退を宣言した際に、トランプの貿易政策を批判しつつも、「いまの私たちの財政赤字は、長期的に持続不可能な水準」だとして、「財政赤字を減らすのは難しいことだが、必ず解決すべき課題」だと述べました。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は何度も「米連邦政府は依然として『持続不可能な』財政経路にとどまっており、それを正すための措置が必要だ」と述べています。

 しかし、負債が多く、早期に返済すべきなのが「事実」だからといって、トランプ式の関税政策が正当化ばかりされるわけではありません。「70%にとって得になり、30%にとって損になること」(自由貿易)ではなく「70%にとって損となり、30%にとって得となること」(保護貿易)を繰り返すと、経済は縮小するものです。稼ぎが減ると、そして減ると予想されると、同じ負債でもより深刻に受け取られるものです。

 先日の中国との貿易交渉の終了後、米通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表は、適切な関税率について次のように述べました。「貿易を禁止する水準ではないと同時に、米国に貿易赤字の削減目標を追求させうる水準」。関税のプラス効果を最大化しつつマイナス効果は最小化する均衡点を探るべきだ、というわけです。そのような「細くて狭い」道が見つからなければ、トランプ式の関税政策の失敗は必然となるのです。

//ハンギョレ新聞社

キム・ウォンチョル|ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1197671.html韓国語原文入力:2025-05-15 17:16
訳D.K

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