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【社説】北朝鮮の「ごみ風船」による火災も、国民が自ら適応すべきなのか

登録:2024-09-10 07:48 修正:2024-09-10 09:37
今月6日、ソウル龍山区の国防部で行われた第50代国防部長官の就任式で、キム・ヨンヒョン国防部長官が就任演説をおこなっている=国防部提供//ハンギョレ新聞社

 5月末に飛来しはじめた北朝鮮の「ごみ風船」がソウルと京畿道北部一帯の住民を苦しめだしてから、すでに100日が過ぎた。当初は北朝鮮も、一部の脱北民が先にはじめた北朝鮮に対するビラ散布をやめよとして罵詈雑言を浴びせてきていたが、今月4日から8日にかけては「5日連続」で挑発を行いながらも、今やそんな言葉すらも発しなくなっている。一部の地域では風船に仕掛けられた起爆装置によって火災が起きるなど、国民の不安は極に達しているが、新国防長官は緊張緩和に努めるのではなく、就任第一声で北朝鮮「政権の終末」を口にした。北朝鮮の脅威に各自適応しなければならない国民の気持ちをいらだたせるだけだ。

 野党「共に民主党」のヤン・ブナム議員が8日にソウル市と京畿道から提出を受けた資料では、北朝鮮のごみ風船散布がはじまった5月28日から先月10日までの首都圏における被害規模は1億52万8000ウォン(約1072万円)と集計されている。止めてあった自動車や建物の屋根が壊れたりもしており、風船を地面に落とすために一定時間が過ぎると作動する起爆装置によって火事になるケースもあった。8日には京畿道坡州市(パジュシ)にある製薬会社の倉庫にごみ風船が落ち、8700万ウォン(約928万円)の経済的被害が発生している。

 また、7月24日には龍山(ヨンサン)の大統領室庁舎内にごみ風船が落ちた。国の最高統治機関が北朝鮮の脅威に直接さらされた非常事態だったが、大統領室は「物体の危険性はない」と語っただけだ。北朝鮮の挑発の余地をなくすために脱北民による北朝鮮へのビラ散布をやめさせるという対策は、政府内からは出ていない。そのため「ごみ風船」は大韓民国の日常になりつつある。

 にもかかわらずキム・ヨンヒョン新国防長官は6日の就任式で、前任のシン・ウォンシク国家安保室長の掲げた「北朝鮮が挑発してくれば即時、強力に、最後まで報復する」との原則を継承するとしつつ、「残酷な代価」、「政権の終末」などの挑発的な発言ばかりを並べ立てた。目の前の北朝鮮のごみ風船の脅威にはお手上げの政府が、無意味な大言壮語を吐いてばかりいるわけだが、いったい誰に向けた発言なのか。

 11月の米国の大統領選挙を前に、北朝鮮が7回目の核実験などの重大な動きに出る可能性がある、というのが韓米当局の見解だ。このような緊迫した情勢変化の中で、韓国の対北朝鮮ビラと北朝鮮のごみ風船が「偶発的衝突」の口実になる可能性はないのか。政府は無駄な固執をやめ、今からでも対北朝鮮ビラの取り締まりに当たるべきだ。国民の安全が何よりも大事だ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1157741.html韓国語原文入力:2024-09-09 18:05
訳D.K

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