本文に移動

戦争反対が極右の役割になった現実【コラム】

登録:2024-07-02 08:13 修正:2024-07-03 08:20
チョン・ウィギルの世界、そして 
 
戦争と対外膨張を擁護した極右が軍事介入に反対し、現実主義に忠実だという保守主流や進歩に近いというリベラル勢力が非妥協的な軍事介入を主張する現実のもとで、私たちは反戦と平和のためにいったい誰に期待すべきなのか。
国民連合のマリーヌ・ルペン前代表が先月30日(現地時間)、フランス北部のエナンボモンで総選挙の第1回投票の出口調査の結果発表を確認した後、明るく笑っている=エナンボモン/AP・聯合ニュース

 反戦と平和は進歩とリベラル勢力が強調する価値だ。しかし最近の西側では、少なくとも戦争反対は極右の主張となったようにみえる。

 30日にフランス総選挙の第1回投票で1位になった国民連合(RN)、ドイツの欧州議会選挙で与党の社会民主党を抜いて1位になった「ドイツのための選択肢」(AfD)、イタリア政府与党のジョルジャ・メローニ首相の「イタリアの同胞」(FdI)、ハンガリーのオルバン・ビクトル首相のフィデス(青年民主同盟)などの極右勢力が、対外政策の懸案を扱う際の共通点は、ウクライナ戦争への介入に反対あるいは消極的だということだ。米国でも共和党のドナルド・トランプ候補がウクライナ戦争への介入に消極的あるいは反対で、特に白人ナショナリズムや右派ポピュリズムの支持層が、米国の海外への軍事介入とウクライナ戦争に反対している。

 国民連合の指導者であるマリーヌ・ルペンは、今回の総選挙で勝利してジョルダン・バルデラ代表が首相になれば、エマニュエル・マクロン大統領の推進するフランス軍のウクライナ派兵を阻止すると宣言した。バルデラ代表は「金を握るのは首相なので、大統領にとって軍最高司令官の地位は名誉職だ」と述べ、大統領の国防外交の権限まで干渉する意思を見せた。

 西側の保守とリベラルの主流は、極右勢力がウクライナ戦争への介入に反対するのは、ロシアのウラジーミル・プーチンの体制と相通ずる権威主義勢力であるためだと非難する。プーチンのウクライナ侵攻を擁護したり傍観したりするのは、主権と自由を無視する彼らの認識のためであり、ロシアの侵略行為の拡大をほう助するものだと警告する。

 このような主張が正しいとしても、問題は西側でなぜこのような極右勢力が躍進するのかだ。西側、特にヨーロッパで極右が主流政党や政府与党になる背景であると同時に、彼らが掲げる最大のテーマは、移民と難民だ。欧州における現在の移民と難民問題の根源は、冷戦崩壊後の西側の軍事介入だ。西側は、1990年代初めのユーゴスラビア内戦への介入にはじまり、中東で湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争、リビア内戦、シリア内戦、イスラム国(IS)撃退戦を経て、現在はガザ戦争とウクライナ戦争に介入している。

 西側は自由と民主主義、人権を名目にこれらの戦争を起こしたり介入したりした。名目は正しいとしても、結果は自由と民主主義、人権からはかけ離れている。西側が集中的に介入した中東は、住民にとっては地獄あるいは煉獄になった。特に欧州諸国が率先して介入したリビアの現在の姿はどうか。民主主義どころかまともな政府も存在せず、住民たちは恒常的な内戦に苦しめられている。

 その結果は、地中海を越えて押し寄せる難民の行列だ。私たちは今も毎日のように地中海で遭難して死ぬ難民の悲劇を目撃している。そして欧州諸国内では、難民と移民に対する反発と憎悪が高まり、極右の基盤となった。極右政党は、政府が国民をおろそかにし、海外に出て軍事介入を繰り広げているという立場を取り、その次の段階の主張として海外への軍事介入と戦争に反対せざるをえない。

 保守やリベラルの主流は、主権と自由、民主主義を擁護するという名目のもと、交渉と妥協よりも非妥協的な軍事介入のドグマに陥っているのではないだろうか。立党のときは平和主義に基づき北大西洋条約機構(NATO)脱退まで主張していたドイツの緑の党は、現在の連立政権を率いる社会民主党に圧力をかけ、ウクライナへの兵器提供など、ドイツのウクライナ戦争介入を率いている。緑の党のアンナレーナ・ベアボック外相は連立政権内でウクライナ戦争に対しては最高のタカ派であり、ロベルト・ハーベック副首相兼経済相は自身はいまやドイツの「防衛産業相」だと自慢している。ドイツでは防衛産業相はナチス時代にあった軍需大臣を指す。

 一方、ルペンはウクライナ戦争前、NATOの限りない拡張は「非理性的」であり、「ロシアに対する冷戦はロシアを中国の懐に抱きこませること」だと批判した。戦争が勃発すると、汎欧州国家会議を呼びかけ、「ロシアはドンバス地域から撤退し、クリミア半島はもはやウクライナに返還できないためロシアとの合併を認定」することを主張した。少なくともロシアと交渉や妥協をしてみようというルペンをもっぱら批判だけすべきなのかは疑問だ。

 戦争と対外膨張を擁護した極右が現実主義路線を取り、現実主義に忠実だという保守主流や進歩に近いというリベラル勢力が非妥協的な軍事介入を主張する状況は、錯綜した現実だ。戦争反対と平和追求のために交渉と妥協を主張して推進させる勢力はいったい誰であり、私たちは誰に期待しなければならないのだろうか。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ウィギル|先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1147253.html韓国語原文入力:2024-07-01 18:41
訳M.S

関連記事