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ニュースをユーチューブで見る理由…「マスコミが私たちを無視するから」

登録:2024-05-15 22:07 修正:2024-05-16 10:24
「ジャーナリズムの未来、ケアと傾聴にある」
//ハンギョレ新聞社

 ニュースの政派的消費、すなわち保守は保守メディアだけ、進歩は進歩メディアだけを消費する行為は悪いのだろうか。政治学者たちは、違う側の話を聞かずに「似たもの同士」だけで付き合う行為が、理念の異なる人々に対する誤解を増幅させ、妥協の余地を狭め、民主主義を危うくするという多くの研究結果を提示する。二大政党の政治体系に慣れたこれらの人たちは、左右両方のメッセージにいずれも開かれている浮動層が多かった過去を懐かしみ、このような人たちの姿が消えることに憂慮を示している。

 メディア学者たちの答えはさらに複雑だ。彼らもやはり党派性を越えた「他の話を聞くこと」の重要性を認めるが、研究結果は自分と違う考えの記事や対話が人々の見解をほとんど変えないという点もよく示しているためだ。ペンシルベニア大学のダイアナ・マッツ教授は、政治的見解が異なる話にさらされた人々が、反発心理によりむしろ既存の見解を強固にすることを証明したことがある。

 韓国で政派的メディア消費を研究する学者たちの計算はさらに複雑だ。他の国でも高級メディアの忌避やソーシャルメディア偏重の現象が見られるが、韓国では特に特定プラットフォーム(ユーチューブ)の優位が目立つ。先週、韓国言論学会でクォン・オソン、ハン・ジヨン、キム・チャンスク(以上KAIST)が発表した研究によると、最近はこうした政派的言メディア消費が右派ではなく左派でさらに目立ち、そこには政権と保守メディアに対する反発心も影響を及ぼしたとみられる。

 政派的メディア消費の順機能を論じる学者もいる。心理学者たちは感情的な満足感を語る。既存の「品格のある」主流メディアで見られなかった卑俗語などを使ったうまい表現、スカッとさせる報道に接して得る爽快さが代表的だ。こうした個人の心理的効能を超えて、自分と同じ考えの人々とコメントだけで交流して得る帰属感も政派的メディア消費の順機能だ。北欧などで発展した高級党派的メディアは、特定政党や職能団体の利益を超えて、社会的対話の質的水準を高める土台を提供する。

 しかし、韓国や米国など大多数の国では、極端な低級メディアに人々が集中しているのが現実だ。突破口は何だろうか。米ウィスコンシン大学のスーザン・ロビンソン氏は実験を考案した。例えば、ハンギョレの記者がハンギョレを読んだこともなく読むつもりもない極右ユーチューブ愛聴者と1対1で対話をする実験だ。ただし、記者は「私たちがあなたのような方々を扱った記事で、どんなところが間違っていると思いますか?」 「信頼を回復するためには何が必要でしょうか?」といった質問を投げた後、反論せずに傾聴しなければならない。

 記者と対話した読者は、左右を問わず、怒りに満ちていた。自分たちが属している集団が反対陣営のマスコミで否定的に表現されるだけでなく、過度に単純化して登場させられるということだ。「声の大きい人が登場するだけで、本当に私たちのような平凡な人は出てこない」と彼らは口をそろえて話した。

 しかし、この研究の驚くべき結果は、インタビューが終了した後のアンケート調査だった。当初、進歩または保守メディアを信用せず嫌悪して研究対象に選ばれたインタビュー対象者の3人に2人は対話後に、これらの記者とメディアに対する信頼度が上がったと答え、さらに3人に1人はこれらのメディアの購読まで考慮していると答えた。記者たちが彼らの話を聞いてくれただけなのに、信頼度が急上昇したのだ。

 この研究は、考えが異なるメディアに対する不信、そして政派的メディア消費の基底には「無視されているという思い」に根差していることを示している。ロビンソン氏は、メディア不信と偏りを克服する新しいジャーナリズムの原則として「ケアの倫理」を掲げる。ミネソタ大学のジョアン・トント氏が強調した「関心傾注」や「責任感」、「力量」、「配慮」、「連帯性」などが、メディアと読者の関係にも適用されるということだ。多様な社会と独自の共同体の要求に機敏に反応し、連帯する行為がメディアの未来だということだ。

 結局、著者はジャーナリズムの未来としてケアと傾聴を言いたい。心理相談を受けたことのある人は知っている。医師が何も言わなくても、聴いてくれる行為だけで治癒が始まるという点を。ユーチューブへと離れていった読者たちに戻ってきてもらうためのメディアの努力にはケアがなければならず、その始まりは傾聴にある。

//ハンギョレ新聞社
ソ・スミン|西江大学新聞放送学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/media/1140607.html韓国語原文入力:2024-05-15 8:36
訳J.S

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