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[コラム]「アマチュア外交」に国家の命運を任せるわけにはいかない

登録:2022-10-17 06:09 修正:2022-10-17 07:29
尹錫悦大統領が6日、龍山大統領執務室で開かれた秋季公館長信任状授与式に出席するため入場している。後列左からボク・ドゥギュ人事企画官、キム・テヒョ国家安保室第1次長、チェ・サンモク経済首席、キム・ソンハン国家安保室長、パク・チン外交部長官=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 ホワイトハウスのジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は12日、「国家安保戦略」を説明する演説で、注目すべき発言をした。現在の状況を第2次世界大戦直後の国際秩序の大きなターニングポイントに喩えたのだ。そして「1947年、トルーマン大統領が戦後の国際秩序を確立したように、ジョー・バイデン大統領も新しい国際秩序の枠組みを作る方針だ」と述べた。さらに「トルーマンはマーシャルプランと北大西洋条約機構(NATO)を作り、国際社会に対する米国の関与の条件を設定した」と強調した。「冷戦」や「封鎖戦略」という言葉こそ使わなかったものの、サリバン氏の発言からは聴衆にこれを連想させたい思惑がはっきりとうかがえる。1947年は事実上冷戦が始まった年であり、トルーマン大統領が当時、対ソ連封鎖戦略の大きな枠組みを作ったからだ。

 米国の国家安保戦略は新政権の対外戦略を示す文書だ。バイデン大統領は同文書で「冷戦後の時代は確実に終わった」と明らかにした。これは事実上「新冷戦」が始まったことを知らせる宣言に他ならない。相手は中国だ。同文書は「中国は国際秩序を再編しようとする意図とその目的に近づくための経済・外交・軍事・技術的な力を持つ唯一の国」だと指摘した。さらに、中国との競争はすべての地域と経済、技術、外交、開発、安全保障、グローバルガバナンスの全領域で繰り広げられていると明らかにした。同文書とサリバン氏の演説文は、米国が75年前にソ連に対して展開した封鎖戦略をいま中国に対して繰り広げようとしているのではないかという疑念を抱かせる。文書は外交安保的にはオーカス(AUKUS)とクアッド(QUAD)、経済的にはインド太平洋経済枠組み(IPEF)に重点を置いていると明らかにしたが、これはトルーマン大統領のNATO、マーシャルプランと類似している。中国と世界経済の相互依存性が非常に深いため、封鎖戦略よりは中国を先端産業のグローバルサプライチェーンから排除する「技術デカップリング(切り離し)」を試みているという点、そして主戦場がヨーロッパからアジアに移った点が異なるだけだ。

 特に同文書は、今後10年が中国との戦略的競争の条件を設定する「決定的な時期」になると見通した。いま阻止しなければ、中国の経済力と技術水準が米国を追い越す恐れもあるという不安と焦りのためとみられる。米国が最近「CHIPS・科学法」と「インフレ抑制法」を施行し、中国への半導体製造装備の輸出統制を大幅に強化したことは、米国が本格的に行動に出たことを象徴的に表している。

 問題は、韓国が米中新冷戦の直接的被害を受けるという点だ。米中対決が先端技術を舞台に展開されており、この産業の比重が高い韓国は他国に比べて被害が大きくならざるを得ない。電気自動車(EV)購入時の補助金支給をめぐる差別待遇ですでに現代自動車が影響を受けているのに加え、半導体製造装備の輸出統制でサムスン電子とSKハイニックスの中国事業への支障が懸念される。これだけではない。バッテリーとバイオ産業などでも被害が予想される。

 このような国際秩序の大転換期に、韓国は果たしてきちんと対応する態勢を整えているのか。電気自動車問題をめぐる適期の対応に失敗したうえ、半導体分野では「1年猶予」という場当たり的な処方がなされただけだ。その1年が終わった後はどうするのか、さっぱりわからない。中長期の事業見通しが立たなければ、企業は投資決定を下せない。なのに、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の一部では「1年猶予」があたかも米国が私たちを配慮してくれたかのように受け止めているようだ。実に嘆かわしい。

 現政権の対外政策のコントロールタワーは、すでに力の限界を露呈した。国家安保室と外交部長官は先月の歴訪外交の際、儀典と日程調整など基本的なことさえまともに準備できず、大統領はミスを犯した。にもかかわらず、それを外部のせいにし、マスコミ各社の締め付けに乗り出している。尹錫悦大統領の暴言(「この××(野郎ども)」)をめぐる騒ぎに対する対応方式は、アンデルセン童話の中の「裸の王様」と「家来たち」を連想させる。コントロールタワーの信頼の危機をこれ以上放置する余裕はない。

 何よりも大統領がミスを「クールに」認め、国民の信頼を回復することでリーダーシップを取り戻さなければならない。そして超党派的に知恵を集め、厳酷な新冷戦時代を乗り切る対外戦略を立て直さなければならない。外交安全保障チームの人的刷新は避けられないだろう。国内政治を誤っても何とか収拾するチャンスはあるが、外交はそうではない。一歩足を踏み外せば国家の運命が変わり、その代償は国民が払うことになる。大統領が「外交の素人」であるからこそ、参謀陣がこれを補わなければならない。歴代最弱と評される現政権の外交安全保障チームに国家の命運を任せるわけにはいかない。

//ハンギョレ新聞社
パク・ヒョン論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1062882.html韓国語原文入:2022-10-17 02:40
訳H.J

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