双龍自動車労働者のキム・ジョンウクさんは、最近のある記者会見で「2009年以降、一日一日が罰のように感じられる」と語った。「見えない監獄で暮らしている」とも語った。数十億ウォン台の損害賠償訴訟に抑えつけられた人生を刑罰に例えたのだ。13年前、キムさんを含む67人の双龍車労働者は、会社側と警察から損害賠償訴訟を起こされた。整理解雇に反対する「違法な」ストライキを行ったというのがその理由だ。
韓国では、ストライキは「よほどのことでない限り違法」だ。関連検索語のように「ストライキ」と言えば、決まって「違法」という言葉がついて回る。おかしくはないか。韓国は労働三権が憲法で保障されている国なのに、なぜストライキには全て「違法」というレッテルが貼られるのか。
周知の通り、韓国憲法第33条には「勤労者は勤労条件の向上のために自主的な団結権・団体交渉権および団体行動権を持つ」と規定されている。法律で限界を定めることになっている財産権(23条)とは異なり、法律留保条項もない。だが、この当然の権利が現実においては形骸化している。労働現場を律する労働組合および労働関係調整法(労働組合法)のせいだ。
労働組合法は憲法が定めた労働三権を保障するための法律だ。同法の第1条(目的)にそう記されている。しかし、「労働三権の保障」は掛け声にとどまっており、労働組合法はストを罪悪視する条項であふれている。「合法」ストとして認められるためには細かい「禁止と処罰の地雷原」を通り過ぎなければならない。
もちろん労働組合法には「免責条項」がある。「使用者はこの法による団体交渉、あるいは争議行為により損害を被った場合に、労働組合または労働者に対してその賠償を請求することはできない」(3条)という規定だ。憲法が争議行為を要とする団体行動権を基本権として保障しており、争議行為は「業務の正常な運営を阻害する行為」(労働組合法2条)なので、ストの損害に対する免責は一見すると極めて当然だ。
この免責条項を無力化する「魔法の杖」が、「この法による」という文句だ。裁判所はこれを「この法を順守した」と解釈する。問題は、「この法」を守りつつストを行うことはほとんど不可能に近いということだ。労働者の団体行動にあらゆる足かせをはめているからだ。労働組合法は100あまりの条項からなるが、大半が労働権を制限するか否定する内容であり、刑罰や過料を科す項目は40あまりに達する(国会討論会「大宇造船海洋の下請け労組の闘争と損害賠償仮差し押さえ」資料集より)。
労働組合法がストを「よほどのことでない限り違法」としているので、使用者たちは損害賠償訴訟を伝家の宝刀のように振り回す。「故意あるいは過失による違法行為で他人に損害を与えた者は、その損害を賠償する責任がある」とする民法の条項が訴訟の根拠だ。ストライキは集団的に労務提供を拒否する行為であるため、企業の損害が前提にならざるを得ないにもかかわらず、ストライキによる損失を弁償しろという要求がいつのまにか使用者の当然の権利として位置づけられている。
裁判所の判断は、「傾いた運動場」(最初から公平でなく弱い立場に不利な状態)を最終的に決定づけるものといえる。損害賠償訴訟ではストライキの正当性の有無がカギになるが、裁判所は争議行為の主体、目的、手続き、手段のいずれか一つでも正当でなければ違法と判断し、賠償責任を認める。例えば労働者の地位に深刻な悪影響を及ぼす整理解雇に反対するストライキにも、「目的」が正当でないという理由で「違法」のレッテルを貼る。裁判所は争議行為の「主体」についても、「団体交渉の主体」(勤労契約関係にある労使)に制限する。元請けの使用者が下請け労働者の労働条件を決めるケースは多いが、元請け企業を相手にしたストライキは正当性が認められない。
ストライキが「よほどのことでない限り違法」である社会において、労働者はストライキをしようと思えば監獄に行く覚悟を決めなければならない。裁判所が正当性のないストライキだと判断すれば、刑法の業務妨害罪で処罰されるためだ。先進国とされる国の中で、ストライキを行ったからといって刑法で労働者を処罰する国は韓国が唯一だ。労使関係を律する法律に、韓国のように刑罰条項を設けている国も稀だという。
憲法の保障する労働権を無力化し、労働者の生活を破壊する無差別損害賠償訴訟が社会問題になってから、いつの間にか20年が経つ。幸い最近、大宇造船海洋の下請け労働者に対する470億ウォン(約48億4000万円)の損害賠償訴訟を機として、ストライキが「よほどのことでない限り合法」である社会を作ろうという動きがいつにも増して活発になっている。労働組合法改正(黄色い封筒法)運動がそれだ。「損害賠償免責」の対象となる「正当な争議行為」の範囲を広げることがその要だ。共に民主党も通常国会の「22代民生立法課題」の目録に「黄色い封筒法」を入れている。「労働後進国」という汚名を晴らすためにも、これ以上この問題に背を向けてはならない。
イ・ジョンギュ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )