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[特派員コラム]尹錫悦大統領、米国に白紙小切手を切るな

登録:2022-05-20 10:21 修正:2022-05-20 11:42
キム・テヒョ国家安保室第1次長が今月18日午後、ソウル龍山の大統領室庁舎のオープンラウンジで韓米首脳会談に関するブリーフィングを行っている/聯合ニュース

 歴代の韓国大統領就任以来、最も短時間で決まった韓米首脳会談が、明日開かれる。北朝鮮の核・ミサイル開発の加速化、ウクライナ戦争、米国の中国牽制強化など、国内外ともに深刻な状況で開かれる会談であり、重要性が高い。韓国には対米関係強化の機会だが、負担も伴う行事だ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の条件と発足前後の行動を見ると、心配な部分も目につく。

 まず、首脳の経綸の差だ。外交経験が全くない尹大統領は、就任から11日で最強国の大統領と会談する。満79歳のジョー・バイデン大統領は、30歳で上院議員になって以来、上院外交委員会で長期間活動し、委員長を二度務めた。半世紀にわたって政治をし、副大統領も8年間務め、重要な外交や紛争現場を立ち回った。ダビデとゴリアテにもこれほどの階級差ではなかった。深刻な情勢の中、安全保障を米国に大きく依存する韓国の立場まで考えれば、米国が使えるテコは目一杯大きくなった状態だ。もし相手を抑えて弱点を最大限利用しようとするゼロサムの関係なら、片方があまりにも不利な構造だ。せめてもの救いは、同盟国同士の会談であって事前調整もするという点だ。

 二つ目に、前政権の対米外交を大失敗と規定する態度だ。韓米関係を「復元」するということは、文在寅(ムン・ジェイン)政権が関係を台なしにしたという認識を前提とする。米国の強硬派側は、文在寅政権の対北朝鮮アプローチに不満を持っていた可能性もある。しかし、全体的に両国関係が悪化したとみる根拠はない。両国関係が深刻に壊れたということは、主導国といえる米国の大統領も外交で失政したと責めるつもりだろうか。

 相手をこき下ろして反射利益を得て、支持層をまとめる効果も得るのが選挙戦の基本だ。しかし、勝敗が分かれた後は、外交であれいかなる政策であれ、公益という本来の志向点と判断基準を取り戻さなければならない。地元のデパートで靴を買い、市場でトッポッキを買う姿を見せている様子を見ると、尹大統領は選挙運動のムードからまだ抜け出せていないようだ。選挙が終わったばかりなのでモードの切り替えができず、国内政治的な動機が会談に大きな影響を与えるのなら困りものだ。

 三つ目に、札を簡単に見せるような態度だ。尹大統領は就任直前、クアッド(Quad)に加盟したいがうまく行かないのでワーキンググループへの参加から始めると述べた。韓国のクアッド加盟については、構成国の中で日本が主に反対していると知られている。このような公開発言は、米日には無駄に低姿勢を示したものだ。中国に対しては、クアッドの「正会員」にもなれないのに不必要な牽制メッセージを投げただけの格好になる。

 THAAD(高高度防衛ミサイル)追加配備の公約も同じだ。選挙運動の時には確言しておきながら、いつの間にか口に出さなくなった。韓国大統領当選者が言っているにもかかわらず、米国はクアッド拡大とTHAAD追加配備に否定的な態度を示した。行ったり来たりを繰り返すようでは、あちこちで信頼を失う。

 最後に、最も心配なのは韓国が「白紙小切手」を切る可能性だ。先に取り上げた三つの心配事は、結局これとつながっている。外交史において白紙小切手とは、1914年にドイツがオーストリア・ハンガリー帝国に無条件支援を約束した事例をいう。オーストリア・ハンガリーはこれを信じて第1次世界大戦の砲門を開き、白紙小切手発行国のドイツは仕方なく巻き込まれた。白紙小切手を切ることは、国家間関係でも最も避けるべき無謀な行動だ。

 ワシントンは、韓国大統領が選挙の時に出した甘い言葉に舌なめずりしている。相手が望む通りに何でもすればこそ関係が「復元」されると考えるならば、後始末が厳しくなるだろう。会談後も同じだ。中国、北朝鮮、経済関係などの事案で、韓国の調整能力と身動きの幅が保障されない宣言や発言には慎重でなければならない。

//ハンギョレ新聞社

イ・ボニョン|ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1043616.html韓国語原文入力:2022-05-20 07:39
訳C.M

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