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[コラム]韓国の自営業者の相次ぐ死は「社会的他殺」だ

登録:2021-09-24 03:21 修正:2021-09-24 08:14
17日、ソウル汝矣島の国会議事堂駅前に設けられた自営業者簡易焼香所。市民が弔問している/聯合ニュース

 「謹弔 大韓民国の小商工人・自営業者」。17日、ソウル汝矣島(ヨイド)の国会議事堂駅近くの路上に設けられた「自営業者簡易焼香所」の祭壇には、こう書かれた額が黒い帯をまとって置かれていた。使い捨てのプラスチックのコーヒーカップには線香がいくつか立ち、紙コップではろうそくの火が燃えていた。コロナ禍による経営難と生活苦に耐え切れず亡くなった小商工人・自営業者を追悼する空間だった。

 「ソウル麻浦(マポ)のビアホールの店主と平沢(ピョンテク)のカラオケボックスの店主の訃報に接し、このままでは自営業者が連鎖的に死んで行ってしまうという気がしました。約1000人の自営業者が集うグループチャットで、このように死なせてはならないという意見が多く寄せられ、焼香所を設置しました。霊を慰めたかったのですが、死出の旅路すらもみすぼらしいものとなってしまいました」。喪服を着た全国自営業者非常対策委員会のイ・チャンホ共同代表の言葉からは、悔しさがにじみ出ていた。

 線香をあげながら、果たしてこの1年8カ月間で国は小商工人たちに何をしてきたのかを問わざるを得なかった。新型コロナウイルスの被害をそれなりに最小限に抑えることも、小商工人の犠牲と協力がなければ不可能だったのに、韓国社会が彼らの苦しみを和らげる努力をどれほどしてきたかは疑問だ。災害支援金を数回支給したとはいえ、彼らにとっては、それこそ雀の涙に過ぎなかった。イ・チャンホ代表は「政府は今回も手厚く、かつ幅広く支援すると言っているが、率直に言って1カ月分の家賃にもならないケースがほとんど」だと述べた。

 これが現実だが、国家財政を担う官僚の認識は大いに異なる。「財政赤字の20兆ウォン(約1兆8800億円)縮小による健全財政回復基盤の構築」、「財政の好循環構造が可視化しており、通貨危機やグローバル金融危機の際に、拡張財政を通じて早期経済回復、税収増大などの好循環が実現したのと似た状況」。企画財政部が先月末に発表した来年の予算案の報道資料の一部分だ。財政健全性を守り抜いているという自負に満ちたこの資料を見ていると、まるで韓国はすでに危機を克服したかのように見える。小商工人は借金まみれで死んでいっているにもかかわらず、官僚たちは財政健全性を誇っている。

 財政余力が尽きたために支援したくてもできないのと、財政余力があるのに財政節約のために支援をしないのとでは、次元が全く異なる。今の状況は、企財部が宣伝しているように後者であることは明らかだ。実際のところ、韓国の信用格付けは史上最高水準だ。今年、3大国際信用格付け会社は、韓国の格付けをそのまま維持した。これは英国、イタリア、カナダなどの格付けが1段階引き下げられ、米国、日本、フランス、オーストラリアなどは見通しが下方修正されたのとは対照的だ。韓国が財政をうまく運用しているかのように見えるが、他の先進国が愚かだからこうなったわけではない。後に税金で回収するとしても、国民が困難に陥った時は財政を十分に供給して支援するという、財政運用の基本を実践したことによる結果だと見るべきだ。財政健全性を守ることに関しては右に出るもののない国際通貨基金(IMF)も、韓国政府には金をもっと使っても良いと言っているのに、官僚がこの有様なのは「財政健全性強迫症」にかかっているせいだ。

 小商工人連合会のチャ・ナムス政策広報本部長は「それでも昨年までは、小商工人たちは貯金を切り崩したり、融資を受けたりしながら何とか持ちこたえていたが、営業制限が長期化したことで事業継続のマジノ線が崩壊しつつある。亡くなる小商工人たちが増えているのは、そのために現れる現象の一つだろう」と語った。小商工人の相次ぐ死は「社会的他殺」と考えられるということだ。

 せめて今からでも財政官僚は現実に立ち返り、きちんと対策を立てるべきだ。何よりも損失補償を受け取れる小商工人の範囲を広げるとともに、家賃支援を行うべきだ。懸念されていたように、政府は「小商工人損失補償法施行令」で補償対象を集合禁止・営業制限措置を受けたケースに限定した。私的な会合の人数制限などで打撃を受けている多くの小商工人が除外されたのだ。家賃支援も、カナダなどのように売上減少率によって差をつけるべきだ。

 それでも持ちこたえるのが難しい小商工人には、廃業と転職へと誘導すべきだ。多くの小商工人たちが、廃業したくてもできないと訴えている。店舗の原状復旧にはおよそ1000万ウォン(約93万8000円)が必要なのに、政府支援金は200万ウォン(約18万8000円)のみで、融資も一括返済しなければならないからだ。政府には、口先だけで自営業者への「厚く幅広い」支援を語るのではなく、現実的な対策を打ち出すことを望む。

//ハンギョレ新聞社

パク・ヒョン|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1012472.html韓国語原文入力:2021-09-23 15:40
訳D.K

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