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[社説]サムスン「相続税12兆ウォン」評価に値するが「便法継承」は残る

登録:2021-04-29 03:23 修正:2021-04-29 10:27
史上最大…美術品などの寄付も過去最大級 
「税なき富の相続」清算の契機に 
「イ・ジェヨン赦免」に結び付けてはならない
28日午後、ファン・ヒ文化体育観光部長官がソウル市鍾路区の政府ソウル庁舎別館で、サムスン電子の故イ・ゴンヒ会長所蔵の文化財や美術品の寄贈についてブリーフィングを行っている/聯合ニュース

 28日、サムスンの故イ・ゴンヒ会長の遺族が、相続税として12兆ウォン(約1兆1700億円)を納付すると発表した。また、遺産から1兆ウォン(約978億円)を寄付し、故人の所蔵していた高価な美術品の多くも寄贈すると明らかにした。税法に則った納付ではあるものの、これまで韓国の財閥が遺産相続の過程でこのような巨額の相続税を納めたことはないという点では評価に値する。韓国社会がそれほど透明になり、サムスン家もそのような変化を受け入れた結果だと言える。これが財閥の「税なき富」の相続慣行を正す転機となることを願う。

 12兆ウォンは相続税の史上最高額だ。2018年、LGの故ク・ボンム会長の遺族が納めた相続税は9000億ウォン(約881億円)であり、韓国全体の相続税収入は年間3兆ウォン(約2940億円)前後だから、おそらく空前絶後の記録になるのではないかと思う。サムスン電子は、世界的にも史上最高額だと明らかにしている。外国の富豪は遺産を社会に還元する割合が大きく、遺族の相続分は相対的に小さいからだろう。

 遺族が社会への1兆ウォンの寄付と、数兆ウォンの価値のある2万3000点あまりの美術品の寄贈を決めたことも意味がある。遺族は、コロナなどの感染症の専門病院の設立に7000億ウォン(約685億円)、小児がんや各種の希少疾患に苦しむ子どもたちのために3000億ウォン(約294億円)を使ってほしいと述べた。実質的に遺族が管理する財団を作って寄付のふりをするのではなく、まともな寄付をしたわけだ。使い道も熟考したようだ。国宝などの指定文化財が多く含まれるイ・ゴンヒ会長の蒐集美術品は、国立現代美術館などの複数の美術館に分けて寄贈する。前例のない大規模な寄贈だ。「国民のもとに返す」との趣旨に合致する。

 イ・ゴンヒ会長は2008年、秘密資金事件で経営の一線から退く際、「実名へ転換した借名財産のうち、申告漏れのあった税などを納付して残ったものを『有益なこと』に使う」と約束していた。しかし、その約束を果たさぬまま世を去った。金額をめぐっては批判もあり得るが、故人が守れなかった約束を遺族が遅ればせながら果たしたことは評価したい。

 ただ、相続税の正常な納付と巨額の寄付は、過去の便法的な事前相続の免罪符とはなり得ないということを、サムソン家は忘れてはならない。イ・ジェヨン副会長ら3兄妹の、遺産相続とは関係のない保有株式の価値は、実に13兆ウォン(約1兆2700億円)にのぼる。サムスンエバーランドの転換社債、サムスンSDSの新株引受権付社債を用いた変則的な富の継承がもとになったものだ。贈賄罪などで懲役2年6カ月の判決を受け服役中のイ副会長は、グループの経営権確保のためにサムスン物産と第一毛織を不当に合併した疑いで現在、裁判中だ。

 一部メディアが中心となって、相続税の納付と寄付をイ・ジェヨン副会長の赦免とからめる主張を展開しているが、それは間違っている。まったく別の事案を無理に結びつけて赦免世論の形成に利用することは、相続税納付と寄付の意味すら傷つけることになるだろう。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/993067.html韓国語原文入力:2021-04-28 18:37
訳D.K

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