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[コラム]礼儀をわきまえなかった米国の記者の思い出

登録:2021-01-29 05:27 修正:2021-01-29 08:28
米国のアントニー・ブリンケン国務長官が27日(現地時間)、ワシントンの国務省庁舎での就任後初の記者会見で発言している=ワシントン/ロイター・聯合ニュース

 毎年10月に韓国と米国はソウルおよびワシントンで国防長官会談を行う。この会談は韓米年次安保協議会議(SCM)と呼ばれるが、2008年10月はワシントンで開かれた。当時、「傷ついた韓米同盟の復元」を掲げた李明博(イ・ミョンバク)政権発足の初年度だったため、韓米関係には懸案が多かった。

 当時、国防部の出入り記者だった私は、この会談を取材しにワシントンに出向いた。2008年10月17日(現地時間)、米国の国防総省(ペンタゴン)のプレスルームで両国の国防長官合同記者会見が開かれた。私を含む韓国の記者たちが米国の国防長官に韓米同盟の懸案を直接質問できる、めったにない機会だった。韓国の記者たちは、戦時作戦権の返還、在韓米軍の縮小、核の傘を含む米国の拡張の抑止、韓米合同演習継続の有無などを両国の長官にそれぞれ尋ねた。ところが記者会見に参加した米国の記者たちは、米国のロバート・ゲーツ国防長官にだけ質問を浴びせた。米国の記者たちは韓米関係には全く関心がなかった。彼らは記者会見の間ずっと、当時の米国の懸案だったアフガニスタン戦争についてのみ根掘り葉掘り質問した。

 私は初め、「仮にも韓米国防長官の合同記者会見なのに、米国の長官にアフガン問題ばかり質問する米国の記者たちは礼儀をわきまえていない」と感じた。しかし、後で考えてみると理解できた。米国の記者であれば、いつでもどこでも、米国市民が気になる内容を質問するのが当然だからだ。私たちには途方もない関心事である韓米同盟の懸案は、米国の記者としては大した問題ではないこともありうるという考えに至った。

 2日にわたり、チョン・ウィヨン外交部長官候補者の発言と米国のアントニー・ブリンケン国務長官の最初の記者会見があった。チョン・ウィヨン候補者は、28日午前の出勤途中に記者団に対し「韓米同盟関係は韓国の外交の根幹です」と語った。韓中首脳電話会談が韓米同盟軽視の議論に広がることを防ぐための言葉に聞こえた。ブリンケン長官は27日午後(現地時間)、国務省で最初の記者会見を行った。会見で記者7人が質問したが、最初の質問は「最も高い優先順位をつけて再検討する外交政策は何か」だった。ブリンケン長官は「 特にイエメン問題に集中している」と答えた。続いての質問6問は、ロシア、中東、アフガン、中国、中国とイラン、国際社会での米国のリーダーシップ回復に関する内容だった。この日の会見で朝鮮半島問題は一言も出なかった。私はブリンケン長官の会見の原稿を読み、13年前のペンタゴンでの記者会見の場面を思い浮かべた。

 昨年11月の米国大統領選挙以後、韓国国内ではバイデン政権の外交安保政策を扱う学術・政策シンポジウムが続々と開かれている。それに参加した専門家の大部分は、朝米関係や韓米関係を中心にバイデン政権の外交安保政策を分析する。韓国国内のメディアは、19日のブリンケン国務長官の上院承認公聴会の際に「対北朝鮮政策をレビューしようと思う」という彼の発言を大きく扱った。

 ところが、承認公聴会全体の内容をみると、北朝鮮の割合は極めて少なかった。ある外交官がブリンケン氏の公聴会での単語の頻度を分析し、SNSに載せた文章が興味深い。ブリンケン氏の発言と議員たちとの質疑応答を含めると、公聴会全体で言及された単語(タイトルを含む)は合計3万8257語だったという。質疑応答の割合でみると、中東(アフガンを含む)関連の単語が約1万2000語(31.4%)で最も多かった。次に、中国(台湾、香港を含む)関連が5660単語(14.8%)▽欧州およびロシア(軍縮を含む)が530単語(11.8%)▽新型コロナが950単語(2.5%)だった。米国国務省の改革、中南米、アフリカ、開発援助などが38%だった。北朝鮮関連の単語は500語(1.3%)に過ぎなかった。この日の公聴会で飛び交った100の言葉のうち一言が北朝鮮だった。

 米国外交が中東と欧州、中国に注がれているのは、昨日今日のことではない。これまで米国の新政権が発足すると、北朝鮮がミサイルを発射し核実験を行ったのも、米国の関心を引くためだった。バイデン政権初期には、北朝鮮はそのような挑発を行わないことが重要だ。私たちは、韓米協議を通じて米国の朝鮮半島問題への優先順位を早く引きあげなければならない。今後、南北が米国をうまく説得するには、朝鮮半島や北東アジアの次元を越え、中東や欧州の問題まで視野を広げ、戦略に悩まなければならない。特に北朝鮮当局者は「世界が朝鮮の中にあるのではなく、朝鮮が世界の中にある」という北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党総書記の言葉に留意する必要がある。

クォン・ヒョクチョル | 論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/980868.html韓国語原文入力:2021-01-29 02:40
訳M.S

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