チュ・ミエ法務部長官とユン・ソクヨル検察総長の攻防が果てしなく続いている。ユン総長の懲戒手続きは、懲戒委員会という最終段階を控えているが、開催時期が10日に再び延期された。二人の対立と力比べが目立っているが、本質である検察改革問題は影が薄くなっている。保守野党とメディアは検察の利害を一方的に代弁し、検察改革の正当性まで揺さぶる様子だ。
検察改革は、この数十年のあいだ正当性が強調されてきたが、一度も成功したことがない時代的課題だ。検察に過度に集中した権限の分散や不正の乱用防止のための民主的統制、政治的中立の確保など、改革の方向は多数の国民の支持を受けている。しかし検察は、今回も検察改革を推進する政府と対立点を掲げ、強く抵抗する姿勢を示した。検察改革の象徴的人物だったチョ・グク前法務部長官に対する捜査は、捜査結果や裁判の進行状況をみる場合、過剰捜査だったという批判は避け難い。さらにユン総長は、政治的言動を危険水位にまで高めた。ユン総長は「国民の検察」を強調するが、今のように国民から両極端の評価を受ける検察総長は、これまでいなかった。
チュ・ミエ長官と与党側の対応もまた、検察に対する民主的統制という名分にもかかわらず、国民の支持を得られずにいる。3日に発表された4つの世論調査機関の合同調査の結果で、ユン総長を職務排除し懲戒手続きに入ったことに対し、「間違っている」という回答が50%、「うまく行なっている」という回答は30%と表れた。検察改革の脈絡で国民を説得し、手続きの正当性を確保して推進しなければならないことを、追いつめる形で急いだため、「総長つぶし」に映る逆効果をみずから招いたのだ。検察を民主的に統制する行為は、それ自体がまた別の中立性侵害の議論を呼ばないよう、法と原則から逸脱することはあってはならない。
今回の懲戒手続きにおいて、チュ長官とユン総長は双方とも、検察の中立と公正性、権限の不正濫用防止など、検察改革の目指すところを思い出してほしい。このような原則に照らし、ユン総長は自身の言動に過ちがなかったかを振り返り、チュ長官も懲戒の手続きと内容で正当性を確保するためには小さな過ちもあってはならないだろう。今回の懲戒問題は、政治権力と検察の関係、法務部長官と検察総長の行為規範に関し、将来の戒めにできる重要な先例になるはずだ。自分の安危や政治的目的のために当面の戦いに勝つという近視眼的な態度は、国民の厳しい評価を受けることになるという事実を肝に銘じなければならない。
事態の帰結点も検察改革とならなければならない。これから残った手続きを透明かつ客観的に進めつつ、政府と与党は、検察改革のビジョンと検察の中立性の保障に対する意志を明確に明らかにし、国民を説得するよう努力しなければならない。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が出て国民の理解を求めることも、一つの策になりうる。このような過程のなかで、高位公職者犯罪捜査処の発足、検察と警察の捜査権の調整など、検察改革の制度的課題もより一層力を得られるはずだ。