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[寄稿]平和を望むなら米国に関与せよ

登録:2020-05-19 03:53 修正:2020-05-19 11:07

北を「ならず者国家」と定義したことも旧態依然であり、「北朝鮮が非核化措置を講じるという戦略的決定を、明確で疑いの余地なく行う前には」米国は制裁を発動して強硬な態度を維持するというのも、古いレコード盤だ。朝米首脳会談以後、米国政府は首脳会談の成果を一方的に理解している。トランプ政権は古い失敗の道を再びさまよっている。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足3年を越えた。5年の任期の中の2年が残った。残りの任期で望む政策を遂行する動力はあふれている。第21代総選挙で与党が圧勝したので、国会が政権を強固に支えるはずだ。世論の支持率も歴代最高を前後している。権力が揺らぐ兆しも見られない。

 しかし、南北関係は不動だ。キム・ヨンチョル統一部長官が金剛山(クムガンサン)個別観光の可能性を語りもしたし、様々な人が南北防疫協力を提案した。イ・ジョンソク元統一部長官は、北が最近力を入れている平壌(ピョンヤン)総合病院の建設に関連して「医療機器や医薬品など全て私たちがまかなうなど、大きな度量で行うべきだ」とまで述べた。しかし、北はぴくりとも動かない。むしろ韓国の軍事訓練と北朝鮮の人権報告書などを問題視し、非難の水位を高めている。

 なぜこのようになったのだろうか?文在寅政権で朝鮮半島の平和経済を実現する方法はないのだろうか?

 その答えを探すためには、米国を見なければならない。1950年から今に至るまで戦争を行っている交戦相手国であり、実質的には核兵器を始めとする恐るべき軍事力を北に向けており、今日も多くの制裁で北の首輪の綱を握っている国家であるためだ。北の生存のためには最も重要な国家だ。中国に対する貿易依存度が圧倒的だとしても、米国のために他の国と貿易できないことにより派生した現象であるだけだ。

 そして金正恩(キム・ジョンウン)政権の行動を理解できる重要な端緒は米国にある。そこで問いたい。米国はドナルド・トランプ大統領が2018年6月のシンガポールのセントーサで金正恩委員長と「新たな朝米関係を樹立」すると約束した後、何をしたのだろうか?「朝鮮半島で持続的で安定した平和体制を構築するための努力に参加」することにした後、どのような努力をしたのだろうか?

 トランプ大統領の首脳会談から半年が過ぎた2019年1月、米国防総省は「ミサイル防衛検討」報告書を発表した。米大統領の合意内容を履行するには十分な時間があった。しかし、この報告書は北を「ならず者国家」と定義した。新たな関係ではなく古い関係をまた取り出したのだ。ミサイル防衛体系について包括的に検討して新政策を提示するこの報告書は、「防衛」という報告書の名称に似合わない「攻撃作戦」を語りもした。 積極的ミサイル防衛と受動的ミサイル防衛の能力だけでなく、「(敵のミサイル)発射前に攻撃的ミサイルを撃退できる攻撃作戦」を具備するということだ。具体的にはF35戦闘機を利用して敵国の弾道ミサイルを発射段階で迎撃し、さらに「敵の攻撃的ミサイル作戦を後押しする基盤施設の全領域を打撃できる攻撃作戦」にも言及している。また、宇宙にミサイル探知機器と迎撃手段を配備して「攻撃的ミサイルを敵国の領土中で破壊」するともした。これが米国防総省が理解した「朝鮮半島の平和体制」だったのだろうか。

 韓国の専門家たちが北の「新型兵器4種セット」と呼ぶ兵器体系は、この流れで容易に理解できる。米国が先制的「攻撃作戦」能力を開発して強化するほど、北は隠蔽性と移動性を高めて発射時間を最小化した兵器体系を開発する必要に迫られる。自らの兵器体系を無力化できる米軍の兵器体系を無力化する兵器体系を配備しようとする欲求も強まるはずだ。米国との対話にはますます「興味」を失うしかない。韓国軍の作戦と兵器体系が米国との相互運用性に焦点が合わせられるようになれば、文在寅政権との対話にも意欲を失うしかない。このように朝鮮半島の平和体制は、いつの間にか少しずつ過去のはかない夢になっている。

 2019年6月、米国防総省が発表した「インド太平洋戦略報告書」も古びた敵対関係を繰り返している。北を「ならず者国家」と定義したのも旧態依然であり、「北朝鮮が非核化措置を講じるという戦略的決定を、明確で疑いの余地なく行う前には」米国は制裁を発動して強硬な態度を維持するというのも、古いレコード盤だ。朝米首脳会談以後、米国政府は首脳会談の成果を一方的に理解している。北が先制的に一方的に非核化を行ってこそこの問題が平和に解決され、北も「明るい未来」を享受できるということだ。トランプ政権は古い失敗の道を再びさまよっている。

 そのため文在寅政権は、朝鮮半島の平和と繁栄のために米国に果敢な「関与政策」を繰り広げなければならない。米国が古い敵対の過去に戻るのではなく、朝鮮半島の平和の未来に転じるようにしなければならない。それが北を動かす道でもある。韓国の防衛費分担を最大化する方法でもある。平和を望むなら米国に関与せよ。

//ハンギョレ新聞社

ソ・ジェジョン国際基督教大学政治・国際関係学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/945295.html韓国語原文入力:2020-05-18 02:08
訳M.S

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