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[社説]「不労所得136兆」の社会、誰が汗を流して働きたがるのか

登録:2019-10-08 04:52 修正:2019-10-08 08:22
ゲッティー・イメージバンク//ハンギョレ新聞社

 労働の対価ではない金が金を稼ぐ不労所得の規模が1年で136兆ウォン(約12兆1000億円)に達することが分かった。不労所得には賃金や報酬のほかに不動産・株式売買差益、配当所得、利子所得、不動産賃貸料などの資産所得と相続・贈与財産などが含まれる。

 共に民主党のユ・スンヒ議員が7日に国税庁から提出を受けた「2017年の譲渡所得と金融所得」という資料によれば、不動産譲渡差益が84兆8000億ウォン(約7兆5500億円)、株式譲渡差益が17兆4000億ウォン(約1兆5500億円)、配当所得が19兆6000億ウォン(約1兆7400億円)、利子所得が13兆8000億ウォン(約1兆2300億円)と、年間の不労所得は136兆ウォンにもなった。この資料には記載のない不動産賃貸料や相続・贈与財産まで加えれば不労所得規模はさらに大きくなる。さらに大きな問題は、不労所得の規模が年々雪だるま式に増えていることだ。2016年の113兆ウォン(約10兆円)に比べると20%増加している。

 不労所得は資産・所得の上位階層が独占している。上位10%の占有率を見ると、配当所得は94%、利子所得は91%に上る。個人別ではなく取引ごとに発生する不動産譲渡差益と株式譲渡差益は、上位10%に該当する取引がそれぞれの所得総額の63%と90%を占めた。不動産にしろ株式にしろ、高所得者ほどより多くの取引をした可能性が高いことを考慮すると、実際の所得集中度はさらに高いであろう。上位10%が全体の32%を得る勤労所得の不平等よりも、資産所得の不平等の方がひどいということだ。

 不労所得をこのまま放置すれば、社会の統合と安定は不可能になる。金を使わず食うものも食わず、一生分の給料を集めてもマイホーム購入さえ難しい庶民たちが、莫大な規模の不労所得を見て感じる剥奪感は、とうてい言葉では言い表せないだろう。ある者はただ座っているだけで大金を稼いでいるのに、汗を流して一生懸命働く気がおこるだろうか。労働意欲をそがれてしまう。また不労所得は富の世襲につながり、「階層移動のはしご」を折ってしまう。韓国社会の未来は暗い。

 不労所得への課税を強化すべきだ。総合不動産税の強化と公示価格の現実化は、不動産市場の安定だけでなく不平等の緩和のためにも必要だ。現在、保有株式15億ウォン以上の大株主にだけ課されている株式譲渡差益への課税強化の実施日程も繰り上げるべきである。金融所得総合課税の対象も増やすべきだ。大統領直属の財政改革特別委員会が昨年、現行で2千万ウォンの金融所得総合課税基準を1千万ウォンに引き下げることを提案したが、政府が受け入れなかったのは間違っている。また、富裕税の導入も積極的に検討する時期である。

 来年の大統領選挙を控え、米国では富裕税導入が争点になっている。民主党の大統領選候補バーニー・サンダース上院議員とエリザベス・ウォーレン上院議員は富裕税導入を公約に掲げ、富の二極化に疲弊した多くの有権者の支持を得ている。一部の億万長者も呼応した。ヘッジファンド投資者ジョージ・ソロスやフェイスブックの共同創業者クリス・ヒューズら18人は、今年6月の「2020年の大統領選挙候補たちに送る公開書簡:我々にさらに多くの税金を課す時」の中で「米国は、我々の富により多くの税金を課す道徳的・倫理的・経済的な責任がある」とし、「富裕税は気候危機に対処し、経済や保健の状態を向上させ、機会を公正に作り出し、私たちの自由を強化するのに役立つ」と述べている。

 一方、韓国の富裕層はというと、富裕税導入どころか現行の相続・贈与税まで引き下げることを要求する。これに自由韓国党と保守メディアは「略奪的相続税」だの「懲罰的相続税」だのと相槌を打っている。自由韓国党は先月発表した「民富論」の中で相続・贈与税の引き下げを主張し、保守メディアは相続税のせいで企業が「脱韓国」化していると誇張している。 一体彼らは国をどこへ導きたいのか問わざるを得ない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/912339.html韓国語原文入力: 2019-10-07 18:36
訳D.K

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