原文入力:2012/06/27 09:58(3111字)
“政策失敗”をまたも“社会的費用”で処理しようだと?
“総合編成チャンネルの呪い”を招いた言論学者は徹底糾明せねば
「サルコビジオン」(Sarkovision)、「MB氏」(MBC)、「キム秘書」(KBS)・・・サルコジとイ・ミョンバク大統領執権後、フランスと韓国の公営放送体制が崩壊する中で、両国民衆が作り出した“寸鉄人を刺す”新造語だ。
それでもフランスの“サルコジ放送”は完全に壊れはしなかった。 選挙放送でも公平性と平衡性の原則が健在で、少数者の声が伝えられる。 今春のフランス大統領選挙でも、そのような原則がなかったとすれば見られないような場面が放送された。 反資本主義党のフィリップ・プトゥ候補は民営放送<テエフ1>(TF1)に出演し、両極化問題を話しながらその放送会社の社長を引っぱり込んだ。
「金持ちと言えば、ほら、皆さんもよく知っている方がいますね。 この放送会社の社長であるマルテン・ブイグのことです。 財産が25億ユーロにもなるというのは容認できません。彼らの所有権を剥奪しなければなりません。」(<ルモンド・ディプロマティク>) 我が国だったら“放送事故”といわれる状況だが、フランス有権者はそのような少数の見解も聞いて投票する。
フランス国民はサルコジを権力の座から追放するとともにいろいろ責任を問うた。 しかしイ・ミョンバク大統領は放送会社のストライキの原因提供者でありながらも「大統領が言及すれば干渉になる可能性がある」として責任を回避する。 パク・クネ議員も責任をもって解決するつもりはないようだ。 親与の社長を通しての公営放送掌握と 総合編成チャンネルの支援が大統領選挙局面で緊要なためか?
放送生態系を荒廃させた総合編成チャンネル誕生も、二人に最も大きい責任を問わざるを得ない。 パク議員はこの頃イ・ミョンバク政権との“差別化”を進めているが、それこそ希薄な責任意識の発露だ。 大統領責任制でありながら単任制を採択した国で与党の実力者である有力な大統領候補に政治的責任を問わないならば制度自体が矛盾している。
貪欲の対象だった放送政策は、政権が終る前に早くも破局をむかえている。 総合編成チャンネル推進勢力がどれほど眩惑されていたのかを、ソウル大ユン・ソンミン教授のケースで分析してみよう。 総合編成チャンネルの“開局功臣”の1人だった彼の、開局当時の新聞寄稿文を読めば、あっちこっち総合編成のチャンネルを回しながら感激しているその表情が目に浮かぶ。 そして「生存論争」を主張する人々に向かって一喝する。 「いったい何が問題で、何が災難で、何が中断すべきことなのか。 従来の地上波に総合編成チャンネルが加わって織り成すこの多様性が災難だというのか? このきっ抗したチャンネル間競争が災難だということか? 」
“競争至上主義”は 外国為替危機の一つの要因だったサムスンの自動車産業進出の時にも出てきた“迷信”だ。 産業組織学専攻のユ・スンミン当時韓国開発研究院研究委員(現セヌリ党議員)が主役の一人だった。
メディア産業を勉強したユン・ソンミン教授は半年も経たずに、「(総合編成チャンネルを)見る人が殆どいない」として「社会的費用がかかっても滅びる事業者は滅びる中で『放送事業にむやみに飛び込んで出来ることではない』という貴重な経験として持っていけば良い」と発言した。 学者が言葉をすぐ変える信頼性の問題はさておいても、自分たちの“政策失敗”をいつも“社会的費用”として処理しようとする態度は問題にせざるをえない。
IMFの時と同じように既得権勢力の貪欲を“理論”で包装した学者の曲学阿世から発生する“社会的費用”は誰に転嫁されるか? 放送会社が滅びたら、最初の被害者は従業員だ。 新入社員はもちろんのこと、 総合編成チャンネルに移っていった放送人は直ちに生存の危機に直面する。 総合編成チャンネルに移っていった人の中には有能な放送人も多かったし、地上波だったらかなり高い視聴率を記録したと思われるドラマや消費者告発番組もあったが、プラットホームの限界で 埋もれてしまった。
二番目の被害者は、断りきれずに総合編成チャンネルに参加した企業と広告掲載の圧力に悩まされる大企業だ。 ある大企業経営者は「親企業である新聞を前面に出して広告掲載を執拗に要求するので、とても耐えられない」として「総合編成チャンネルをなくしてくれる政治家と言論がいれば支持する」とまで言った。
三番目の被害者は 総合編成チャンネルに進出した報道機関自身だ。 主に日本とアメリカから持ってきた放送装備は安く売り払うことになりそうだ。 下請け業者である独立プロダクションも、早くも番組が取り消しになったり製作費を受け取れないで倒産する業者が出てきている。
四番目に、本当に腹が立ってならない被害者は視聴者と国民だ。 自分の意向と関係なく公営放送体制が揺らぎ、質の高い放送を見られなくなったし、世論市場の寡占が深刻化して民主主義がまともに作動しなくなっている。 権力の不正を暴く探査報道や時事告発番組は空中波・総合編成チャンネルを問わず大幅に減り、制作費が安い時事トークや外国の番組が大手を振るっている。
しかし放送を亡ぼすのに決定的に寄与しても、何の被害も受けない集団がある。 ほかならぬ言論学者だ。 米国で勉強した言論学者の中には、ヨーロッパに比べて言論の公共性が顕著に落ちる米国を標準とする人が多い。 かなり多くの研究費を支援されていながら、韓国言論の現実をまともに考察しないまま言論政策を独り占めした事例が多かった。 にも拘らず韓国言論学会などを中心に一緒に活動しながら互いに誤りを批判しない沈黙のカルテルを形成している。 いまや、韓国言論受難史に彼らの名前を登載すべき時が来た。
ユン・ソンミン教授はメディア法が可決された時も新聞寄稿文で「口に泡を飛ばして」「自称進歩」がわめいていると非難した。 「サービスの品質と多様性を高め、(…)社会的疎通を活発にさせ、先進化された民主市民社会実現を早めようとするものだった。 メディア進出を夢見る若者に働く機会を提供しようということだった。 これ以上言葉が要らないように、結果で見せてやらなければならない。」 結果は正反対に現れたので、本当に言葉が必要なくなった。
←イ・ポンス市民編集者、セミョン大ジャーナリズムスクール大学院長
<ハンギョレ>はこれまでメディア法に反対するなど総合編成チャンネルを一貫して批判してきたが、開局以後は記事の量が顕著に減り、批判も総合編成チャンネル自体の根源的問題より拙速製作や失敗を浮彫りにすることに偏っている感がなくはない。 <ハンギョレ>は23日付社説で「放送ストライキの問題を解決するために、国民の代表機関である国会が積極的に動け」と注文した。 しかし与党が多数である国会に大きな期待をかけることができるだろうか? それよりも先ず、 総合編成チャンネルを含む放送政策が民主主義をどのように蹂躪してきたのかを糾明して放送改革の世論を作り、責任者を特定することが進歩言論の急務だ。
イ・ポンス市民編集者、セミョン大 ジャーナリズムスクール大学院長
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/539667.html 訳J.S