原文入力:2012/06/06 19:26(1657字)
←キム・ヨンヒ弁護士・脱核法律家の会 ひまわり代表
最近セヌリ党チョン・モンジュン前代表が、大統領になったら核兵器保有能力を持つということを大統領選挙公約として提示した。‘核には核’という恐怖の均衡なしには平和を得ることはできないというのがその理由だ。 しかし北韓の核はもちろんチョン・モンジュン前代表と私たち国民が‘恐怖’を感じなければならない対象はまさに私たちのそばにある国内原子力発電所だという点を先に指摘せざるをえない。
万一、古里原子力発電所や月城原子力発電所で事故がおきればどうなるだろうか? 福島事故などに照らして原子力発電所で事故がおきれば最も直接的な被害を被りかねない範囲は原子力発電所から30km以内だが、古里原子力発電所から30km以内に暮らす住民は約342万人、月城原子力発電所の場合は約127万人だ。世界的に古里原子力発電所ほど大都市に隣接したところに多数の原子炉を保有しているケースはない。
ここには大規模産業施設も含まれているが、チョン・モンジュン前代表が支配株主である現代重工業の蔚山(ウルサン)工場は古里原子力発電所から約26km、月城原子力発電所からは約22kmの距離にあり、現代自動車の蔚山工場は古里原子力発電所から約27km、月城原子力発電所から約20km離れたところにある。 蔚山地域の製造業が占める比重は全国生産額の13.56%、全国輸出の15.31%にもなる。(2010年基準)したがって古里原子力発電所や月城原子力発電所で事故が起きれば、人口や産業施設が密集した釜山・蔚山地域に回復不能な被害を及ぼし、それはわが国の経済全体に致命的な打撃を加えることを意味する。
日本政府は福島事故の翌日である3月12日、事故原子力発電所から半径20km地域を待避地域に指定し、30km、50kmとその範囲を順次拡大した。 結局、今年1月には福島原子力発電所から半径20kmと東北側に最大50km地点までの一部を含めて年間放射線量が50ミリシーベルトを超過する地域に対して汚染除去を事実上放棄した。 汝矣島(ヨイド)の面積の10倍mにあたる福島地域が死の土地として捨てられた。 日本政府の発表を見れば、福島事故で流出したセシウム137の量が1万5000テラベクレルに達するが、これは1945年広島原爆投下の時に流出した放射性セシウムより168.5倍も多い量だ。 釜山・蔚山地域はこのような被害を最も直接的に被りかねない地域だ。
このような致命的な結果につながる原発事故の発生確率が低いわけではない。 ドイツのマックスプランク化学学研究所が最近世界全域の原発事故リスクを統計的に分析した研究結果を発表したが、現在全世界の民間原子力発電所稼動時間と炉心溶融事故件数から計算する時、今後チェルノブイリと福島原子力発電所事故のような深刻な事故が起きる確率は10~20年に一回という衝撃的な内容だった。
原子力発電所事故は故障や自然災害でなくとも北韓がミサイルやジェット機で原子力発電所にテロを加える場合にも発生する可能性があるが、この場合核兵器を使うことより更に大きな事故が起きる恐れがある。 原子力発電所の中には途方もない規模の使用済み核燃料が保管されているためだ。 福島原子力発電所4号機に保管されている1331本(原子炉3基分)の使用済み燃料棒がメルトダウンすれば、東京も強制待避が避けられないと見ている。 国内外原子力発電所の格納建物は燃料タンクがぎっしり埋まった状態のジャンボ機の衝突には耐えられない。 真の恐怖の対象は原子力発電所であり、原子力発電所を閉鎖することだけが恐怖から抜け出す道だ。
キム・ヨンヒ弁護士・脱核法律家会ひまわり代表
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/536462.html 訳J.S