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[世相を読む] ならず者の刃物/キム・ドンチュン

原文入力:2012/01/16 19:28(1800字)

チョン・ヨンジュ、ハン・ミョンスク、ミネルバ、PD手帳…
無罪で終われることではない
国民参与 国会聴聞会を提案する

←金東椿(キム・ドンチュン)聖公会大社会科学部教授

 盧武鉉前大統領を自殺に追い込んだ検察の刃物がチョン・ヨンジュ前<韓国放送>(KBS)社長とハン・ミョンスク前総理を刺すことはできなかった。 今回この2人に無罪宣告を下したことを含め、ミネルバ事件、<PD手帳>事件で検察の刃を鞘に収めさせた裁判所はそれでもわが国社会が守らなければならない常識の最低線を守ってくれた。 しかし当初、不法民間人査察の犠牲者となり自身のブログにロウソク集会動画を上げて起訴されたキム・ジョンイク氏は今回はチョ・ジョンヒョク議員の無鉄砲な告訴を受けた検察のホコリはたき式捜査で依然として裁判を受けており、、主要20ヶ国(G20)首脳会議ポスターにネズミの落書きをしたとして検察に起訴された大学講師は有罪判決を受けた状態だ。 チョン・ヨンジュ、ハン・ミョンスクの2人とは違い、彼らは平凡な市民だ。 ところで彼らは今、致命傷で苦しんでいる。

 これらすべての事件はそもそも最初から事件として成立さえしなかったという点で同じ性格を持っている。 裁判所の勧告を受けて税金の還付を放棄した<韓国放送>社長を背任罪で起訴したことと、企業家の信憑性なき陳述一言で前総理を犯罪者に追い込み、100万人以上がみた動画をブログに上げたという容疑で私企業の社長を起訴し、単なるいたずら程度と見られる落書き事件にまで刃物を振り回し立向かったのだ。 これら事件の捜査過程で示した検察の卑劣さと破廉恥さを文で書けば本一冊でも足りないだろう。

 ところで国家の根本を揺るがした重要事件と見られるDDoS攻撃、貯蓄銀行事件、暁星グループ秘密資金事件、ハン・サンリュル前国税庁長事件、グレンジャー検事事件などで検察は刃物を取り出すふりだけをした。 人々はチョン・ヨンジュ、ハン・ミョンスク氏が無罪になったので‘事必帰正’と考えるようだ。 しかし‘無罪’は決して原状回復ではない。 この二人が負った個人的傷も大きいが、チョン前社長を追い出した以後、去る3年間<韓国放送>が公営放送ではとうていありえない不公正放送と国民愚弄化作業をした結果、イ政権のさらに深刻な非理と不正はその分だけ縮小・隠蔽された。 ミネルバ事件や<PD手帳>事件は無罪になったが、当事者は精神疾患を病むほどの大きな傷を負い、この事件を見守った国民と言論人の口は凍りついた。 国家の根幹を揺るがすほどの重罪にまともに刀を差し出さないのは、そのような犯罪の再発を許容したという点でわが国社会の法と正義を完全に壊すことであったし、過去であれば何度も弾劾にさらされうる事案にかかわった現政権を助ける行為だった。

 刃物を振り回した人々は、常勝疾走出世して未だにその席を占めていて、服を脱いだ人は年間数十億ウォンの受託料を手に握る商売がうまく行く弁護士になった。彼らは自身の任務を全うしたと考えており、今でも恥ずかしげもなく暮らしている。 過去に検察がそうであったように、自分たちに対する攻撃が出てくれば、決まって彼らは 「言われてやった」として権力の背後に隠れるのだろう。 それで金大中前大統領は 「この国の最大の癌的な存在は検察だ」と話した。

 ならず者は決して自らの判断で刃物を振り回さず、単に命令に忠実に従うだけだ。 ところでならず者が誤って振り回した刃物に当り、全く罪のない人が死んだり致命傷を受ければ、その責任は誰にあるのか? 刃物で刺されてはならない人が刺され、当然に刃物で刺されなければならない人が生き残り、国民が享受しなければならない言論と表現の自由、市場の公正性、正義が確実に崩れるならば、その責任は誰がどのように負い、どのようにして壊れた社会を正しく立て直すことができるのだろうか?

 無罪で終われることではない。 被害者補償と検察謝罪でも充分ではない。 私は国民参与国会聴聞会を提案する。

キム・ドンチュン聖公会大社会科学部教授

原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/514976.html 訳J.S