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観光客がヴェネツィアを殺す

原文入力:20110926 13:55(1583字)
キム・キュウォン記者

イタリア・ヴェネツィア 人口第二次大戦後の3分の1水準
観光客は1日に人口の2倍以上訪問
「不在者の住宅高級化」現象も深刻
「観光に全面的に依存して『共同体』失った」

←ヴェネツィアの人口は第二次大戦後の1/3水準に減った。ウィキペディア/アンドレアス・ティルレ 写真

「以前、ここには精肉店2店、食料品店5店、パン屋2店、洋裁店1店、靴修繕店1店がありましたが、今はみんな消えてしまいました」。『私たちのイタリア全国保存グループ』のヴェネツィア支部責任者のフェルスオチは、自身が育ったヴェネツィアのサン・サムエル地区を追憶した。

世界的な観光都市であるイタリアのヴェネツィアが、押し寄せてくる観光客のために徐々に死にかけていると、イギリスの新聞インディペンデントが報道した。 この都市の人口は、第2次大戦後の17万5千人から、現在5万9千人へと3分の1に減った。住民たちは、ヴェネツィアの基盤施設と商店がますます観光客に合わされていき、日常的生活を送るのが非常に難しくなっていると話す。注意深い訪問者は、よく整えられた道路を発って、ぐにゃぐにゃした路地で冒険をする が、魅力的ながらも恐ろしいように静かな広場は、彼らに尋ねる。 「本当にヴェネツィアの人々は、みなどこにいるのか?」

フェルスオチは、「ここはもはや正常な都市ではない」として、「新鮮な野菜を望む人々は、水上バスに乗って遠くへ行かなければならないが、わずか家から何メートルで、2000ユーロの時計や400ユーロのカーニバルマスクを買える」と話した。ここの住民たちの冗談の中には、牛乳1本を買おうとする観光客に道を案内する諷刺的な内容もある。「グッチを過ぎてフェンディで右側にまわって、ドルチェ&ガッバーナで橋を渡れば、そこに食料品店があるだろう。そこの主人が死んでいなければ」

昨年夏の数日間は、たった1日で人口の2倍以上の13万人の旅行客が訪ねてきた。そこで、この全国保存グループは途方もない観光客の数を制限するために、予約を通じて大型クルーズを乗って来る観光客のみを受けるプログラムを提案したが、無視された。また、このグループは今年7月、国連にヴェネツィアを「危機に直面した都市」名簿に載せるよう要求することもした。大量の観光客、環境的無関心、新しい建設計画が、珊瑚の上に建てられたこの都市を、より一層死に追いやっているという内容だった。

「観光がこの都市経済の原動力であり、観光分野の人々が熱心に仕事をするのを否定する人はない。しかし、あまりにも観光に依存することにより、ヴェネツィアはその社会組織(共同体)を失った」とフェルスオチは話した。ヴェネツィアの作家カテリーナ・ファロモは「世界でも有数の映画祭が開かれるこの都市に、市民のための映画館がただ2館だけという点も正常でない」と指摘した。

ヴェネツィアには、そこに家や建物を所有する人々がほとんど住んでおらず、最近、「不在者の住宅高級化(ジェントリフィケーション)」現象も深刻だ。彼らの共同住宅を、学生や労働者の生活のために安い値段で長期間貸すより、観光客に高値に短期間貸すのを選んでいるためだ。ここでは家は米国やオーストラリアの金持ちに売れたりもするが、彼らは家を1年に何週、さらに何日だけ使う。

リアルト橋そばのモレルリ薬局の窓には、居住者の数字を表示する電子装置がある。9月基準として人口は5万9254人だ。105年間、この薬局を経営してきた設立者モレッリの孫アンドレア・モレッリは、「この数字が増えるように願うが、当分そうなるとは思えない」と話した。

キム・キュウォン記者 che@hani.co.kr
原文:https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/497945.html 訳 M.S