李在明(イ・ジェミョン)大統領が24日、初めての訪日日程を終えた中、日本では両国首脳が安定的に最初のボタンをかけたと評価している。李大統領と日本の石破茂首相が「シャトル外交の再開」など友好関係を早く確認したのは、韓日米内外の事情が複雑に絡み合った結果だとみられている。
朝日新聞は23日付で、「韓国の李大統領が、就任後初めて日本を訪れ、石破首相との首脳会談で日韓関係を未来志向で発展させていくことで一致した」とし、「李大統領はドナルド・トランプ米政権も見据えて関係の安定を目指し、石破首相も歓迎した」と報じた。
両首脳は首脳会談後「共同プレスリリース」で「両国が、未来志向的かつ互恵的な共通利益のため、共に協力していかなければならないという点で認識を共にした」とし、「両国間のシャトル外交が早期に再開されたことを評価」すると共に、「安全保障・経済安全保障分野を含む各分野において、首脳及び各レベルでの意思疎通を強化することとした」と明らかにした。
また、石破首相は首脳会談後の夕食会のメニューとして、李大統領の故郷である安東の郷土料理「チムタク」(鶏肉やジャガイモなどを甘辛いタレで煮込んだ料理)と安東焼酎を選んだうえ、過去に自身が放送に出演して紹介した「石破式カレー」も振る舞ってもてなした。
■韓日、手を携えた方がトランプ政権への対応に有利
日本では李大統領の異例的に早い訪日日程と「対日重視外交」を表面化した理由の一つとして、「トランプ米政権への対応に向けた日本との協力」を挙げている。朝日新聞は、「(李大統領の)こうした『日本重視』の姿勢の背景には、トランプ米政権に対応するにあたり、日本とは安定的な関係を築いておきたいとの思いがある」とし、「日韓は関税など経済分野だけでなく、ともに米国の同盟国という点で、安全保障の面でも予測しがたいトランプ米政権への対応を迫られる状況に置かれている」と分析した。韓日いずれも、現在最大懸案のトランプ政権の関税問題をはじめとする外交分野で、単独で対応するのは難しいということだ。
同紙は韓国政府高官の話を引用し、「米国発の新しい貿易・通商秩序は、韓日間でより多くの戦略的な疎通が必要であることを物語っている」と報じた。このような基調は李大統領が強調してきた「実利外交」とも軌を一にする。李大統領は23日、日本の朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、産経新聞の主要メディア4社が報じた書面インタビューで、韓日間の共生と協力が必要だという点を両国国民が肌で感じているとし、国民の期待に応えるためにも、韓日協力を拡大するというのが自身の信念であり、韓国政府の対日外交原則だと述べた。
■韓日の仲裁に伴う米国の疲労感を軽減
米国にとっても韓日関係の強化は歓迎すべきことだ。東アジア地域で米国が北朝鮮と中国に対応するためには、同盟である韓国と日本の存在が欠かせない。米国を中心に韓日が三角関係を維持する必要があるが、歴史問題などで韓日関係がギクシャクする度に、米国には「仲裁者」の役割が求められてきた。李大統領が最初の訪問地として米国の代わりに日本を選んだことに、米国側のこれといった意見の相違がなかったのも、このような状況を裏付けている。
ウィ・ソンラク大統領室安保室長は24日、韓日首脳会談について、「韓日両国の関係が良くない時は、米国の主導の下で韓米日3カ国協力を進めなければならない場合が多かったが、今回は韓国が主導し、日本を訪問してから米国を訪問する形になった」とし、「韓国が日本と良好な関係を発展させながら、米国と協議しに行くというのは、日本はもちろん米国にとっても肯定的な動きであろう」と評価した。日本メディアでは「今後日韓関係が悪化しても、トランプ大統領に仲裁者の役割を期待するのは難しく、こうなれば日米韓安保体制は不安定性を抱えたまま進まざるを得ない」という懸念の声もあがっている。
■日本、朝中ロが密着すればするほど韓国との協力が必要に
日本もやはり李大統領の「日本重視」の姿勢を歓迎せざるを得ない内部事情がある。外部的には朝中ロが軍事的協力を拡大している中、韓国との安保協力の強化が強く求められている。実際、日本外務省でも「最近のように日韓の利害関係の方向性が大幅に一致した状況は珍しい」と言われているほどだという。このような流れに乗って、中谷元防衛相が現職としては13年ぶりに初めて来月に訪韓する日程を調整している。
石破首相の個人的なスタンスが「日本重視」を強調した李大統領と一致するという見解もある。石破首相は与党自民党内の強硬保守派の反発にもかかわらず、「太平洋戦争に対する謝罪と反省」の必要性を重ねて強調してきた。今回の会談後、共同発表文の冒頭にも「石破首相は1998年の『21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ共同宣言』を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる旨を述べた」という文言が盛り込まれた。1998年に発表された金大中(キム・デジュン)元大統領と小渕恵三首相の「韓日共同宣言」には、「小渕総理大臣は、今世紀の日韓両国関係を回顧し、我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた」という内容が含まれている。
ただし、始まったばかりの両首脳の「友好関係」がこれからも続くためには、石破政権が一定期間以上維持される必要がある。昨年10月に就任した石破首相は、衆議院選挙に相次いで敗北したうえ、物価高対策の失敗などで支持率が下落するとともに、党内の「石破降ろし」で政治的にコーナーに追い込まれた状況だ。「ポスト石破」として取り沙汰されている人物は、歴史問題などで強硬保守派に分類される小泉進次郎農林水産相と高市早苗元経済安全保障相などだ。朝日新聞は、「石破政権が倒れて新政権が発足した場合、歴史問題の再燃などで良好な日韓関係が維持されるか見通せない部分もある」と指摘した。