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「Z」はいかにして「ロシア応援」のシンボルとなったのか

登録:2022-03-09 10:31 修正:2022-03-09 10:47
ウクライナを侵攻したロシアの戦車などに書かれ、 
国営テレビ、建物の壁、SNSなどにも広がる 
ホスピス病棟の子どもたちによるZ隊列の様子も 
ロシア国防省「勝利のために(Za pobedu)の意味」 
嘲弄で跳ね返されたり、脅迫の記号になったりすることも
ロシアのサンクトペテルブルクのある建物の壁に、ロシアのウクライナ戦争支持の象徴となった「Z」の文字が大きく表示されている/AFP

 アルファベットの「Z(ゼット)」が突然、ロシアのウクライナ侵攻を支持するシンボルに変身した。なぜそうなり、どんな反応が起きているのか。英紙「ガーディアン」と米紙「ニューヨーク・タイムズ」が8日付で紹介した。

 一番最近の「Z」論争は、今月5日、ロシアの体操選手イワン・クリアクがカタールのドーハで開かれた平行棒競技で銅メダルを取った後、胸にテープで「Z」字を貼って表彰台に立ったことだ。国際体操連盟は、クリアクがウクライナ戦争支持のシンボルを着用した疑惑があるとし、倫理委員会に付託した。

 これに先立ち、Zが注目を集めだしたのは、先月19日頃、ウクライナ国境地域に集結したロシア軍の戦車やトラックなどの側面に「Z」の文字が書かれているのが目撃されてからだ。さらに、24日にロシアのウクライナ侵攻が始まった後は、ロシア軍の装備ではZだけでなく、O、X、A、Vなどの文字もあった。

 なかでも、Zが意味するものは何なのかをめぐって推測が飛び交った。ロシアが除去対象としているウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Zelensky)大統領を意味するとか、ロシア軍が主に集結していた西側(Zapad)を意味するなどの解釈が出ていた。次々と出る推測をただ眺めていたロシア国防省は今月7日、インスタグラムに、Zは「勝利のために(Za pobedu)」に登場する前置詞「Za」から取ったものだと明かした。

ロシアのカザンのあるホスピス病院に入院している末期がんの子どもたちが、ロシアのウクライナ侵攻を支持する象徴となったZ字型の隊列を作った様子=ツイッター画面より//ハンギョレ新聞社

 その間にZはロシアのウクライナ侵攻を応援する象徴としてロシア内で広がった。戦争開始から数日後、ロシア国営テレビ「RT」は、Zの文字を入れたTシャツやフードパーカーなどの商品を販売するとソーシャルメディアを通じて知らせた。その後、「Z」Tシャツを着た若者たちが出演するフラッシュモブが相次ぎ、街頭の壁や広告にもZが登場した。学校は、子どもたちがZ字型に並んでいる様子をソーシャルメディアなどに掲載した。ホスピス病院に入院した小児末期がん患者たちがZ字型の列を作った様子もツイッターに出回っている。商業用車がZステッカーを貼り付け、テレビのトークショーにも「Z」Tシャツを着た出演者が登場する。ロシア連邦議員のマリア・ブティナ氏が自分のジャケットにZを描き入れる様子とともに「兄弟よ、あなたの仕事をせよ。われわれはいつもあなたを支持する」と促すなど、政界のZ広報は言うまでもない。

 ロシア出身の米国人メディア評論家バシリ・ガトフ氏は「ニューヨーク・タイムズ」に「これは明らかに国家が誘導するミーム(模倣を通じた流行)だ。常にこうした種類のメッセージに受容的な人たちがいる」と述べた。彼はこのようなミームをソーシャルメディアにばらまいてお金をもらう「宣伝部隊」があると話した。ロシア政府が戦争支持世論を拡散させるために行っている「官制キャンペーン」だということだ。批評家たちは、Zをナチスの象徴であるハーケンクロイツ(鉤十字)にたとえることもある。

 ロシアは2014年に武力でウクライナからクリミア半島を併合した際も、ナチスに対するロシアの勝利を象徴する黒とオレンジの縦縞リボン(セントジョージリボン)の使用を積極的に奨励した前例がある。

 ロシア政府が懸命にZを拡散させてはいるものの、ロシア大衆の間に広範に広がっているわけではないと「ガーディアン」は伝えた。むしろZは嘲弄の対象になったりもする。7日、ロシア国内で行われた戦争反対デモで、一部の参加者が「Zachem(何のために?)」と書かれたプラカードを持っていた。また、Zは脅迫の記号としても使われている。ロシアの反体制志向の女性パンクロックグループ「プッシー・ライオット」と人権団体「メモリアル」は、自分たちの住んでいるアパートのドアに「Z」の文字が書かれたと話した。

ファン・ジュンボム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1034033.html韓国語原文入力:2022-03-08 16:17
訳C.M

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