日本の地方有力者が原子力発電所の幹部20人あまりに少なくとも3億2千万円相当の金品をばら撒いていた事件が明らかになり、波紋が四方に広がっている。
問題の発端は、福井県高浜町地域の森山栄治という有力者が関西電力の幹部20人あまりに2011年から昨年までの少なくとも7年間に、商品券などの金品を渡していた事件が最近明らかになったことだった。森山氏は今年3月に90歳で死亡している。高浜町地域には関西電力が運営する高浜原発1~4号機がある。
金品を受け取っていたのは関西電力の八木誠会長や岩根茂樹社長ら役員20人あまり。岩根社長は27日に記者会見を開き、就任祝いの名目で金品を受け取ったとし、断ると森山氏が腹を立てたと明かした。金品を一時、個人的に保管し、「儀礼の範囲内のものを除いて返却した」と述べた。
しかし、その後も疑惑は絶えない。朝日新聞は30日、高浜町地域の建設会社の吉田開発が過去3年間に20億円以上の工事を関西電力から受注したと報道した。日本の税務当局の調査によると、吉田開発は森山氏に3億円を渡し、このうち1億8千万円が八木会長などに金品として渡された。
高浜町は人口1万人あまりの小さな町だ。静かな漁村だったこの地域は1970年代に原発が誘致され、原発から金が流れ始めた。森山氏は原発誘致の先頭に立っており、1977年から10年間高浜町の助役を務めた。高浜原発1号機は1974年に運転を開始し、1985年までに2~4号機が増設された。高浜原発3~4号機は2011年の福島原発事故の後、稼動が中止されたが、安倍晋三政権の原発再稼働政策により2017年に再稼動した。再稼働のためには安全装置の補強工事が必要で、地域の建設会社は特需にあずかっていた。この事件については、原発を建設するために地域社会を説得しなければならない原発運営会社、そして原発から出る金で支えられる地域経済が生んだ現象という評価が出ている。